今日は3.11から10年。何もできないので、せめて黙とうしてから今日のあんこ菓子を取り上げようと思う。10秒間の沈黙の時間。双葉町で和菓子屋を営んでいた森さん、お元気でしょうか?
話は戻る。友人の編集者が「博多の鈴懸(すずかけ)、知ってますか? 豆大福が絶品ですよ」と私に教えてくれたのは数年前。
博多に行ったら訪ねようと思いながら、いまだその機会はない。半分忘れかけていた。
たまたまテレビでこの鈴懸の「いちご大福」を取り上げていた。よだれが出かかった(下品な表現で申し訳ありません)。
冷凍でもいいから何とかお取り寄せできないものか、すぐに電話した。
答えは「ノー」。豆大福も含めて生菓子類は対応しておりません、とのこと。そうだろうな、と納得。
次善の策で、お取り寄せできるものを尋ねたら、いくつか教えてくれた。ややこしいお客に丁寧な対応だった。
選んだのが「香海(こうみ)」(求肥餅を塩羊羹で包んだもの)、「心葉(とろろ)」(かるかん饅頭?)、それに「鈴乃最中 おてづめ」の3品。
賞味期限が1週間以上が条件だった。
「鈴懸(すずかけ)」は博多を拠点とした和菓子屋さんで、創業は大正12年(1923年)。現在3代目。
初代は「現代の名工」にも選ばれた和菓子職人。3代目はやり手のようで、初代が作った伝統の生菓子を受け継ぎつつ、世界を視野に新しい和菓子の世界を提案し続けている、ま、表現を変えると、和菓子界のスティーブ・ジョブスみたいなお方(だと思う)。ちょっとオーバーかもしれないが、大化けの可能性はある。
さて、3品の中で個人的に最も感動したのは「香海(こうみ)」だった。一本756円(税込み)。重さは237グラムほど。サイズは縦100ミリ×幅45ミリ×厚さ38ミリ。
ごらんのとおり。見た目は小豆羊羹そのもの。
よく見ると、小豆のつぶつぶ感が凄い。ずっしり感と只者ではない気配が妖気のように漂っていた。
包丁で切ると、中が求肥餅で、あの叶匠寿庵(かのうしょうじゅあん)の「あも」とよく似ている。
お供はハンドドリップコーヒー(あんこ菓子とコーヒーはよく合うと思う)。
口に入れたとたん、まず塩気が来た。絶妙な甘さと塩気。小豆の柔らかなつぶつぶ感が美味の波となって押し寄せてきた。
この美味さ、「あも」を超えるかも。凝縮したいいあんこの風味が口の中で小爆発するよう。オーバーではなく、そんな感じ。塩加減がたまらない。
素材へのこだわりも凄く、塩は五島列島の一番塩を使用、小豆は北海道の契約農家から直接仕入れているようだ。素材だけではない、職人さんによる手作りのこだわり、すべてが高いレベルを目指しているのがわかった。
「心葉(とろろ)」は皮が厚めで鹿児島産つくね芋入り。中はさらしあんのようなサラッとしたこしあん。軽羹饅頭(かるかんまんじゅう)のよう。4個入りひと箱564円(同)。伝統的な逸品で、私的にはフツーの美味さ。
最後の「鈴乃最中 おてづめ」は同店の目玉の一つだが、別盛のつぶあんを鈴の形の皮だねに自分で詰めるのがミソ。1箱4組1577円(同)。
なので、皮だねの香ばしいパリパリ感が凄い。新潟産の糯米(もちごめ)「こがねもち」を使用している。
何よりもつぶあんの美味さが一線を超えている、と思う。
しっかりと形はあるのに、小豆の旨みを最大限に引き出しているよう。甘めで塩気もある。ふくよかな広がりがいいね。
この店の基本があんこにあることを実感させてくれる味わい、だと思う。
この店のファンは多く、博多をベースに名古屋や東京にも店舗を増やしている。
3.11から10年。双葉町の和菓子職人・森さんにあんこ作りを少しだけ教えてもらったことを思い出しながら、博多のあんこ菓子を堪能した。午後2時46分が近づいている。
あんこの神様にも手を合わせることにしよう。
【今回のお取り寄せ】
香海(こうみ) 1本756円
心葉(とろろ) 4個564円
鈴乃最中おてづめ(4組)1577円
送料(クロネコ便) 990円
代引き手数料 330円
合計 4217円