週刊あんこ

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「おまん」のミラクル、玉英堂「玉饅」

 

京都で「おまんやさん」と言えば、饅頭(まんじゅう)などを売っている町の和菓子屋さんのこと。愛すべき下々の世界。上菓子屋とは一線を画している。

 

私が大好きな世界だが、この饅頭にもヒエラルキー(階級)がある。その最高峰(エベレスト級?)に位置する饅頭をとうとう買ってしまった。今回はおまんやさんではなく、上生菓子屋の饅頭、である。ま、たまにはいいかという気分。

 

見た目は大きな白い饅頭だが、二つに切ると、ちょっと驚かされる。

 

それがこれ。

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東京・人形町「玉英堂彦九郎(ぎょくえいどうひこくろう)」の「玉饅(ぎょくまん)」である。五色饅頭、と言ったほうがわかりやすいかもしれない。

 

1個がなんと680円(税込み)。値段もたけ~。

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なので、これを買うには財布と相談する必要がある。ここは創業がなんと(今日はなんと、が多い)天正4年(1576年)、京都三条大橋のたもとで店を始めたという。織田信長安土城を築城した年でもある。店主は24代目。二度びっくら。

 

「とらやき(虎家喜)」が有名だが、古くからの主役はこちら。現在の日本橋人形町に移転したのはつい最近で、昭和29年(1954年)。つい最近、と言いたくなる(笑うしかない)。

 

虎屋など上菓子屋が作る薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう=皮に山芋やつくね芋を練りこんだ饅頭)で、塩瀬饅頭などとともに、この「玉饅」はその最高峰に位置すると思う。あんこ好きにとっては一度は食べてみたい夢の饅頭・・・。

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何はともあれ、賞味することにしよう。だが、慌ててはならない。まずは五色の優美な世界を目で楽しむ。フツーの饅頭の3倍くらいの大きさ。

 

真ん中に蜜煮した栗、それを囲むようにつぶしあん、さくらあん、淡いうぐいす色の白あんが層になっていて、そして絹のようなつややかな皮が全体を包んでいる。

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3色のあんこがあまりに上品で、それぞれに淡い香りが秘められている。

 

あっさりとした、きれいな甘さで、私が好きな野暮ったい庶民的なあんことは食感がまるで違う。さらさらと口溶けのいい、貴種のあんこ。

 

上質のかるかんのような皮が秀逸。栗も柔らかくて、3色のあんことともに口中に運ぶと、絶妙な弦楽器五重奏のような味わい。うまく表現できない。

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胃にたまらないのが不思議で、ずしりと重いのに味わいは軽やか。きれいな余韻。

 

北海道産白小豆と大納言小豆を使用しているようだ。砂糖は和三盆かグラニュー糖だと思う。淡いきれいな色はクチナシで着色している?

 

作り方は一子相伝で、秘伝中の秘伝となっている。24代目当主がこの超老舗の歴史を守っている。なので想像するしかない。

 

かような上用饅頭を食べると、しばらくは下界に戻れなくなるかもしれないな。

 

十二単(じゅうにひとえ)の世界が頭の中をくるくる回っている。

 

冗談じゃないよ~。

 

所在地 東京・中央区日本橋人形町2-3-2

最寄駅 東京メトロ人形町駅、水天宮駅 歩約3~4分

 

 

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