週刊あんこ

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京都の粋「しぐれ傘」

 

京都の畏友が持ってきてくれた手土産は面白いものだった。

 

メディア仲間の懇親会でのこと。

 

いつものように「はい、これ」ポンと手渡すだけ。説明はない。

 

これが曲者で、京都のすごさと奥の深さを感じさせるものばかり。

 

家に持ち帰ってから、きれいな包みを開けると、現れたのがこれだった。

 

で、でっかい(汗)。直径120ミリ、厚さ30ミリは優にある。どっしりと重量感のあるデカさ。

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これが、かの京華堂利保(きょうかどうとしやす)の「しぐれ傘」だった。

 

円盤状のどら焼きのようなカステラ生地の間に煉り羊羹が挟んであった。8人分で税込み1512円。買うには本店まで行くしかない、という希少な和菓子でもある。

 

見事なテカリの羊羹。カステラ生地はふわふわではなく、しっかりと焼かれている。

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表面には番傘の線が薄く引いてあり、数えてみたら12本分。つまり傘が12本分で、上から見ると、傘が開いている形に見える。黒文字が8本、別に包んであった。

 

このさり気ない凝り方が京都、だと思う。「わからんお人はわからんでよろしゅうおます」とつぶやいているよう。いけず、と紙一重。どこかに遊び心もある。

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下から黒文字を刺すと、傘になる。

 

目線を変えると、シベリアのようでもある。

 

羊羹はかなり甘めで、きめが細かい。小豆と寒天の煉りがなめらかで、そのねっとり感が素朴なカステラ生地とよく合う。小豆の風味を殺していない。

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京華堂利保は創業が明治36年(1903年)。現在4代目。武者小路千家御用達の菓子司で、京都では老舗とは言えないが、暖簾をあまり広げないポリシーはさすが、だと思う。

 

薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)に定評があるが、このユニークな「しぐれ傘」は2代目が考案したらしい。

 

与謝蕪村の句「化けそうな傘かす寺のしぐれかな」からヒントを得たとか。

 

どら焼きとシベリアを凝縮したような、密度の濃いあんこ菓子だと思う。洗練とは少し違う。野暮と紙一重

 

あんこのお化けも悪くはないかもなァ。

 

何よりもそのユーモアに脱帽したくなる。

 

所在地 京都市左京区二条通川端東入ル難波町226

最寄駅 神宮丸太町駅から歩約5分

 

 

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