いちご大福の登場以来、新しいフルーツ大福が次々と誕生しているが、これはちょっと珍しいフルーツ大福だと思う。
超レアと言ってもいいんじゃないかな。
それがこれ。
いちじくを丸ごと一個使った「生いちじく大福」である。
どないでっか、このド迫力。フルーツ大福の王様、とついひれ伏したくなる。
「埼玉にすごい大福があるよ」
あんこネットワークからの情報で、足を運んでみた。その結果の甘い出会い。
作っているのは創業が昭和22年(1947年)の「いちじく菓庵 美よ志(みよし)」。武家最中やいちじくケーキなどでも知られる和菓子屋さん。
きれいに包装されて、一個280円(税込み)なり。上生菓子も並んでいる。
自宅に持ち帰って、賞味となった。
淡緑色の紙包みを取ると、直径6センチほどの大きな球形の大福が現れた。
餅粉がたっぷりかかっていた。
手に持つとズシリと重い。
熱いお茶を入れ、気持ちを落ち着けてから、包丁で切ってみた。
柔らかな求肥餅に包まれた、見事ないちじくが現れた。
生々しいほど、熟れたいちじく。
求肥餅は膜のように薄く、その下には白あんが4~5ミリほど。熟したいちじくを二重に包み込んでいた。
木のフォークで口に運ぶと、あまりに柔らかな求肥と白あんのきれいな風味が、主役の生いちじくを見事に引き立てていた。
いちじくは好き嫌いのある果物だが、この甘い、クセのある熟成感は、好きな人にはたまらないと思う。
白あんは北海道産手亡豆で、甘さの奥にほんのり塩気もある。
絶妙な味わい。絶妙な三角関係。
キュートないちご大福とはひと味違う、大人のビターな甘さ。
舌の上から頭頂部に向かって、ぼわぼわと穏やかに広がっていく。
そのぽわぼわ感覚はちょっと得難い、と思う。
このレアなフルーツ大福を考案したのは3代目。現当主2代目の跡継ぎで、東京・自由が丘の老舗和菓子屋で修業後に店に入り、新しい和菓子作りにも挑戦、約6年前に試行錯誤しながら作り上げたのがこの生いちじく大福だった。
店のある騎西町は、いちじくの産地としても知られ、その地産を生かしたもの。
フルーツ大福は増えているが、いちじくを丸ごと使ったレアものは、日本全国広しといえども多分ここしかない(あったらごめんなさい)。
口コミなどで少しずつ広がり、2~3年ほど前から爆発的に売れ始めたそう。
いちじくの季節は夏から秋まで。
「そろそろ今年はお終いです。今、全国から冷凍でいいから送ってほしい、という依頼が多くなってるんですよ。冷凍すれば持ちますからね」(2代目)
いちじくのルーツはアラビア半島で、不老長寿の果物としても知られる。
花言葉は「実りある恋」とか「子宝」など。
その縁起のいい果物を丸ごと一個、大福にしてしまうとは、3代目の目の付けどころもかなりレアだと思う。
所在地 埼玉・加須市根古屋645-2