東京・人形町は大好きなエリア。
江戸⇒明治⇒大正⇒昭和のいい和菓子屋が多い。
私の中では観光客でごった返す浅草よりも渋い、ある種モダンな系譜も感じさせるオーラをまとった町。
今回ご紹介したいのは、いい店構えの「京菓子司 壽堂」(ことぶきどう)。
作家向田邦子さんもファンだった「黄金芋」がこの店の名物だが、今回はこの季節限定の「栗蒸し羊羹」を取り上げたい。
厳選した国産の新栗を惜しげもなく使い、そのほっこり感と風味、それに蒸し羊羹部分の淡い甘さとくちどけがワンランク上だと思う。
「新栗の時期だけ、今月(11月)いっぱいでおしまいです」(女性スタッフ)
昭和にタイムスリップしたような、こじんまりとした昔のままの店内。
きれいな「干菓子」も置いてある。
店名の前に「京菓子司」と謳っているのも矜持(きょうじ)を感じる。
★ゲットしたキラ星
栗蒸し羊羹(1棹)2500円
雲井(どら焼き) 350円
※すべて税込み価格です。
【センターは】
栗蒸し羊羹:和栗の圧倒と蒸し羊羹の淡いマリアージュ
これまで食べた栗蒸し羊羹の中で、最も印象的だったのが京都「御菓子司 亀末廣」の「竹裡」だが、その荒々しいまでの洗練とはまたひと味違う味わい。
まずはその外見を見ていただきたい。
見事な竹皮を取ると、経木が現れ、その下に本体が横たわっている。
そのていねいな包装とかぐや姫を連想させる淡いオーラにあんこころがピコピコ。
サイズは竹皮込みで160ミリ×45ミリほど。重さは込みで293グラム。
「竹裡」ほどのスケール感はないが、こじんまりとまとまっている。
経木を取ると、旬の大栗がぼこぼこと闇夜に浮かんでいる。すご。
その闇夜もどこか淡く優しい。
蒸し羊羹部分にはさらに栗がこれでもかと潜んでいる。
職人さんのこだわりと本物感。
実食タイム 栗のほっこり感がすごい。
蒸籠で蒸しあげている?
新栗の上品な風味がストレートに来る。
晩秋の実りを口いっぱいに感じさせる、穏やかな歯ざわりと豊饒。
蒸し羊羹の淡い甘さ。
上品なマリアージュ。くちどけ。
賞味期間は「無添加づくりなので、明日までにお召し上がりください」。
せめてもう2~3日ほしい気がするが、泣く子と金星老舗の言葉には逆らえない(笑)。
ゲットした翌日午前中の賞味となったが、亀末廣ほどのインパクトはないが、上品で奥ゆかしい「金色の時間」となった。
●あんヒストリー
創業は明治17年(1884年)。現在4代目。初代は東京出身のようで京都でも和菓子職人修業をしているようだ。忙しいためか店のお方の対応がどこか江戸⇒東京風(つっけんどん?)で、そこがまたいいのかもしれない。お味は京都、応対は江戸・東京(?)というのも面白い。
【サイド】
大きさは約90ミリ×85ミリ。ほぼ円形。重さは69グラム。
虎模様のどら皮かと思ったら、菓銘から雲の流れをイメージしているようだ。
風雅などら焼き。
どら皮のふかふか感としっとり感がとてもいい。
何よりもサンドされた中の小倉あんがつややかで、しかも丹波大納言小豆は柔らかく炊かれていて、こしあんとの合体がとても上品。
甘すぎない。
丹波大納言のいい風味が全体の舌触りの中で、縫うように広がってくる。
唾液まで淡い味わい。塩気はほとんど感じない。
新鮮な卵の香りがかすかに来る。
この上品さ、やや物足りないと思うか、上品の極みと思うか、好みによって別れるかもしれない。
「京菓子司 壽堂」