団子(だんご)を食べに暖簾をくぐったつもりが、意外な生菓子に出会ってしまった。
こういうことが起きるから「あんこ行脚」はやめられない。ゲット、ラッキーの極みかな。
みずみずしい笹に包まれた、こしあん入り笹もち。1個税込み130円なり。
それがこれ。
城下町・会津若松でのこと。
歴史のあるセピア色の街並み、七日町通りにある「菓子司 熊野屋」。地元では7種類の団子が有名だが、生どら焼きや上生菓子もショーケースに並んでいる。笹団子まである。
一見不思議な店だが、創業が明治20年(1688年)の老舗和菓子屋さん。4代目がアイデアマンで、伝統と新しさをうまくミックスさせている。
草団子、ずんだ団子、ごま団子(いずれも税込み100円)と買い進め、もう一品何にしようかな、しばし迷ったら、ふと見ると、すぐ横で「笹もち」が小さくオーラを放っていた。
おおお。まるでかぐや姫だよ。ホントにそう見えた。
賞味期限が「本日中」なので、店の隅で食べさせてもらうことにした。
会津流のおもてなし。お茶まで出してくれた。
団子はひと串3個で、会津産コシヒカリを炊いてから丁寧につぶしたもの。米粉ではなく、きちんと炊いているのがここの特徴でもある。
草団子、ずんだ団子、ごま団子の順で食べ進む。
草団子はつぶしあんで、丁寧に包まれ、北海道産小豆の風味とよもぎの風味のバランスがいい。きれいな甘さ。砂糖はグラニュー糖を使用しているようだ。
ずんだ団子は「だだっ茶豆を使っています」(4代目)。ずんだあんはつぶつぶが残っていて、それが素朴ないい味わいを生んでいると思う。
ごま団子は表面は黒ごまだが、中が凝っていた。こしあんベースのごまあんが入っていて、つるりと柔らかい団子と中のごまあんが絶妙で、黒ごまの風味が口の中でどんどん広がる。これで100円が信じられない。
さて、本題の「笹もち」。まず笹の風味が鼻腔にスーッと入ってくる。そのまま目を閉じて3秒ほど息を止めていたくなる。
餅は若草色の道明寺で、口に入れた瞬間、柔らかな美味が笹の清冽な香りとともに押し寄せてきた。この感触はたまらない。
中のこしあんがしっとりと上質で、それがたっぷりと入っていて、道明寺餅との相性がとてもいい。あんこには水あめも加えているかもしれない。ほんのりと塩気が効いていて、これはもはや上生菓子のレベルだと思う。
笹の香りがこしあんと道明寺餅を1+1=3にしている感じ。
「これは夏から秋までの季節限定なんですよ。会津産小豆を使った薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)も茶席などでも人気があるんです。そちらもぜひ食べてみてください」
まさかのいい出会い。
店の中であんこに包まれて一泊したくなってしまった。
所在地 福島・会津若松市七日町5-17