編集長「今回は偶然見つけた和菓子屋さんをピックアップしたい」
あん子「伊奈バラ園でトゲに刺された後の話ね(笑)。いい店構えで『とらや』の看板が目に飛び込んできたんでしょ?」
編集長「皇室御用達の京都⇒赤坂とらやがあまりに有名だけど、別の系譜の虎屋もあるんだよ。吉祥寺虎屋とか地方にもいくつかある。ここもその一つかな」
あん子「はいはい、うんちくはいいから、先行きましょ。船が出ちゃうわよ」
編集長「上生菓子から豆大福、草餅、だんごまでいいラインアップで、よだれが出ちゃいそうになったよ(笑)」
あん子「笑えない。で?」
編集長「この店の目玉の一つがどら焼きだとわかった。大栗どら焼き、生どら焼きなどが4種類ほど。チャレンジ精神も感じた。1個だけ売れ残っていた草餅も加えて、4種のどら焼きを買い込み、コーヒーを淹れて、賞味してみた」
あん子「で、今回のセンターは?」
編集長「ジャーン、少し迷ったけど、大栗どら焼き! 店主はかなりの和菓子職人だと思う。大胆で繊細、ちょっと感動したよ。粒あんの美味さも上質だった」
あん子「私は手焼きのどら皮のしっとりとした美味さにオオオとなったわ」
編集長「渋いところに感動するね。でもまあ、すべてに手抜きがない、いい和菓子屋さんなのは私が保証する」
あん子「編集長の保証なんてノミのあくびみたいなものよ。何の価値もない(笑)」
編集長「例えがひどすぎる・・・」
【今週のセンター】
大栗どら焼き(税別 240円)
見た目は東京・阿佐ヶ谷「うさぎや」を思い起こさせる。
きつね色の見事な焼き色。どら焼き4種の中で大きさも重量も十二分にある。量ったら約105グラム。
直径は約93ミリほど。厚さは約35ミリほど。中央の盛り上がり。端はしっかりと閉じられている。丁寧な仕事ぶりがわかる。
包丁で切ってみると、蜜煮した国産大栗はきれいで、お月様のようにデカい。
その周りをつややかな粒あんが囲んでいて、上質な粒あんだとわかる。
しっとり感のあるどら皮の美味さにちょっと驚く。
内側はふくよかな粒あんが少し滲み込んでいて、きりっとした大栗が崩れ落ちると同時に、小豆の風味と栗の風味が絡み、どら皮と駆け落ちするように喉の奥へと消えていく。そんな感じ。例えがヘンかな?
つまりは飛び切り絶妙な美味さ。
甘さがほどよい。
個人的にはあんこ狂なので、あと1ミリほど粒あんが多いとうれしいが、全体のバランスを考えると、これがベストかもしれない。(当たり前だろ)
その意味では「伊奈ローズちゃん(手焼きどら焼き)」(同 140円)は侮れない。
伊奈のキャラクターを焼き印した一回り小さいどら焼きだが、どら皮と粒あんの美味さがよりシンプルにわかる。
皮のしっとり感と蜜の滲み方がより強調されていて、粒あんの柔らかな上質が口の中でススと蕩けていく。雑味がない。
ローズちゃんの陰の意外な発見、と言いたくなった。
店は「9年になります」(若女将さん)とかで、2012年にこの地で旗揚げしたようだ。なので店の歴史は浅いが、和菓子職人としてはかなりのレベルだと思う。
埼玉・北本「とらや」で修業後に暖簾分けしたようだ。
ちらりと顔を見せた若い店主はいい職人にありがちな、愛想のなさがむしろ好感。素材へのこだわり方も半端ではない。
小豆は北海道産。大納言小豆も使用。餡作りの砂糖は「商品によって鬼ザラメと赤ザラメを使い分け。上白糖やグラニュー糖は使わない」とか。キレとコクが違う、というのがその理由のようだ。
自家製あんこも売っている。
で、着地。きれいなバラの陰にはいい和菓子屋さんがある。
【今週のサブ】
生どら焼き2種、モンブラン餡&コーヒー餡
どちらも税別165円。白餡に生クリームをブレンド、それぞれイタリア栗の無農薬ベースト(右)とコーヒー(左)を練り込んでいる。
伝統と新しいチャレンジ。
個人的にはつぶ餡の上質が滲んだどら焼きの方が好みだが、こうした試みは好感。
編集長「こうした技術のしっかりした和菓子屋さんに出会うとうれしくなるよ。今度は売り切れていた豆大福とだんごを買いに行きたいね。草餅も丁寧に作られていて、美味かったよ」
あん子「私に隠れて食べてたわね。餅菓子好きの編集長のせこいところよ」
編集長「最後の一個だったし、粒あんだったし・・・」
あん子「理由になってない。月に代わってお仕置きよ(笑)」
編集長「トゲが出てきた。でもギャグが古い気がする・・・」