週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

コロナも退散?初夏の「麩まんじゅう」

 

 茨城、岐阜、愛知、石川、福岡の特定警戒5県の緊急事態解除が明らかになった。

 

リスクはあるが、まずはめでたい。

 

なので、久しぶりのあんこ旅

 

今回ピックアップしたのは茨城・坂東市の老舗和菓子屋「創作和菓子 すずき」

 

以前から目を付けていた店。創業百年ほど。現在4代目

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そこで見つけたのが「麩まんじゅう」(税込み 160円)だった。

 

あんこセンサーがビビビと反応した。

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想像以上の上質で、みずみずしい笹に包まれた、ある種かぐや姫の予感・・・。

 

中のあんこは?

 

「創作和菓子」と銘打っているが、バラエティーに富んだ饅頭類や大福、それに人気ナンバーワンという「かりんとまん(かりんとう饅頭)」など、いずれも小ぶりだが、歴史と上生菓子の気配がある。しかもローカル価格。心惹かれたので、それらを買い求めて、約5時間後、自宅で一人品評会を開くことにした。

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何よりも賞味期限が短い「麩(ふ)まんじゅう」から。

 

透明な包みを取ると、いきなりみずみずしい熊笹の香りが鼻先をくすぐる。

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初夏の「たまらん!」。

 

黒文字で留められた熊笹を取ると、湧き水から抜け出てきたような、麩まんじゅうが現れた。まるで水の小さな女神だよ。

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生麩と白玉粉(?)を丁寧に練り上げた、手で触れると、くっつきそうな、羽二重餅のようなもっちり感。なめらかな上質の舌触りをしばし楽しむ。

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中のあんこはこしあんではなく、粒あんだった。

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とろりとした、皮まで柔らかいつややかな粒あんで、甘さを抑えた味わいは本物の和菓子職人の気配を感じさせるに十分だと思う。あ・り・が・た・い。ワンランク上の冷たい美味。暑い脳内に一瞬の涼風。

 

4年ほど前、裏千家の千玄室さんが京都のミニ講演で「ありがたい、の本当の意味は漢字で書くとよくわかる。有難い、なんですよ。あること自体が難い、ことなんです」と話していたことを思い出した。深い一滴だと思う。

 

小豆は北海道産、砂糖は「グラニュー糖です」(4代目)。塩は使っていないようだ。

 

関東のローカルで、地道にこういうすぐれた、いい仕事を続けている店と出会うのはあんこ旅みょうりに尽きる。

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饅頭は「かりんとまん」(120円)、「柚子饅頭(ゆずまんじゅう)」(100円)、みそ風味の「長寿まんじゅう」(110円)、「黒糖饅頭」(100円)。それにつぶあん大福」(100円)。

 

いずれも小ぶりで、柚子饅頭(粒あん)と長寿まんじゅう(こしあん)の皮には「つくね芋を加えているんですよ。いちいち表記していませんけど」とさり気ない。つまり薯蕷饅頭(上用饅頭)の要素も忍ばせている。

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粒あんこしあんも上質で、雑味がない。塩気がわからないほどほんのり。この舌代が信じられない。

 

「かりんとまん」はかりんとう饅頭がブームになる以前、12年ほど前から作っているという。「テレビが取材に来て、ブームの火付け役になった」とこちらもさり気なく話す。黒糖は表記していないが波照間産。

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揚げ立てが一番美味い、とおっしゃるので、早めに食べたら、確かに皮のカリカリサクサク感がすごい。中のきれいなこしあんとよく合っている。

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素材選びから作り方まで、隠したがる店が多い中で、聞くとすぐに答えてくれる。

 

東京の老舗和菓子屋で修業後に、この地で4代目を継いでいる。奥さんと二人三脚で毎日朝早くから地道に上質の和菓子を作り続けている。伝統をしっかり押さえながら、新しい試みにもチャレンジし続けているのもすごいことだと思う。

 

「もう40年になります。疲れました(笑)」とざっくばらんに話すが、娘さんが5代目修業中で、コロナが追い打ちをかけるように、いい和菓子屋さんが苦しんでいる中で、これは一筋の明るい光だと思う。

 

「5代目」と言葉にした瞬間、白い歯がこぼれた。

 

所在地 茨城・坂東市辺田1521

最寄駅 東武アーバンクライン愛宕駅から茨城急行バス

 

 

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