たい焼きもいいけど、今川焼きと叫びたい。
「御座候」や「博多屋」(東京・町屋)を食べると、その安さとあんこの美味さに涙が三滴ほど出てしまう(大げさだよ)。
東京・根津と言えば「根津のたい焼き」があまりにも有名だが、もっと古くから暖簾を下げているのが「甘味処 芋甚(いもじん)」である。
ここの「昭和焼き」が今川焼き、なのである。隠れたお宝だと思う。
創業が大正3年(1914年)で、当初は焼き芋屋だった。関東大震災後にアイスクリーム屋になり、昭和になってから今川焼きも出し始めた。
今では小ぎれいな甘味処として、しっかりと暖簾を守っている。入り口で今も四代目店主が「昭和焼き」を一個一個ていねいに焼いている。
中に入って、「小倉みつまめ」(税込み 480円)を食べる。自家製の小倉アイスがさっぱりとした日本のアイスクリームで、黒蜜がたっぷりとかかった寒天や赤えんどう豆、求肥、フルーツも質が高い。何よりも安いのが下町の心意気を感じる。
あんこが少し物足りなかったので、「昭和焼き」(同120円)も追加した。一見小ぶりだが、厚みが2個分ほどある。珍しい二階建て。
皮の表面が見事なきつね色で、表面のパリパリ感がすごい。中はもっちり。
つぶしあんは塩気が効いた、ねっとりとした食感。ほどよい甘さ。北海道産小豆の風味も悪くない。むろん自家製。
心意気と暖簾の力を感じさせる職人気質の店主がここにもいる。
ブームのたい焼きより今川焼き、そうつぶやいてみる。
所在地 東京・文京区根津2-30-4