桜前線が北上中だが、関東の桜の名所の一つが権現堂(埼玉・幸手市)。
「翔んで埼玉」も好きだが、あんこ好きとしては権現堂の「さくら饅頭」に着地したい。
埼玉最強伝説の一つに加えたい。
GACKTも二階堂ふみもこれを食べたら、埼玉観がピンク色に変わるかも。
前置きが長くなってしまった。
まずは見て感じていただきたい。
製餡所も営んでいる「和菓子の早稲田屋」が作る、個人的には奇跡の絶妙饅頭である。
毎年これを食べたいがために、幸手まで足を運ぶ。
満開の桜の下、今年も出店していた。
桜よりもさくら饅頭。
1個120円(税込み)をバラで5個買い求め、自宅に持ち帰ってから、備前の皿に載せて、賞味する。
包みを解いた瞬間、何とも言えない桜の香りが室内に広がる。
胸と舌のときめき。
淡雪のような薄い皮がぎっしり詰まった桜あんを包み込んでいる。手のひらに重さが伝わってくる。頂点に塩漬けしたきれいな桜の花びらがチョコンと乗っている。
敬意を表して、「日本橋さるや」の黒文字でいただく。
細かく刻んだ桜の葉と食紅を加え、大手亡豆(白いんげん)を練り上げた、きれいな桜あん。
この数年来、この美味さにハマっている。
大手亡豆の風味と桜の葉、それに塩気がたまらない。
砂糖は白ザラメを使用。
皮には米粉を加え、そのしっとりとした食感が主役の桜あんを引き立てている。
二代目のあんこ作りにかける情熱はちょっと脱帽もの。
本業は業務用製餡で、和菓子作りは副業かもしれない。
工場のような製餡所の入り口に和菓子コーナーがある。老舗の和菓子屋をイメージすると、期待が外れるかもしれない。足を踏み入れると、お世辞にもきれいとは言えない。商売上手とは無縁な匂い。
だが、あんこ職人としての技術はかなり高いレベル。あえて言うと、あんこの研究者にも見える。謎の立ち位置。
「さくら饅頭」はその結晶の一つ。試行錯誤しながら、「ここまでたどり着くのに長い年月をかけたんですよ」と笑いながら話してくれたが、これまでの蓄積とノウハウを惜しげもなく動画で公開している。何が彼をそうさせているのか、実のところ分からない。
異色のあんこ職人とも言える。
悲しいかな、この早稲田屋を知っている人は少ない。
先日、たまたま見たNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、さすらいのあんこ職人を取り上げていた。
お金も名誉も店もいらない。どん詰まりに陥った和菓子屋を救いたい、その一心で車を走らせる。目からうろこのあんこ作り。あんこの伝道師とも言える。元々は宮内庁御用達店の和菓子職人だったことも明かされる。
世の中にはこういう人もいる。
世間的には無名かもしれないが、本物は確かに隠れている。
所在地 埼玉・幸手市中2-11-27