週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

美濃焼の街の「絶品饅頭」

 

まんじゅうの中でも、皮に山芋を加えた薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)は茶会などにも使われる上用饅頭だが、あんこ旅の途中で出会った見事な一品を書かなければならない。

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などとカッコつけたが、本当は書くのを忘れていた。去年の秋のこと。あちこち食べ歩きすぎて、頭も体も整理がつかなくなった時期でもある。

 

書かねば、書かねば、と思いつつ川底の宝石のように沈んだまま。ということもある。

 

それが美濃焼きでも知られる岐阜・多治見市の菓子処「梅園(うめぞの)菓子舗本店」である。

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大正5年(1916年)創業の小さな老舗で、現在は4代目上生菓子の質が高く、京都の名店と引けを取らないレベルだと思う。

 

「岩清水」の美しさにも目が吸い込まれたが、一見地味な「白上用饅頭」(税込み 160円)の絹のようなテカリに胸が高鳴った。

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店内に食べる場所がないので、近くの喫茶店でママさんの許可を得てから、賞味となった。抹茶はなかったのでブレンドコーヒーがお供。

 

小ぶりの薯蕷饅頭で、店にいた女将さんによると、「皮に使っているのは伊勢芋です。ふつうは大和芋を使うことが多いと思いますが、うちは伊勢芋を使っているんですよ。江戸時代から伊勢地方にある山芋です。手間ひまかけて米粉と混ぜて蒸して仕上げてるんですよ」とか。

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白さとコクと粘り気が強く、そのためだろう、外見が絹のようでもあり、パールのようでもある。気品のあるテカリ。

 

最初のアタックでムチッとしたもっちり感に軽く驚く。香りを吸い込みたくなる。

 

続いて、中のこしあん。手漉しのきれいな風味。みずみずしいあんこ。塩気はない。甘さも甘すぎず。北海道十勝産小豆を使っているようだ。

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隅々まで手抜きがない。あんこづくりのこだわりが見て取れる。銅鍋で皮が破れないように3日間ほどかけてじっくりと炊き上げているそう。砂糖は聞き忘れたが、多分グラニュー糖ではないか。

 

4代目は新しいチャレンジもしていて、「栗バター入りどら焼き」(同 150円)が売れ筋になっている。コスパ的にも素晴らしい、と思う。

 

全体から京都が源流の和菓子職人の本物の気品を感じる。

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人口11万人弱の町だが、美濃焼の本場。あの茶人武将古田織部のルーツでもある。

 

記憶の川底に沈んでいた宝石を、こうしてようやく書くことができて、なぜかホッとしている。

 

所在地 岐阜・多治見市新町1-2-6

最寄駅 JR中央本線多治見駅下車 歩約15分

 

 

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