たまたま雑誌のお取り寄せ特集を見ていたら、「ラムドラ」なるどら焼きに出会った。ラムとドラ? 何となく秘密の匂い。
「ラムの風味が香り立つ大人のしっとりどら焼き」
そんなキャッチコピーに砂糖(あんこ)と左党が同居する私の頭に、「食べてみたい!」という好奇心がむくむくと湧きおこった。
発売元は大正10年創業、鹿児島日置市の老舗和菓子屋「梅月堂」と表記してあった。
あんこ脳は止まらない。すぐに電話。たまたま4代目がお出になって、私が埼玉ですと言うと、「それじゃあ大宮のエキュートにも限定で出してますよ」と親切に教えてくれた。
思いがけない展開。
鹿児島まで行かなくても、お取り寄せの手間ひまをかけなくても、これはゲットラッキー!と入荷日を確かめてから、エキュート大宮内の「日本百貨店」へ。あった。
日本橋高島屋地下の「銘菓百選」の小型版みたいなコーナーで、目的の「ラムドラ」(1個税込み324円)と季節限定の「和栗ぬれどら」(同216円)を買い求めた。ついでに熊本・山江村「やまえ堂」の「栗きんとん」(1本 同702円)も買い物かごに入れた。どちらもそう安くはない。
自宅に持ち帰って、まずは「ラムドラ」の実食。
パッケージを開けたとたん、ラム酒(ラムレーズン)の香りが花開いた。本格的な強く甘い蒸留酒の香り。好きな人にはたまらない。確かに大人の誘惑って感じ。
ラム酒の本場はジャマイカ。ウサイン・ボルトかマーリン・オッティが隠れていそう(そんなはずはない)。
一個一個手焼きしているというカステラ生地のような薄めの皮。手にくっつくほどのしっとり感。鹿児島産鶏卵とハチミツの香り。濃い。
大きさは左右約7センチ、厚みは3センチほど。小ぶりだが、中のあんこの質とボリュームがすごい。北海道産大納言小豆を使い、自家製だというラムレーズンがゴロゴロ入っていた。
ラム酒は知る人ぞ知るジャマイカ・マイヤーズの100%ダークラムを使っているそう。素材へのこだわりも地味だが好感。
皮も甘いので全体的に甘さはかなり濃い。ラム酒の香りが邪魔にならない。ある種官能的な、レアなどら焼きだと思う。なので大人以外立ち寄るべからず、と立札を置きたくなる。
ここまでラムにこだわるとは、原産地がジャマイカだけにどら焼き界のコロンブスの卵かもしれない。ラテンと大納言が意外に合ってることに驚く。
もう一つ。「和栗ぬれどら」はラムレーズンではなく、蜜煮した和栗が丸ごと一個、大納言小豆に包まれるように入っている。
こちらもカステラ生地のような、しっとりとしたスポンジ皮で、一枚一枚手焼きしているそう。「焼くのが難しいんですよ」とか。
柔らかく炊かれた大納言小豆とほっこりした栗が調和している。ラムドラよりもクセがない分、食べやすく、余韻もきれい。アルコールが苦手な人もこれなら楽しめる。
一緒に買った「やまえ堂」の「栗きんとん」はあまりに素朴で、コスパも含めて期待値ほどの感動はなかった。
やまえ栗100%使用(砂糖と塩のみ)、素材そのまま。山江村は栗の産地でファンも多いが、ぼそぼそと崩れる。
それがいいんだよ、という人も多い。ここは好みの別れるところだと思う。
【所在地】