京都あんこ旅の締めは驚きの「きんつば」群です。
まずはほんの一部、下の写真を見ていただきたい。
ベースは円形の小ぶりな手焼ききんつばだが、上に乗っている具が上からピスタチオ、くるみ、実山椒(みざんしょう)・・・これだけでもビックリものだと思う。
たまたま新京極店で出会って、「きんつば」の独創的な進化につい立ち止まってしまった。ざっと見ただけでも20種類以上はある。
明治25年(1892年)創業「京菓匠 西谷堂」(にしたにどう)。
「ぐーどすえ金つば」と総称されているが、このグーには「具」と「グー(グッド)」それに「お腹がぐう」という三つの意味があるそう。
「京でっちようかん」で知られた老舗だが、敷居が低い。
〈出会うまでの経由〉
四条河原町から庶民的な新京極に入り、三条方面へとあんブラ(あんこ探しのブラ歩き)を楽しんでいたときに偶然出会った、というのが正直な経由。
以前、楽天ソレドコでお取り寄せの「京でっちようかん」を書いたことがあり、そのときにホームページで「面白いきんつばがあるなあ」とチラ見した記憶がある。「西谷堂の屋号」を見て、「ここだったのか」とあんこの縁を感じた。あんこの神様のいたずらかもしれない。
新京極は西谷堂が元々あった場所。周辺には芝居小屋や寄席、飲食店の多い歓楽街だったようだ。となりの寺町通りとは雰囲気が違うことがわかる。
さて、「ぐーどすえ金つば」。
ベースは自家製つぶあん(北海道産小豆+てん菜グラニュー糖)だが、上に乗せる具のアイデアがスゴすぎる。ミスマッチぎりぎり。
定番のほかにラムレーズン、アーモンドスライス、ブルーベリー、丹波栗まで。紹介しきれない。
全部ゲットしたかったが、キリがないので、6種類だけ選んだ。
●あんポイント きんつばの形は現在では四角がほとんどだが、名前が示す通り、江戸時代は刀のつばの形、つまり円形だった。発祥地は実は京都で「銀鍔(ぎんつば)」と呼ばれていたようだ。それが江戸に入ってから、「金鍔(きんつば)」と江戸っ子好みの派手な名称になった。四角い形になったのは明治以降というのが定説。
・ゲットしたキラ星
金ごま(ベーシック) 税込み98円
黒ごま 98円
くるみだく 152円
ピスタチオだく 152円
実山椒だく 152円
もっちり干し芋 216円
【センターは?】
山椒とつぶあん、食べたら「うめ~」
それぞれが魅力的なので、センターにどれを持ってくるか迷ったが、意外性で「実山椒だく」を選んだ(写真上段一番右)。真ん中に白ごまと緑色の実山椒が寄せ合っている。手焼きの素朴感。
想定外の具の中でも、実山椒(サンショウの実)は正直、最大級のミスマッチかも、と思ったが、よく考えたら、東京には「切り山椒」があるし、京都・鞍馬にも「山椒餅」がある。
これが私的には驚くほど美味だった。
山椒独特の刺激的な香りが中の主役(自家製つぶあん)をむしろ引き立てている。口の中であんこの化学反応が起きた、ような感じかな。
小豆は粒々感を残しながら柔らかく炊かれていて、繋ぎの寒天も出過ぎていない。あんこ曼荼羅(まんだら)・・・。
鞍馬の実山椒をわざわざ使っているのも好感。
甘さを抑えたつぶあんと山椒がこんなに合うとはね。
皮は小麦粉に山芋を加えたもの。焼き色のムラも職人さんの手を感じる。
重さは約37グラムほどと小ぶりだが、つい「キミ、きんつばの小さな巨人だね」とつぶやきたくなってしまった。
【サイドは?】
サイドは横一線でご紹介したい。
・金ごま 西谷堂が創業当時から焼いているそうで、いわばベーシックきんつば。江戸期に京都で誕生したきんつばに近いのではないか。つぶあんがストレートに来る。
・黒ごま 東京・日本橋「榮太樓」の「名代金鍔」とほぼ同形で、黒ごまの香りが強め。
・ピスタチオだく ピスタチオとつぶあんのマリアージュがとてもいい。この意外性も1∔1=3の世界に近い。
・焼きくるみだく くるみがぼこぼこ。焼きくるみの風味とつぶあんの相性もすばらしい。見た目からして心がわしづかみされる。
・もっちり干し芋 天日干しの国産干し芋の蜜と甘さ控えめなつぶあんが絶妙に溶け合う。ありそうでそうはない、きんつばの傑作だと思う。
〈後日談です〉
不明な点をいくつか聞こうと思い切って電話したら、偶然、それが5代目だった。ていねいに応対していただき、「ぐーどすえ金つば」は新しいチャレンジかと思っていたが、「創業当時からでっち羊羹ときんつばは作ってたようです。それにぜんざい、飴も作っていましたね」とか。その創業当時のきんつばが「金ごま」で、ここまで種類を増やしていくのはずっと後になってからのようだ。京都は進取の気性に富んだ古都でもあること、思い出した。
「菓匠 西谷堂新京極店」
所在地 中京区新京極三条下ル石橋町16
最寄り駅 地下鉄京都市役所前から歩約5~6分