編集長「コロナ禍のあんこ旅の途中で面白いどら焼き専門店を見つけたよ」
あん子「代々の和菓子屋さんで、4代目になって、店名をカタカナに替え、どら焼き専門になった店でしょ? 定番のつぶあんから珍しい不思議系あんこまで常時15~17種類、珍しい店よねえ」
編集長「確かに。レアすぎ(笑)。でも、このチャレンジ精神、希少かもな。バタどら、抹茶あん、桜あんなどは珍しくないけど、ミルクあんとかミントあんになると、ほお~って感じになる」
あん子「ミントなんて聞いたことないわ(笑)。どんな味か試してみたい」
編集長「白あんにミントのペーストを加え、そこにチョコチップを練り込んでいる。ビジュアル的にも水色のあんこにちょっと驚くよ。しかも『邪道系ドラヤキ」と表記しているくらいだから、店主は意図したバサラ系どら焼き職人ということになる。今回買ってきたのは5種類だけど、センターに何を置くか、迷ったけど、あまりに珍しいので、チョコミントどら焼きにしたよ」
あん子「信じられない。珍しいけど、美味いかどうかは別かもね。個人の趣味嗜好になるけど、編集長の舌の捻じれ方がわかるわ(笑)。早く食レポしてよ」
【本日のセンター】
邪道の「ザ・チョコミント」と名物バタどら
この店の存在を知ったのはひょんなこと。古河から宇都宮にかけて国道4号線を北上していたら、小山市近くで「御菓子司 和田屋」の古い、昭和な店構えが見えた。
車を止め、店に入ろうとしたら、人の気配がなく、すでに閉店していた。「バタどら」の文字が反応のないガラス戸から見えた。セピア色の時間。
老舗和菓子屋が閉店するのを見るのは悲しい。特にコロナ禍の中で。
しばし佇んでいると、近くを通ったおばさんが「ずいぶん前に閉めたんですよ。私たちも残念。でも、お孫さんが新しく『ドラヤキワダヤ』を始めて、どら焼きの専門店になって、結構人気を呼んでるわよ。寄ってみたら?」
だが、電話すると、お休みだった。半年ほど前のこと。
で、今回、ようやく栃木のあんこ旅の途中で立ち寄ることができた。
和菓子屋とは思えない、バタ臭い外観。「ドラヤキワダヤ」のカタカナロゴに店主の野心と心意気を感じる。
定番のどら焼きから邪道のどら焼きまでバラエティー豊かに木枠の中に納まっていた。
店内はアメリカ西海岸の雰囲気。初心を忘れないためか、初代からの菓子型と「和田屋」の木箱が不思議に調和している。悪くない光景。
ユニークな創作餡のどら焼きなどが確かに15種類以上並んでいて、手書きの商品紹介も面白い。
「とちおとめ苺ショート」(税込み280円)、「那須牧場のミルク餡」(同200円)もユニークだが、最も目を引いたのが「ザ・チョコミント」(同280円)だった。
その「ザ・チョコミント」。水色のあんこ。
どら皮は4代目の手焼きで、こんがりといい色に焼かれている。
大きさはむしろ小ぶり。直径が約73ミリ、2枚重ねで、厚みが約40ミリ。重さは約70グラム。
地場の小麦粉に地場のハチミツと卵を使い、銅板の上でやや固めに焼かれている。しっかりとしたスポンジ皮で、添加物は使用していないので、いい風味が立つ。
問題のミントのあんこは噛んだ瞬間、ハッカの香りが口中に広がった。よく考えるとありえない感触。
白あんにミントペーストを練り込んだ、4代目の野心作だが、白あんはむしろ奥に隠れ、代わってダークチョコが洋菓子のようなアクセントをつけている。
でも不思議に悪くない。ミスマッチではない。案外イケる。
冷蔵庫で冷やしたら、味わいが深くなった。
初めて味わうどら焼きだが、どら皮の美味さがベースにある。
この今風のチャレンジ精神は面白いのではないか。
反対に「名物バタどら」(約70グラム 同200円)はフツーに美味い。
あんこは生餡を製餡所に特注、そこに4代目がオリジナルで様々に手を加えているようだ。
「バタどら」は先々代(昭和初期)から先代にかけての同店の名物どら焼きだが、4代目がその味をしっかりと守っていることになる。
「元々はアパレルの仕事をしていて、和菓子の修業は浅いんですよ。どら皮を手焼きするのも大変で手間がかかります」
と、謙遜するが、古さと新しさ。保守と奇抜。自分で「邪道」と言い切るバサラ度。このチャレンジが成功するか、見守っていきたい。
【本日のサブ】
・こしあんバター(71グラム 同200円)
こしあんバターはありそうでないどら焼き。バターとこしあんがよく合う。つぶあんの野暮に対して、こしあんの洗練がこしあん好きにはたまらない。
・とちおとめ苺ショート(75グラム 同280円)
白あんに地場の苺とちおとめを練り込み、白いミルクチョコを挟んでいる。洋菓子の味わいもある。どら焼きの可能性が広がる。
・那須牧場のミルク餡(67グラム 同200円)
白あんと那須牧場のコラボ。ミルク餡の厚さは1センチ以上ある。絶妙なブレンドで、口の中に新鮮なミルクの風味が残る。那須牧場のネーミングがクールだと思う。
「ドラヤキワダヤ間々田本店」
所在地 栃木・小山市乙女3-30-27
最寄駅 JR東北本線間々田駅西口から歩約2分