週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

レあんこ!佐久山宿の3種饅頭

 

あんこ旅を続けていると、思わぬ逸品に出会うことがある。

 

ひょんなことで、旧奥州街道の宿場町としてにぎわった佐久山宿(さくやまじゅく=現大田原市)で暖簾を下げる「小島屋(こじまや)」の存在を知った。

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「ここの3種類の饅頭はすごいですよ。朝、早く行かないと売り切れちゃうんです。自家製餡がめちゃ美味い。不便な場所にあるので、たどり着くのが大変ですが、あんこ好きなら行く価値は十分にあります」

 

和菓子好きのマニアックな編集者が教えてくれた極秘情報。

 

確かに不便な、あまりに不便な場所にあった。

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で、二日がかりでたどり着いた末にようやくゲットした。

 

それがこれ。

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創業が安政2年(1855年)というのも驚きだが、6代目が毎日朝早くから作るつぶしあん、こしあん、きんとん3種類の饅頭がひと味違った。

 

初代・勘兵衛の名前を冠した「勘兵衛饅頭(かんべえまんじゅう)」(1個 税込み100円)。

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見かけは温泉まんじゅうだが、黒糖入りの皮は柔らかくて薄い。

 

その中にぎっしりと詰まった3種類のあんこが想像を超えていた。

 

昨日のこと。早めに用件を済ませて、午後2時過ぎに店にたどり着いたら、すっかり売り切れていた。どら焼き、栗入りどら焼き、大福などもきれいさっぱりなくなっていた。

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こんなことってあり? 残念を通り越して、怒りさえ湧いてきた(ありゃりゃ)。

 

こんなド田舎(失礼)で・・・早めに売り切れるとは聞いていたが、まさか2時過ぎになくなっているとは。

 

ご高齢の先代(5代目)女将さんが「すいません。早くから売り切れてしまって」と申し訳なさそうに雑談の相手をしてくれた。

 

混線気味の頭の中を整理して、翌朝、出直すことにした。

 

早朝8時。オープンと同時に滑り込む。

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店の隅に木のテーブルがあったので、そこで出来立ての勘兵衛饅頭をいただくことにした。

 

まずは定番のつぶしあん

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口に入れた瞬間、小豆のいい風味が渦を巻いた。最初のアタックはそんな感じ。

 

渋切りは一回だそうで、北海道十勝産小豆の、小豆本来の美味さが極限まで到達しているよう。塩気がほんのりあり、上白糖で仕上げたほどよい甘さが絶妙な余韻を残す。

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あんこのプロフェッショナルがここにいる。

 

あまりに柔らかく、ふくよかに炊かれたあんこ。

 

黒糖入りの皮がつぶしあんの美味さを邪魔しない。

 

続いて、こしあん。このこしあんも自家製。

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皮は黒糖の量を減らしているようで、やや色は薄め。

 

中のこしあんが、きめの細かい、これまた凄い風味を広げていく。

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さらに3個目。きんとん(白いんげん豆)のあんこ。

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ホメてばかりで申し訳ないが、これまた絶妙な美味さだった。

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きんとんの白餡と皮の食感がとてもいい。塩気の匙加減。

 

レアなあんこ、略してレあんこ!

 

3種類ともにかなりのレベル。

 

素材の風味をここまで広げるのは、饅頭界広しと言えども、私の中では数えるほどしかない。そのくらいの甘い衝撃だった。

 

作り立て、蒸かし立て、ということもあるかもしれないが、翌日にもう一度食べたが、あんこの美味さは変わらなかった(皮は少し固くなっていたが)。

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奥州街道沿いの古い一軒家の和菓子屋さん。

 

往時の賑わいはない。

 

6代目の話を聞くことができた。

 

「家に伝わっている話ですが、元々は京都の和菓子職人がたまたま我が家に長逗留して、そのお礼にと饅頭の作り方を教えてくれたそうです。あんこの炊き方も教えてもらい、それが安政2年に饅頭屋を始めるきっかけになったそうです」

 

京都の和菓子職人直伝の饅頭、ということになる。

 

塩気を加えたのはその後のようだ。

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あんこの美味さとある種の洗練。モンブラン大福や抹茶ロールなど、新しいチャレンジも怠らない。

 

ローカルの極みのような、まさかの場所で、かような和菓子屋さんに出会えるとは、これはやっぱりあんこの神様のおかげとしか言いようがない。

 

所在地 栃木・大田原市佐久山2024

最寄駅 JR宇都宮線野崎駅が比較的近いが、かなり不便。車で行くのがベスト。

 

 

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