暑い日が続くと、小倉アイスと冷たいあんこが夢に出てくる。
小倉あんみつを食べたいなあ。
あずき氷もいいが、こちらは梅雨が明けてから、と決めている。
頭の中であの小倉あんみつがキラキラ回転し始める。
こうなると、止めようがない。
上野の森に行った帰り、「あんみつ みはし本店」に足が勝手に動いていた。
昭和23年(1948年)創業の、あんみつの名店である。
いつも混雑と行列で、アリ1匹すら入る隙がない。
だが、夕方が狙い目で、すんなり入れることもある。
ラッキーなことにそれが的中した。あんこの神様のおかげ?
この季節はあんみつより「小倉あんみつ」(税込み650円)に限る。
あんみつに小倉アイスがどっかと乗っている。
ダブルのあんこ愛。
小倉アイスは湯島の老舗甘味処「みつばち」が元祖で、私にとっては「みつばち」は我が家みたいなもの。
だが、あんみつとの組み合わせとなると、みはし本店も捨てがたい。
小倉アイスの美味さが「みつばち」に劣らない。
目の前に置かれた「小倉あんみつ」は中央に小倉アイスとこしあん。そのボリュームにちょっと圧倒される。
まるで器の中の東西横綱の土俵入りだよ。
まずはこしあん。形が珍しい角型に切ってあり、水ようかんのように見える。
スプーンですくってから、口に運ぶと、なめらかで、濃厚なあんこの風味がズズと来る。
甘さと塩気のバランスがいい。
オリジナルの黒蜜(沖縄産黒糖を使用)をかけると、こしあんの風味がさらに濃厚に、素朴に、粘膜にあまくささやきかけてくる。
人形町「初音」や門前仲町「いり江」の洗練された、きれいなこしあんも大好きだが、こちらはむしろ野暮ったいこしあんだと思う。
北海道十勝産小豆と上白糖の練り具合もよく計算されている。
小倉アイスは小豆をわざと固めに茹で、ほどよく散りばめ、その歯触りを楽しませたい。そんな気配が漂っている。
寒天、赤えんどう豆、求肥(ぎゅうひ)も手間暇かけているのがわかる味わい。
個人的にはサクランボがないのが少し残念かな。
だが、650円という舌代は老舗の甘味処の中ではコスパがいいと思う。
黙っていれば、こしあんが出てくるが、つぶあんに変えてもらうこともできる。
人気店なので細かいところまで行き届かないこともあるようだ。
たとえば黒蜜。門前仲町「いり江」のように、注文の際に「白蜜と黒蜜、どちらになさいますか?」と選択させることもない。黒蜜オンリー。
店のポリシーなので、そこは微妙な問題だが、あんこ好きにとってはその選択も楽しみたい。
とはいえ、「みはし本店」の価値が下がることはない。
所在地 東京・台東区上野4-9-7
最寄駅 JR上野駅不忍口下車 歩約3分