今回ご紹介したいのは、タイムスリップして、東京の迷路に紛れ込んでしまったかのような、私にとっては驚きの甘納豆屋さんです。
三軒茶屋にお住いのG博士をお見舞いした帰り、友人たちと通称三角地帯で夕飯を取ることになった。
知る人ぞ知る三軒茶屋のあまりにレトロな、不思議な三角地帯。
戦後の焼け跡マーケット時代からの歴史が今も残るセピア色のエリアで、コアなファンも多く、新宿ゴールデン街のような雰囲気もある。初めての人にはほとんど迷路のような。
その中の一角。黄色地の水引暖簾が目に入った。「豆商」の白抜き文字。

その明かりの下に手づくりの甘納豆類がオーラに包まれるように並んでいた。

あんこころがピコピコ。友人との夕食そっちのけで、気が付いたら昭和のバリアを突き破っていた(そんな感じ)。あんこ狂のサガかも。
凛としたご高齢の女将さんが一人で切り盛りしていた。昭和がそのまんま?
甘納豆の隠れた名店「豆商 はたの」との出会い。
★ゲットした甘納豆3種類
大納言(北海道産)1袋500円
うぐいす豆(〃) 500円
白花いんげん豆(〃) 500円
※1袋約180グラム。すべて税込み。

【センターは?】
大納言あずき:ふっくら感と大納言の風味
甘納豆の中で最も定番なのが小豆だが、この店の小豆は北海道産大納言小豆を使用している。自宅に戻ってからの賞味となった。


〈実食タイム〉
素朴な手づくり感。グラニュー糖でじっくり煮詰めているとか。
表面にはそのグラニュー糖がキラキラといい感じで付着している。

職人さんの丁寧な仕事ぶりが伝わってくる、深みのある小豆色。
愛の付着、というジャンルもある。
スプーンですくって、口に運んでからゆっくりと噛むと、大納言あずきのパワフルな風味が穏やかに広がった。たまらない。

無添加づくりなので雑味がない。素朴な洗練。
いい甘納豆が放つ幸福感が心地よい。
しばらく余韻を楽しみながら、二口三口と手が伸びる。止まらない。
【サイドは?】
うぐいす豆:ザラザラ×ふくよかな凝縮

表面のグラニュー糖のザラザラ感がたまらない。
口に運ぶと青えんどう豆のいい風味が押し寄せてきた。
甘すぎず辛すぎない。
うぐいす豆は天候などの影響でカナダ産など外国産を使う店も多い(それはそれで美味しい)が、ここは北海道産にこだわり続けている。

柔らかくふっくらと炊き上げ、時間をかけて煮詰め、乾燥させ、砂糖をまぶすという手順の中に熟練のワザが隠れているような。
風味がひときわ立っているのは、長年豆類を商いにしているこの店の歴史がそのまま一粒一粒の中に沁み込んでいるからだと思う。
ひと言でいうと、「これはうめ~」と一人心地。コーヒーとの相性がいいと思う。
●あんヒストリー
創業はどうやら戦後の昭和22年(1947年)あたりのようだ。向かい側には同じようにレトロ感のある「落花生」の店があり、関連した店かもしれない。女将さんによると、「同じ店ですよ」とか。ちょっとわかりにくいが「豆屋 豆商」「はたの」は同じ店ということのようだ。終戦直後の混乱と活気がいい意味でそのまま大事に残されている、ということかもしれない。個人的には和菓子界の素晴らしき記憶遺産、と呼びたくなった。
白花いんげん豆:大きさとたまらない風味の掛け算

これがよくある白花豆とはひと味違った。
甘さが控えめで、実に柔らかくふっくらと煮詰められている。きれいな風味。
表面のグラニュー糖が主役をよく生かしている。

かなりの大粒。サイズは30ミリ×20ミリほど。
白花豆独特のえぐみが見事に消えていて、口の中にいい余韻が残る。

洗練と素朴のぎりぎりの駆け引きがたまらない。
芯まで柔らかいので、ついつい食べ過ぎてしまう。ここは注意が必要・・・。
と言いながら、私はドリップコーヒーをお代わりしながら、黄金の甘納豆タイムをゆっくりと楽しみ続ける。気が付いたら袋の半分が胃袋の向こう側に消えていた。
「豆商 はたの」
所在地 東京・世田谷区三軒茶屋2-13-18
最寄り駅 三軒茶屋駅から約100メートル
