編集長「どうしようか迷ってたけど、誘惑に駆られて、お取り寄せしちゃったよ。物は試しでね」
あん子「メディアでも随分と取り上げられて、へそ曲がりの編集長としては、躊躇(ちゅうちょ)しちゃうあんこスイーツね」
編集長「いちご大福とシャンパンを組み合わせるなんて、和菓子屋さんの発想ではない。フレンチレストランがあんこ、それもいちご大福に目を付けるなんて、フツーは考えられない。登場した時はびっくりしたからね」
あん子「でもお取り寄せした。好奇心を抑えきれなかったわけね。安くはないし、クール便で届いたら賞味期限は3日間、というのもハードルが高いですね」
編集長「宣伝文句によると、東京・広尾のミシュラン一つ星フレンチ『レヴェランス』が遊び心でシャンパンとのマリアージュを実験していて、偶然、出来上がったみたいなことが書いてあったけど、どんな味か、コスパ的にはどうか、クエッションが一杯あった。興味深い代物だよ」
あん子「で、ついにお取り寄せして、食べてみた(笑)。今回は私も恐るおそるいただきました。食レポ、楽しみだわ」
【本日のセンター】
シャンパンいちご大福(黒あん)
1箱(6個入り) 4104円(税込み)
※送料は別途必要
1980年代に「いちご大福」がすい星のごとく登場して、和菓子の世界にある種の甘い革命を起こしたけど、今回はシャルドネ系のシャンパン(モエ・エ・シャンドン)を組み合わせた。本物なら久しぶりの興奮(笑)。
美味ければ「すごい!」と称賛され、マズければ「そんなのはじめっから無理だよ」と切り捨てられる。
だが、有名人を含めて、おおむね好評なので、人気ぶりに拍車をかけている。
私が注目したポイントの一つは創業100年を超える老舗和菓子屋さん、赤坂「青野」のこしあんを使用していること。
かのスティーブ・ジョブスや皇室関係者にもファンが多い名店で、赤坂界隈では「塩野」と並び、あんこのレベルの高さには定評がある。
・初日の試食
クール便で届いたその日に2個だけ食べてみた。
シャレた白い紙箱に6個きれいに納まっていた。
ドリップコーヒーを用意して、しっかりと包まれたシャンパンいちご大福を真ん中から切ってみることにした。
いちご大福とかすかなシャンパンのブーケが鼻腔をくすぐる。
頂上から少しだけ真っ赤ないちごが顔を出し、羽二重餅は大きめで、うっすらとあんこが透けて見える。
つかみはオーケー。期待感も膨らむ。
サイズは幅約60ミリ、高さ40ミリ。重さは約85グラム。
餅があまりに柔らかい(求肥餅のよう)ので、切るのに少し苦労したが、見事な断面が現れた。
とちおとめかあまおうか、種類は不明だが、瞬間冷凍して保存したようなみずみずしい鮮度。
その周囲を純度の高い藤紫色のこしあんが包んでいた。
さすが青野のあんこ!
シャンパンはどこにいる?
ひと口でこれはすごいね、と思った。
餅の柔らかさ、こしあんの絶妙、いちごの鮮度。
その合間を縫うように、シャンパンの刺激が全体を不思議な美味さに押し上げている。
よく見ると、いちごの中心部にジュレ状のシャンパンが嵌まっていた。
なるほど、これがこのいちご大福の秘密か。
ここは脱帽したくなるアイデアだと思う。
甘すぎないのが好感。シャンパンのジュレが中心部で全体を引き締めている、そんな感じ。
初日のせいか、ややいちごのジューシーさが勝っている気がする。
こしあんのなめらかな舌触りがとてもいい。
口の中に幸せなマリアージュ(ワイン用語で結婚、恋愛などの意味)が広がる。
1+1=3の世界が確かに存在している。
これはあんこの世界における、コロンブスの卵かもしれないな。
・3日目の試食
賞味期限の3日目。冷蔵庫から取り出し、残りの2個を食べてみた。
変化はあるのか、あるいは味が落ちるか、ワクワクしながら。
少しだけ餅が固くなっていた。思ったほどの変化はない。
だが、味わいが微妙に変化していた、と思う。
全体にマリアージュが進み、初日のどこかぎくしゃくした結婚生活が、絡み合い、じわりと馴染んできて、旨みがさらに増したよう。
なので、私的には初日よりも3日目の方が気に入った。
これは大人の、官能的ないちご大福だと思う。
送料も入れると、1個当たり900円近い。
なのでコスパ的には微妙かもしれない。
とはいえ、異業種のフレンチからこうしたユニークな試みが出てきたこと、大きな目で見ると、悪いことではないと思う。
和菓子界にもいい刺激になるのでは?
あんこの世界がワールドワイドになっていく。
あんこの神様もきっと片目をつぶっているに違いない。
「レヴェランス シャンパンいちご大福」
製造者 株式会社DAIFUKU
所在地 東京・中央区築地6-11-8一瀬ビル