週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

桜餅&いちご大福、驚きのルーツ

 

編集長「あん子さん、久しぶりだね。今回はキミの出身地・桐生の和菓子屋さんだから登場というわけだ」

あん子「編集長も一人じゃ寂しいでしょ。春になったので、たまには地上に出てこないとね(笑)。きょうは桐生の『舟定(ふなさだ)なんでしょ? 知らない人が多いと思うけど、ここはすごいルーツがあるのよ」

編集長「もったいぶらずに早く言っちゃえ」

あん子「芋ようかんで有名な浅草『舟和』の創業者・和助と兄弟分の流れをくむ店なのよ。複雑なので省略するけど、足利にある『舟定本店』の創業者・定吉が浅草で芋問屋を営んでいて、和助と一緒に芋ようかんを考案したというのが最初の話。定吉は和菓子職人でもあったようね。二人とももともとは船橋の芋問屋で働いていた。で、浅草に移り、その後何かの事情で、定吉は足利に移って『舟定』、和助は浅草に残り店名を『舟和』にした・・・

編集長「へえー、知らなかった。で、桐生の『舟定』はその足利本店から暖簾分けしたという流れになるのかな?」

あん子「明治時代から大正にかけての話なので、わからない部分も多いみたい。でも、桐生は今4代目だけど、芋ようかんをベースにして、上生菓子や創作菓子にもチャレンジして地元でもファンが多い店になってるのよ」

編集長「頭がこんがらかって来たよ(笑)。ルーツがすごいってことはわかった。早く本題に行こう。行ってみたら、ここの季節の生菓子がすごくよかった」

あん子「ようやく本題ってわけね(笑)」

 

・今回ゲットしたキラ星

 芋ようかん(2本)

 あんこ玉(白と黒) 税込み604円

 桜餅 1個 同184円

 いちご大福 1個 同324円

 

【センターは?】

桜餅いちご大福、舌の上の春風

 

かつては「西の西陣、東の桐生」と称されたほど、桐生は織物の町。この本町通りのアーケード商店街に「銘菓処 舟定」の長暖簾が垂れている。街はかつてのにぎわいはない。

入り口には無添加 芋ようかん」の文字や「いちご大福」「桜餅」などの品書きが控えめに貼られていて、ここがいい和菓子屋さんとわかる。

 

暖簾をくぐって、店内に入る。明るい活気。いい生菓子類が目に飛び込む。

群馬のマスコットキャラクターの練り切り「ぐんまちゃん」まである。

 

芋ようかんとあんこ玉(白・黒)の折り(芋ようかん2本、あんこ玉2品)を買い、季節の生菓子、桜餅といちご大福(賞味期限は本日中)を買い求めて、その4時間後、自宅に帰ってからさっそく賞味した。

桜餅:4代目は東京の老舗和菓子屋で修業したようで、この桜餅はこしあんのみずみずしさといい、淡い桜色(小麦粉ベース)の皮といい、上生菓子のレベルだと思う。

あん子「さすが桐生の和菓子職人ね(笑)。こしあんも自家製で、しっとり感と塩気のほのめき感がとてもいい。塩漬けした桜の葉もきちんと仕上げてる」

編集長確かに上質だね。桜の自然な香りも上品。小豆は北海道産、砂糖は白ザラメかグラニュー糖だと思う。余韻がすっきりしてるのでグラニュー糖かな。これをセンターにしてもいいくらいだ」

 

いちご大福:これは見た目からし上生菓子だね、半透明の求肥餅の奥にこしあんと旬のいちごがうっすらと見える。餅粉は春の雪。すぐ消えそう。そそられるビジュアル。包丁で何とか真ん中から切ると、藤紫色のこしあんに包まれた、鮮やかな旬のいちごが現れる。

編集長「いちご大福は珍しくはないけど、放たれる気品がすごいね。いちごはとても甘くて酸味もある。自家製こしあんの質が高いなあ。雑味がない」

あん子「なめらかなこしあんね。塩気も少しあるかな。餅の柔らかさとのバランスが三位一体って感じ。300円を超えるのも仕方ないかな。ジューシーな余韻が好きだわ。私はこっちがメーンかな」

 

【サイドは?】

芋ようかん:初代から受け継いだ無添加の芋ようかんだが、個人的な感想では浅草よりもピュアな手作りの味わい。4代目が洗練度を高めていると思う。さつまいもはその時々のいいものを使い、砂糖はグラニュー糖で、できる限り素材の甘さを生かした作り方。なので、食べた瞬間、きれいな美味さに軽く驚かされる。

あんこ玉:黒(こしあん)と白(手亡豆のこしあん)が合わさっている。特に気に入ったのは黒のほう。表面の寒天の膜がしっとりしたこしあんを生かしている。これもグラニュー糖を使っているためか、淡白な甘さがほどよい。とろけるような舌触りがとてもいい。白の方がねっとり感がある。

〈編集長あとがき〉今回は芋ようかんの意外なルーツまでさかのぼったので、ひょっとしてわかりにくいかもしれない。4代目によると、初代定吉と和助はさつまいも問屋で働いているときに余ったさつまいもを捨てるのはもったいない、何かできないか、ということからあれこれ研究して「芋ようかん」を作り上げたとか。いずれ近いうちに「足利本店」も取材したい。

 

「銘菓処 舟定」

所在地 群馬・桐生市本町6丁目398

最寄り駅 JR両毛線桐生駅下車歩約5~6分