京都の川端道喜(かわばたどうき)。和菓子好きなら、この店名を聞いたら、正座してしまいたくなる、はずである。
なにせ創業が室町時代末期。一子相伝で今も粽(ちまき)を作り続けている。現在は十六代目。「御所」とのつながりは虎屋以上かもしれない。
暖簾を広げないという意味ではこちらの方が「京都」だと思う。
「ちまき」といってもここの粽は少々違う。もち米とかうるち米ではない。吉野葛(よしのくず)と上白糖だけを使い、驚くほどの手間ひまをかけて練り上げ、笹の葉に包んで蒸し上げる。作り方は室町時代とほとんど同じ、というから驚きはさらに深まる。
京都に行ったとき、うっかり予約してなかったので、買いそびれてしまった。
ところが、である。救う神あり。京都の畏友が、お土産に持って来てくれたのだ。
粽は賞味期限の関係もあり、代わりに「葛湯・おしるこ詰合せ」(3個+2個 税込み1450円)だった。それでも凄い、と思う。
目当てはおしるこの方。器に熱湯を注ぎ、素早くしっかりとかき混ぜる。すると、こしあんのいい香りとくず粉の香りが立ち上がってくる。どろりと小倉色。小さな餅が3個浮いている。
木匙ですくって口に運ぶと、思ったほどのこしあん感はない。品のいいきれいな甘さ。ディープなあんこを期待すると、やや物足りない。
とはいえ、川端道喜の「御粽司(おんちまきつかさ)」の片りんは感じ取れると思う。
葛湯(くずゆ)の方が、より本来の粽に近いと思う。透明感と粘着力が凄い。きれいな甘さと余韻。天皇が京都から東京に遷都するまで、350年以上に渡って、雨の日も風の日も毎朝、「お朝」(天皇が食べた朝食。ぼた餅のようなもの)を届けた川端道喜。
かような御菓子司はおそらく他にはない。世界中どこを探しても。