城下町・会津若松で出会ったちょっと驚きの豆大福を書きたい。
滋賀近江出身の戦国武将・蒲生氏郷が造った街で、幕末は戊辰戦争最大の激戦地になった悲惨な歴史を持つ街である。
お寺が多く、戦国時代には豊臣秀吉も「奥州仕置き」で陣を張っている。
なので、いい和菓子屋も多い。
土曜日、その寺町を歩いているときに、出会ったのがこの豆大福である。
一目で「ほお~」が出かかった。
東京・青山の名店「まめ」の豆大福を連想させるお姿で、一個が大きめ。ゴロゴロ見える赤えんどう豆と柔らかそうな餅、それにたっぷりかかった餅粉が「本物」のオーラをまとっていた。
「土曜日限定」の豆大福、というのがこだわりを感じさせた。一個が120円(税込み)。うーん、ローカル値段。
もう一度、外から店を眺める。あまりに開放的な店構えで、ノボリと「庄助製菓(しょうすけせいか)」の看板が素朴。調べてみたら、創業が明治40年(1907年)で、今三代目とか。
限定豆大福はたぶん新しい試みだと思う。
賞味期限が「本日中です」と女将さんに言われ、すぐ固くなりそうだったので、ホテルに持ち帰って、ウキウキと食べてみた。
期待を上回る美味さで、餅は「会津産もち米を蒸して、朝、搗(つ)き立てなんですよ」(女将)がなるほどと思える柔らかさだった。求肥餅のような柔らかさ。
黒々とした大きな赤えんどう豆の多さは護国寺「群林堂」とそん色がない。
中のつぶあんのボリュームも好感。
北海道十勝産小豆と砂糖は上白糖。ふくよかに炊かれた手の香りのする上質のあんこで、口に入れた瞬間、なめらかな、みずみずしい小豆の風味が広がった。甘さは抑えめ。塩もほんのり効いている。
欠点を探したが、残念ながら見当たらない。土曜しか売っていないというのが欠点というくらい(ちょっとほめ過ぎかな)。
会津若松の和菓子屋はずいぶん食べたつもりだが、この豆大福は初めての出会い。
この驚きを会津の友人に話したら、「そんな豆大福は知らない。会津では豆大福なら『白虎堂』だよ。午前中に売り切れるくらいの人気だ。塩大福も美味いぞ」と笑われた。
翌日、早めに起きて、馬場町にあるその「白虎堂」に行ってみた。立派な店構えで、こちらの創業も明治41年(1907年)。
豆大福と塩大福を買い、賞味した。どちらも税込み100円という安さだが、姿がいい。コスパ的には素晴らしい。こちらも無添加で「本日中にお召し上がりください」。
餅の存在感が圧倒的で、あんこが「庄助製菓」より気持ち少なめ。豆大福は豆が赤えんどう豆ではなく青えんどう豆で、餅の噛み応えがかなりある。
塩大福の方が私の好みで、ふくよかな塩あんが面白い。埼玉の塩あんびんよりはあんこの甘さが心地いい。
だが、私は会津の友人には申し訳ないが、「庄助製菓」の限定豆大福に心をつかまれてしまった。もちろん、個人的な好みの問題かもしれない。
豆大福だけで見ると、白虎堂の方が長い歴史があると思うが、青山「まめ」や護国寺「群林堂」に近い「庄助製菓」の豆大福づくりもこのレベルまで来ると、うれしくなる。
観光シーズン以外は人通りの少ない街中で、新しい宝石のような豆大福に出えたこと。あんこの神様は確かにいる、と思う。
所在地 福島・会津若松市日新町16ー40