週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

山形の青い絶妙「ふうき豆」

 

山形は実は美味の宝庫でもある。

 

奥の細道」の旅の途中、松尾芭蕉も舌鼓を打ったに違いない。

 

この時期は街のあちらこちらにさくらんが出回り始めているが、和スイーツファンとして取り上げたいのが「富貴豆(ふうきまめ)」である。

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一般的に富貴豆というと、そら豆を甘く炊き上げた、つくだ煮屋で売ってる煮豆を想像するが、山形ではいささか違ってくる。

 

そら豆ではなく、青えんどう豆なのである。つまりはうぐいす豆。

 

しかも和菓子屋さんで売られている。

 

あんこ旅の途中、山形市内に足を運んで、情報収集を開始すると、5~6軒ある老舗の中で、「山田家」の名前が再三上がった。

 

「やっぱ山田家だべな。一日に作る量が限られてるので、早く行かねば売り切れるかもしれねぞ」

 

何人かが同じことを言った。

 

その富貴豆、山田家では「白露ふうき豆」がこれ。

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昭和6年(1931年)創業当時から、作り方を変えていないという。

 

大粒の青えんどう豆の皮を一つ一つ丁寧に剥き、大釜でじっくりと炊き上げる。

 

味付けは上白糖と塩のみ。

 

シンプルな分だけ、微妙な塩梅(調整)が必要になるという。

 

職人の腕が決め手になる。

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生菓子と同じ扱いで、「賞味期限は3日間なんです。なので早めにどうぞ」(女性スタッフ)。

 

一番小さい箱入り、280グラム600円(税込み)買い求め、ぎりぎり2日後に自宅に帰ってからすぐに賞味してみた。

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有機コーヒーを淹れ(コーヒーが合いそうなので)、きれいな紙箱をあけると、中からぎっしりと詰まった「白露ふうき豆」が現れた。

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自然な、あまりに自然なうぐいす色の世界。そのふっくら感が見て取れた。

 

確かに一粒一粒きれいに皮が剥かれていて、ほろほろと崩れ落ちそうな、甘い気配が漂っている。

 

木匙で口中へ。

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食感も見た目通りで、口の中でのほろほろ感が絶妙だと思う。

 

控えめな甘さと奥にほんのりと塩気。青えんどう豆のいい風味がふわふわと口中に広がり、しばらくの間、余韻となって残る。

 

妙な表現だが、帯を解いた美熟女と出会ったような。ま、夢の世界だが。

 

素朴と洗練の融合だと思う。

 

青えんどう豆は北海道美瑛町(びえいちょう)産を使用、ここは小豆(しゅまり小豆)の産地としても注目の地で、十勝とはひと味違う豆づくりを行っている。

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そのこだわりの青えんどう豆ゆえか、炊き上げる際に下手をすると煮崩れしてしまう。

 

ふっくら感と煮崩れのぎりぎりの闘い

 

店によると、「その炊き方の加減がとっても難しいんですよ」とか。

 

現在は3代目。あまりにシンプルゆえに、山田家の富貴豆は、その奥に潜んでいる職人の汗と技を見逃しかねない。

 

「毎日作る量が決まっているので、お昼前に売り切れてしまうこともあります」

 

店を訪ねた際に、売り子のスタッフが控えめに付け加えた。

 

所在地 山形市本町1-7-30

最寄駅 JR山形駅から歩約20~30分。バスだと本町下車すぐ

 

 

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