週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

究極か?奥秩父「幻の草もち」

 

編集長「今日はうれしいよ。奥秩父で見つけたとんでもない草餅を紹介できる」

 

あん子「また編集長のオーバー癖が始まった。過剰も過ぎると誰も相手にしなくなるわよ。と言いたいところだけど、今回はホントだった(笑)。私も驚いたから」

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編集長「おばあちゃんがやってる昭和レトロな店で、食べる前は田舎の素朴な草餅だとまあ、軽く考えてた。あんこも渋切りをほとんどしない、野暮ったい粒あんだろうな、と思ってた。ところがどっこい・・・

 

あん子「ああ、じれったい。早く次行きましょ。草餅大好きの変なヘン集長の食レポ、聞いてあげるわよ」 

 

編集長「編の字が違うよ(汗)。今回はそのメーンともう一軒、小鹿野町の別の店の草餅(粒あんこしあん)も取り上げ、秩父の草餅対決にしたい。着地が決まったね」

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あん子「対決好きに付ける薬はないわ。和菓子って対決するもんじゃないのに・・・困ったクセねえ」

 

【今週のメーン】

幻級の草餅、柴崎製菓「草もち」

 

この草餅の存在を知ったのは5年ほど前。知人からの情報。添加物はゼロ、「すべて早朝の手作りで、作る数が限られているので、朝並べるとすぐに売り切れてしまう。幻の草餅って呼ぶ人もいる」というものだった。

 

何とか電話がつながり、今回、ようやくゲットすることができた。田舎のおばあちゃんが作る草餅。食べなくても想像がつく。まあ気が向いたら食べに行こう・・・本音で言うと、かなり遠いので、半分忘れかけていた。

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「天空の神社」三峯神社に行く用があり、なかなかつながらず、3度ほど電話してようやく予約、期待半分でご対面となった。コロナの影響で客足が落ちているのもラッキーだった(?)。

 

「草もち」のノボリがひるがえり、かなりご高齢の女将さんが一人。少し前までは栃餅なども売っていたが、他のものは止め、現在は「草もち」一本勝負とか。

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店内は暗めで、写真撮影は「汚いから」とダメ出しを食らってしまった(遠慮深いが、当然とも言える)。

 

「風邪が流行ってからはお客が減った」

 

とボヤキ節も出たが、創業年などは「昔からやってる」とだけで、教えてくれなかったが、「柴崎製菓」の店名でわかるように、元々はフツーの和菓子屋さんだったようだ。「風邪」がコロナのことだとわかるまで少し時間がかかった。

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「今日中に早めに食べてくださいよ。すぐ固くなるから」

 

賞味期限は本日中。1パック(6個、税込み600円)を買い求め、夕方自宅に戻ってから、いよいよもぐもぐタイムとなった。

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餅粉がかかったお姿はよもぎの色がきれい。重さは手作り感がマックスで、一個ずつ微妙に違う。58グラムから62グラム。

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搗(つ)き立てから約6時間後、手に持つと餅の柔らかい感触がしっくり来た。意外だが、よく見ると、よもぎの鮮度が繊細で美しい。

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中の粒あんがこれまでの想像を超えていた。透明感のある藤色の小倉あん。小豆の形はしっかり見えるのに、羽毛のように柔らかい。

 

しっとりととろみのあるあんこで、小豆の中の呉(中身)の白い透明感が砂糖の愛で、くねくねと身をよじらせているような(表現がヘンかな?)。ありそうであまりないあんこだと思う。それがたっぷり。

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よもぎ餅は表面がほんの少し固くなりつつあったが、羽二重餅のように柔らかい。

 

最初のひと口でやられてしまった。

 

あんこの塩気がストレートに来た。いやな塩気ではない。きれいな、あまりにきれいな塩気。

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すぐ後から、とろみのある粒あんが口中に放射状に広がるのがわかった。

 

えー。

 

うまく表現できないほどの、質の高い、素朴とはほど遠い、むしろ特別な洗練を感じる粒あん。繊細な柔らかさ。

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甘さも絶妙にほどよい。このあんこの美味さ、京都の上生菓子屋の粒あんを思い出したほど。

 

これは別格の草餅だと思う。

 

秩父にこんな草餅が隠れていたなんて(別に隠れていたわけではない)。

 

これまで食べた草餅の中では浅草・向島の「志”まん草餅」に匹敵する抜けるような味わいだと思った。幸せあんこ。好みの問題だが、あるいはあんこはこちらの方がゼロコンマですごいかも(体調の関係かも)。

 

断片的に取材したこと。

 

小豆は北海道十勝産。砂糖はグラニュー糖。完全自家製。よもぎはひょっとして手摘みかと思ったが「体がもたないよ」でどうやら問屋さんから仕入れているようだ。餅も自家製。

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おばあちゃん女将にまさかお一人で作っている?と聞いたら、「この年じゃ無理だよ」で、何人か(ご家族?)で手作業しているようだ。一個一個大きさが微妙に違うのもこれで納得。

 

それにしても凄い草餅で、事前の田舎⇒素朴⇒それなり、の図式が狂った。脱帽いたします。

 

【今週のサブメーン】

「和菓子 かのうや」の草もち

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小鹿野町で戦後創業。現在2代目。饅頭から大福、練り羊羹まで幅広いラインアップ。草餅は粒あん」と「こしあん。どちらも税込み110円。

 

柴崎製菓の草もちよりも平たく大きい。重さも87グラムほど。

 

きな粉がかかっているのが特徴。

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粒あんよりもこしあんの方が個人的には美味かった。こちらもあんこは自家製で、北海道産小豆と上白糖、塩で素朴にまとめている。

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編集長「柴崎製菓が凄すぎて、比べるのが違う気がする。こちらもフツーに美味い。特にこしあんはしっとり感といい、ふくよかさといい上質だな」

 

あん子「柴崎製菓の草もちはひと味違うのは確かね。塩草もち、と言いたいくらい塩気が強いけど、なんて表現したらいいのか、雑味がない、ピュアな美味さ。編集長も最初は小バカにしてたけど、食べたら、目がまん丸になってたわよ(笑)」

 

編集長「小バカにはしてないよ。でもまあ、今回は秩父の和菓子の底力を感じたなあ。かのうやもいいレベルだと思うよ。今回の教訓。思い込みは世界を見間違える」

 

あん子「ダメね、思い込みが強すぎるのよ。ようやく自分の欠点を理解したのね」

 

編集長「編集長を交代したくなってきた・・・」

 

●所在地 

「柴崎製菓」 埼玉・秩父市荒川白久1567-1

「和菓子 かのうや」 秩父郡小鹿野町小鹿野404-11

 

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