週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

不思議系「あんみつドーナツ」

 

忘年会の帰り、不思議なドーナツパンに出会った。

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大正7年創業、東京・池袋界隈では知らない人はいない? 「タカセ池袋本店」でのこと。

 

1階がベーカリーと洋菓子で、2階は喫茶店、3階はレストラン、9階がラウンジというどこか懐かしいレトロなタカセビルの前を通ったとき、自家製あん使用「あんパン」の文字が目に入った。

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以前、パン好きイラストレーターの友人が、ここのあんパンが「懐かしくて、涙が出るほど美味い」と言ってたことを思い出した。うつ病気味の、40過ぎても独身の、針金のように痩せた男だった。個性的なイラストが面白かったので、何度か一緒に仕事をしたが、最後まで心を開くまでにはいかなかった。

 

時間がクロスする。

 

ついつい惹かれるようにパンコーナーに行くと、「北海道産小豆使用、自家製あん」の表記とともに、あんこを使った美味そうなパンが5~6種類、私に向けて甘いレーザービームを送ってきた。

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どれにしようか迷った末、人気ナンバー1という「あんぱん(こし)」(税込み150円)、「うぐいすあんパン」(同 160円)をまず選んだ。

 

そして、視線はまさかのバリエーションあんパン「あんみつドーナツ」(同150円)で止まったまま。

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細長いコッペを油で揚げたようなドーナツパンで、真ん中の切れ目にたっぷりの粒あん! ピンクとグリーンの求肥餅(ぎゅうひもち)が二つ、いい具合に配置されていた。

 

こんなのあり? 「あんみつドーナツ」というネーミングがクスッと笑える。

 

翌日朝、二日酔いの頭で、賞味してみた。

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半日以上経っていたので、少し味が落ちているかもしれないが、予想以上にイケた。

 

揚げ油が生地の表面に滲みてていて、まぶされた砂糖とともに懐かしい、どこか素朴な昭和な味わい。

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何よりも中のつぶしあんが濃厚で、かなり甘い。北海道産小豆の風味も立ち上がってくる。砂糖は多分上白糖。テカリから見て水飴も加えているかもしれない。自家製あんこの表記がダテではないことがわかった。

 

パン屋さんであんこまで自家製というのは珍しい(ほとんどは製餡所のもの)。

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柔らかな求肥餅がいいアクセントになっていると思う。

 

ミスマッチぎりぎり。

 

ひょっとして、これはあんパン界のゆりやんレトリィバァではないか?

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全体的にかなり濃い甘さなので、苦手な人にはダメかもしれないが、好きな人にはたまらない、クセになる味わいだと思う。

 

このあんみつドーナツ、いつごろから並んでいるのか気になって、電話したら、「昔から出てますよ」とか。ひょっとして、昭和モダンの流れの中で誕生した珍品かもしれない。不思議系は不思議のままそっとしておいた方がいい、と思い直す。

 

次に「あんパン(こし)」。表面にはケシの実がたっぷりかかり、パン生地といい、中のこしあんといい、どこか懐かしい、昭和のよきパン屋さんのあんパンだと思う。

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こしあんは塩気が効いていて、しっとりと舌になじむきれいなあんこ。つぶあんの濃厚とは別の味わいで、焼き立てを食べたら、もっと美味かったに違いない。

 

ちょっと感動したのは「うぐいすあんパン」で、グローブ型のパン生地が半日以上経ても、伸びやかで柔らかい。表面に黒ゴマ、卵黄のテカリ。こしあんのパン生地よりも気に入った。

 

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うぐいすあん(北海道産青えんどう豆使用)が多めに練り込まれていて、青えんどう豆の風味が口中で吹き上がる感覚は上質。こちらも自家製。ほどよい甘さと塩気がとてもいい。

 

素朴だが一品一品考えられた職人の気配もあり、この店が今も常連客に愛され続けているのがわかる気がする。

 

ちなみにあの尾崎豊もここのファンだった。だが、残念ながらあんパンではなくケーキ類をよく買っていたらしい。

 

所在地 東京・豊島区東池袋1-1-4タカセエントラルビル1F

最寄駅 池袋駅東口から歩約1分

 

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