今回は特別編。さつまいもの逸品「大学いも」を取り上げたい。こじつけると、大学いももあんこの親類みたいなものだと思う(こじつけすぎかも)。
その大学いも。もし番付があったなら、東の横綱格と言えるのが東京・浅草の「千葉屋」。大方の大学いもファンなら納得してくれるのではないか。
浅草には有名な「おいもやさん 興伸」があるが、こちらは支店も多い。「舟和のいもようかん」も全国展開している。
だが、「千葉屋」は暖簾を広げず、言問通りの一店舗だけ。職人ワザが徹底している。
昭和25年(1950年)創業で、品書きには「大学いも」「切揚(きりあげ)」しかない。
いつ行っても行列が絶えない。「切揚」も美味いが、個人的にはやはり「大学いも」に限る。
400グラム740円(税込み)。創業当時からのスタイルを貫き、目の前の板場でさつまいもを揚げ、自家製の蜜でくるんでいく。さらに黒ごまを振りかける。見てるだけで楽しい。
これが驚くほど美味い。
今の時期は鹿児島産「紅さつま」を使っているが、使うさつまいもは季節によって変わる。
黄金色の蜜が滲み込んだ「大学いも」は、かじった瞬間、濃厚な甘みと絶妙な塩気が口の中に広がる。かすかに醤油の隠し味。添加物などは一切使っていない。
一度味わうと病み付きになる。故にリピーターも多い。
輪切りにした金色の大学いもの存在感。蜜のしたたり。
浅草っ子がここの大学いもをこよなく愛しているのがわかる。千葉屋という店名は創業当時、さつまいもの産地が千葉だったことによる。
「やっぱ大学いもは千葉屋だよ」
下町浅草で何度この言葉を聞いたことか。
所在地 東京・台東区浅草3-9-10
最寄駅 東京メトロ浅草駅