緊急事態が延長されたので、今回はたい焼きよりも今川焼、と渋~く行ってみたい。
今年の前半戦で、へえーと印象に残ったのが、あまりに対照的なこの二品。
上の写真が千葉・銚子で食べた「さのや」の、野暮ったい、見ようによっては牢名主のような今川焼。チラ見しただけでひれ伏したくなる、そんな気がしませんか?
下の写真が東京・西新井大師「甘味 かどや」のきれいな今川焼。下町の小粋な、湯上り美女のような、そんな形容を付けたくなってしまった。
どちらも歴史のある今川焼で、皮もあんこも同じ今川焼とは思えないほど対照的。コアなファンが多いことが共通している。
まずは「さのや」の今川焼を賞味してみよう。
黒あんと白あんの2種類(それぞれ税込み150円=テイクアウト)あり、店内で食べると3円高くなる。
2個くっ付けたくらいの武骨な高さと焦げ目のムラ。まだら模様。
驚きのごつごつした外観だが、油感のある皮の野暮ったさもただ事ではない。
うどん粉をストレートに感じる、オーバーに言うと、むにゅっとした歯ごたえ。
黒あんのあんこ(つぶあん)は甘めで、どろりとしていて、いい意味で洗練とはほど遠い。塩気も効いていて、銚子沖の漁師が「うめえ」と言いながら、頬張るイメージが浮かぶ。
あんこのボリュームもかなりのもの。
白あんはインゲン豆で、こちらもあまりに素朴な、洗練を超えた味わい。甘さは控えめ。みりんの隠し味も感じる。
個人的な感想では絶品というより、絶無といいたくなる今川焼だと思う。ハマるとクセになる予感が詰まっている、別の表現をすると、深海魚のような今川焼。
「銚子名物 創業明治40年」と書かれた昭和な店構えも悪くない。
現在4代目。店主と女性2人、計3人で忙しく焼いている光景はこの店が人気店ということを改めて感じさせる。
もう一品。西新井大師参道にある「かどや」の今川焼は対極的で、きれいなきつね色の正統派今川焼で、それも下町の洗練を感じさせる。
ペンキ塗りの、本物の昭和レトロの建物が絵になる。「ALWAYS 三丁目の夕日」の世界。「今川焼」のノボリ。
軽食堂がメーンだが、今川焼目当てのファンも多い。私もその一人。
一個が120円(税込み)。
ふわりとしたピュアな皮。中の粒あんは「北海道産100%」を強調しているだけのことはある。砂糖は多分白ザラメ。これが格別な味わい。
いい小豆の、吹き上がるような風味が素晴らしい。ありそうでなかなかない、絶妙なあんこだと思う。なめらかさと塩気のほんのり感。雑味のないきれいな余韻がしばらく舌に残る。
コロナが気になって、電話すると、「今川焼はGWで終わりました。夏はかき氷に切り替わりますが、今年はこういう状況なので、どうなるか。いずれにせよ緊急事態宣言が明けてから、になると思います」と困惑の声が返ってきた。
「かどや」の創業は大正11年(1922年)ごろ。現在4代目女将、5代目も板場に立っている。
元々は飾り屋(花屋さん)で、甘味軽食を始めたのは戦後の昭和30年(1955年)から。今川焼はその当時からのもの。
こういういい店も困らせるコロナめ。西新井大師の開祖・弘法大師の神秘パワーで退散させる日も近い、今に見ておれ、と思いたい。
〈所在地〉
「さのや」千葉・銚子市飯沼町6-7 最寄駅=銚子電鉄観音駅から歩約7~8分
「かどや」東京・足立区西新井1-7-12 最寄駅=東武大師線大師前駅から歩約3分