粟饅頭、ひらがなで書くとあわまんじゅう。
これがほっぺたが落ちるほどうめ~、と知っている人はまだ少ないと思う。
粟(あわ)をもち米と混ぜて皮を作り、手作業でこしあんを包み込む。それを蒸し籠で蒸したものだが、この美味さは私にとっては格別である。
クチナシできれいな黄色に着色しているので、一見美味そうには見えないかもしれない。
だが、手にくっつくほどのモチモチ感と粟(あわ)の粒つぶ感、その中にしっかり収まったこしあんの融合・・・文字通り筆舌に尽くしがたい。
福島・会津地方、柳津町(やないづまち)に伝わるまんじゅうで、江戸後期からこの地方にしか存在ないユニークな饅頭である。
会津若松市内にも店舗がある小池菓子舗が最も有名だが、私の好みは「はせ川屋」のもの。昔ながらの丁寧できれいな作り方が好み。
無添加なので日持ちしない。作りたては柳津町まで行かないと食べれない。それが残念。
東北に行った帰り、足を延ばすことにした。
蒸し籠の水蒸気が空に向かって立ち昇る古い店構え。昭和の匂い。
一個108円(税込み)。さらにもう一品「栗(くり)まんじゅう」(一個 同183円)を店先で味わうことにした。お茶をサービスしてくれた。
蒸かし立てなので実に柔らかい。
こしあんは雑味がない、甘さを抑えたきれいなもの。ほんのり塩気もある。
それが粒つぶ感のある粟(あわ)餅と絶妙に合う。そう表現するしかない。粟の風味。
作りたては手にくっつき過ぎるのが難点だが、美味さが七難隠す、ということもある。
もう一品、栗(くり)まんじゅうの方が好きというファンも多い。
栗が一個丸ごと入った茶まんじゅうで、粟(あわ)まんじゅうより一回りデカい。手に持つとズシリと重い。
こしあんは同じもの。こちらのレベルの高さも強調し過ぎることはないと思う。
二代目に先立たれてから女将さん(三代目になる)が毎日一人で板場に立って手づくりしている。手伝いは他に一人しかいない。ファンが多いので、あんこ作りも毎日欠かさない。
店の創業は昭和初期。町内に4軒ある粟まんじゅう屋さんの中では比較的歴史は浅い。
「小豆は北海道産だけんじょ、餅も粟(あわ)も地元のものを使ってる」
妙な愛想がないところが、饅頭職人としてのプライドを裏打ちしていると思う。
約1200年の歴史を持つ古刹「圓蔵寺(えんぞうじ)」の門前近くに店を構える。
江戸時代、文政年間に火事があり、災害が続いたことで、当時の喝厳和尚が「これ以上災難にアワないように」という願いを込めて、門前の饅頭屋に「あわまんじゅう」を作らせた、という起源をもつ。
ダジャレみたいな起源だが、まんじゅうの美味さはもし「饅頭オリンピック」があったらノミネートしたくなるほど。きっとメダルが取れると思う。
ちなみにこの約8時間後、粟(あわ)まんじゅうを一箱(6個入り)を自宅に持ち帰って、その夜食べたら、もちもちの皮とこしあんがさらに馴染んでいて、美味さが進んでいた気がした。