コロナと暑さでときどき「わあー」と叫びたくなる。
ゴジラ一歩手前状態(笑)。危ないアブナイ。
なので、今回取り上げるのは、頭を静めるのに適した涼やかな生菓子です。
まだ遠出できないので、お取り寄せ。
慶応元年(1965年)創業、加賀麩の老舗「不室屋(ふむろや)」の「生麩まんじゅう」がターゲットです。
オンラインで注文、自宅に届いたのは2日後。
実物を見ただけで、涼風が脳内を通り抜けていく。生菓子一つで世界が変わることだってある・・・まさか?
10ケ入り(税込み2376円)。クール便(冷凍)なので、送料がプラス1045円かかる。
すぐに冷蔵庫に入れ、約4時間かけて、ゆっくりと解凍する。
みずみずしいクマ笹で三角形に包まれていて、それをていねいに取ると、主役が現れた。
笹の香りとともに、うっすらと若草色の麩まんじゅうは、宝石のようにつややかで、しかもみずみずしい。清流から抜け出てきたような印象。
青のりを練り込んでいる?
「いいえヨモギなんですよ」(不室屋)
口当たりの食感はつるりとしていて、ぷにゅりとした、柔らかな歯触りと上質の生麩の香りが広がってくる。ヨモギの香りはかすかにする程度。
中のあんこはこしあん。濃い藤紫色に吸い寄せられる。
麩まんじゅうの元祖・京都「麩嘉(ふうき)」もこしあんなので、これはいわば麩まんじゅうの本流の形と言えそうだ。
こしあんはなめらかな舌触りといい、芳醇できれいな小豆の風味(大納言小豆?)といい、控えめな甘さといい、京都に次ぐ和菓子の街・金沢の奥行きを感じさせるものだと思う。
砂糖はグラニュー糖を使用している。
冷たい麦茶で舌を洗いながら、2個ゆっくりと味わう。
コロナ包囲網の中で、小さな黄金の時間が過ぎていく。
皮には餅粉も加えているので、もっちり感も十分にあるが、思ったほど手にも歯にもくっつかない。
笹の香り、生麩、こしあん・・・絶妙な上質の交錯だと思う。
すーっと抜けていく余韻がきれい。
あんこの恋愛に例えると、「後朝(きぬぎぬ)の別れ」という言葉をつい連想してしまう。
生麩の歴史は古く、精進料理として、中国から入ってきたようだ。それが日本で洗練され、千利休も茶会では麩料理を使っている。
だが、生麩にこしあんを入れたのは、歴史的にはそう古くはない。
スイーツ好きだった明治天皇のたっての依頼で、「麩嘉」が作ったのが最初と言われている。
明治天皇は山岡鉄舟を通じて、銀座木村屋のあんぱんもよく所望したというエピソードも残っている。大のあんこ好きだったようだ。
約2年前、あんこ旅で金沢を訪れた時、「加賀麩 不室屋」(尾張町店)の黒暖簾と蔵造りの佇まいがとても印象に残った。
その時はたまたま都合がつかず、中で麩まんじゅうを食べそこねてしまった。
写真だけ撮り、次の機会に来ようと立ち去ったが、その後コロナなどで行くことがかなわず、その恨み(?)が今回のお取り寄せとなった。
つまり、2年越しの甘いご対面となったわけである。
〈お取り寄せ〉
生麩まんじゅう(10ケ入り)税込み2376円
(別途送料 1045円)
合計 3421円なり