たい焼きもいいが、春は今川焼きを無性に食べたくなる。
今ではたい焼きの方がメジャーだが、ルーツは今川焼き。
江戸時代中期にはすでに江戸っ子の間では人気のスイーツだった。おきゃんも梅干し婆さん(死語?)も老若男女問わずファンが多かったようだ。
たい焼きは明治42年(1909年)麻布にある浪花家総本店が売り出したにすぎない(別の説もある)。
時間軸では今川焼き、である。
今川焼きという名称は地域によってバラバラで、回転焼き(主に関西・九州地区)、大判焼き(全国)と呼ぶ地域もある。甘太郎、じまん焼き、太郎焼きなどと固有名詞を付けている地区もある。
首都圏の桜の名所「権現堂」がある埼玉・幸手市の名物が「太郎焼 かざりや」の今川焼き。ここでは今川焼きとは言わず、太郎焼きと呼ばれている。
埼玉・川口市や越谷市、会津若松市にも「太郎焼き」がある。同系列かどうか、今のところ謎である。
この「かざりや」の太郎焼きが形といい、焼き色といい、中のつぶしあんといい、今川焼き界の親分レベルなのである。
測ってみたら直径は約63ミリ、厚さは35ミリほど。
大きくて分厚い。手に持つとズシリと重い。
1個100円(税込み)なり。
皮のもっちり感、焼き加減がとてもいい。小麦粉と卵を使い、膨らし粉も加えていると思う。
中のつぶあんは塩気が強めだが、甘さとのバランスが秀逸。北海道産小豆の素朴な風味が立ち上がってくる。ゆるめのあんこの美味さと量。
わざわざ「北海道産小豆100%使用」と表記している。言外に
「中国産は1%も使っていませんよ」
と言ってるようなもの。店主のプライドを感じる。
創業は昭和49年(1974年)。
東京・町屋の「博多屋」(昭和27年創業)が東の横綱だとしたら、大関クラスに位置する今川焼きだと思う。
これだけの見事な今川焼きが北関東のローカルに存在していることがうれしくなる。権現堂の桜を見たついでに、市の中心部、旧日光街道に足を延ばしてみてはいかがだろう。
「売り切れ次第終了」
なので、午後2時前になくなることも多い。私も何度か空振りさせられている。ここだけは要注意。
所在地 埼玉・幸手市中3丁目2-8