週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

かき氷&どら焼き😍深谷の悶絶あんこ

 

新一万円札の顔になった渋沢栄一の出身地深谷市にはいい和菓子屋さんが多い。

 

「古伝餡 濱岡屋」(こでんあん はまおかや)もその一つ。

創業が明治25年(1890年)。現在5代目

 

あんこづくりのこだわり方が凄い。

 

あの徳光和夫さんもこの店のあんこのファンらしい。私もここの豆大福「明治大福」を食べて以来のファン。

残暑がまだまだきつい中、久しぶりにモダンな店構えの暖簾をくぐった。

 

目的は古伝餡を二重三重にたっぷり使ったスペシャルなかき氷

それに渋沢栄一のどら焼き。

 

★ゲットしたキラ星

 古伝餡かき氷(カフェで)900円

 栄一バターどら焼き 259円

 深谷どら焼き(栗入り)270円

 ※税込み価格です。



【センターは?】

古伝餡かき氷:びっくりのあんこ三重奏

 

奥が和モダンなカフェになっていて、ガラス張りの広い窓からは庭の緑が見える。

 

昔使っていた木製の菓子型が壁面に飾られていて、さすが渋沢栄一の街、と妙な感心。

生いちごのピューレをたっぷり使ったいちご水も美味そうだが、あんこ好きにとってはここは浮気(よそ見)はできない。

 

メニューから「古伝餡のかき氷」を選んだ。

◎実食 写真を見ていただきたい。

純水の氷を削ったふわふわのかき氷の上から緩めのつぶあんがドドと崩れ込んでいた。

 

上から見てもスゴ!

 

絶景かな。

 

このつぶあん特製レンガの釜炉でじっくりと炊いたものとか。

〈一口メモ〉深谷は明治20年に渋沢栄一が造った日本煉瓦製造会社(東京駅のレンガもここで造られている)の工場があった地で、深谷は「レンガのまち」として知られている。レンガとあんこの組み合わせは面白い。

 

十勝産えりも小豆×上白糖でコトコトと煮詰めている。

 

明治以来のつくり方を伝承しているようだ。

食べ進むと、さらに驚かされるのが、中に別のつぶあんがドカと隠れていること。

緩めのつぶあんをさらに煮詰めて、砂糖もさらに加えて、濃厚に仕上げているもの。

 

ねっとりとした甘めのあんこで、塩気もほんのり。

 

純水の氷との相性もよく考えられている。

 

あんあんしながら食べ進むと、さらに底にはこしあんが控えていた・・・。

あんこの三重奏とは、ありそうであまりないのでは?

 

怒涛の悶絶あんこ。

 

好みにもよるが、練乳をかけると、プラスアルファが楽しめる。

あんこと練乳の相性は悪くない。

 

餡ビリーバブルなかき氷。

 

これで税込み900円コスパ的にも悪くないと思うが、いかがだろう。

 

【セカンドは?】

栄一バターどら焼き:バターと古伝餡の合体

左右82ミリ程度の大きさで、キツネ色の表面には渋沢栄一のシルエット

 

重さも70グラムほど。

つぶあんのボリュームもまずまず。

 

バターの風味が強めで、しっとりとしたどら皮とともに口の中で絡み合うと、「いいどら焼きだなあ」と余韻を楽しみたくなる。

 

バターの塩気が効いている。

 

深谷とらやき(大粒栗入り):白っぽい生地にトラ模様のどら焼き

こちらは約90ミリ×83ミリと少し大きい。

 

どら皮に和三盆も使っている。

 

「栄一バターどら焼き」よりもライトな感触で、味わいも上品(淡い)。

「大粒栗入り」と表記してあるが、蜜煮した栗は思ったほど大きくはない。

 

その分、つぶあんはたっぷりあり、よりシンプルな味わい。

見た目のエレガントさとくちどけの良さが印象的。

 

これはこれで「深谷」を楽しめる。

 

「古伝餡 濱岡屋」

所在地 埼玉・深谷市西島町2-18-14

最寄り駅 JR深谷駅から歩約5分

 

             



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎌倉の粋😎抹茶あんみつ&御膳しるこ

 

本日は日曜増刊号です。

 

古都鎌倉の「納言志るこ店」(なごんしるこてん)と言えば、知る人ぞ知るいぶし銀の甘味処。

観光客でにぎわう小町通りをちょいと横道(路地)に入ると、そこだけ昭和が生きているよう。意外な穴場。

 

「納言志るこ店」のレトロな立て看板と木の引き戸、白地の水引のれんに体ごと引き込まれそうになる。入り口はむしろ狭い。

この眠りかけていた情緒をくすぐるお店、実は今回が二度目の訪問

 

前回は狭い路地に長い行列が続き、「これはたまらん、出直すことにしよう」と退散した経緯がある。

 

なので今回はオープンとほぼ同時、午前11時入った。こんどはすんなり入れた。

それでもお客(常連客が多そう)が次々に入ってくる印象。

 

店内は思ったよりも広く、磨き抜かれた木のテーブルと椅子、それに正面奥の板場には女性(女将さん?)が二人、調理に励んでいた。いい感じ。

 

昭和がそのまま。タイムスリップしたよう。

 

品書きはあんみつやおしるこ、かき氷などが甘味処はこうでなくっちゃという手づくり感で並んでいる。

★ゲットした二品

 抹茶あんみつ 600円

 御膳しるこ  700円

  ※税込み価格です。

 

抹茶あんみつ:珍しいあんみつで、もともとは店のスタッフが賄い(まかない)で味わっていたものとか。

 

いわば賄いあんみつ、ということになる。

 

写真をご覧いただきたい。

冷たい抹茶の糖蜜水に角切りの寒天(大きめ)がゴロゴロと沈んでいて、中央部につぶあん(自家炊き)がどっかと乗っている。

 

ガラスの器が涼やか。

 

何という景色。私の目には素晴らしいアートにさえ見える。

つぶあん北海道産小豆×上白糖

 

毎朝、羽釜を使ってじっくりと煮詰めている。

 

寒天のシャキッした固さ、抹茶糖蜜水、主役のつぶあんの素朴で穏やかな風味と食感、小ぶりの赤えんどう豆・・・この四位一体ぶりにしばし浮世を忘れる。

つぶあんはやや甘め。塩気もほんのり。

 

抹茶のほんのり苦みがいいアクセントになっている。

 

外の猛暑もすでに吹っ飛んでいる。

創業が昭和28年(1952年)。現在3代目

 

造り方は創業時のままだそう。

 

店内の造りもあんこ炊きの香りもこの場所を特別な場所に押し上げている。

 

御膳しるこ:田舎しるこ(つぶあん)もあるが、さすがに3品はきつい(?)。

 

なので、今回はこしあんの御膳しるこを選んだ。

創業当時からの木製のお椀と板敷がいい。

 

熱い煎茶がさり気なく置かれているのも歴史を感じる。

 

箸休めは蕗(ふき)の佃煮。

 

蓋を取る瞬間がたまらない。

いい香りとビジュアル。これこれ、とうなずきながらいただく。

 

餅は大きめで、焦げ方が寸止めの職人芸だと思う。

何よりも自家製こしあんが素晴らしい。

 

どろりとした舌触りと絶妙な甘さ。かすかに塩気。

 

好みのおしるこ、だよ。

 

いい小豆の風味が口の中で、舌の上で、しばらくとどまる。至福の時間。

餅の焼け具合と柔らかさ。

 

こしあんの絡み方。

 

店内のお客のお顔が幸せそう。

 

その様子を見ても、この店が常連客に愛されているのがよくわかった。

 

造り方も店内の隅々までも創業時(初心)のまま、を守り続けているのも脱帽したくなる。

名だたる鎌倉文士もここを愛したという情報もある。

 

こういう甘味処が存在していること。

 

支払いを終えて外に出るとき、ついかしわ手を打ちたくなってしまった(ホントです)。

 

●「納言志るこ店」

所在地 鎌倉市小町1-5-10

最寄り駅 JR鎌倉駅から歩約3~4分

 

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

餡な水菓子&あんず大福😍広尾の絶妙

 

今回は東京・広尾で見つけた和モダンな和菓子屋さんのキラ星を取り上げたい。

 

広尾エリアは各国の大使館が点在し、インターナショナルな高級住宅街のイメージが強い。有栖川宮記念公園聖心女子大もある。

遠い昔、私が短期間勤めていた広告代理店のあった場所でもある。

 

懐かしさとあんこセンサーの向かうがままに、猛暑の中、恵比寿駅からブラ歩き。

「菓匠 正庵」(かしょう しょうあん)の和モダンな店構えが視界に入った。

 

あんこころが引っかかった。

「あんず大福」「水ようかん」などの品書きが見える。

 

★ゲットしたキラ星

 水ようかん(カップ入り)421円

 双茶(二層の水菓子)  421円

 あんず大福 280円

 いちご大福 405円

  ※すべて税込み価格です。

 

【センターは?】

水ようかんvsレアなつぶあん双茶

 

水ようかん:まずは夏限定(今月中旬まで?)の水ようかんの色に目が釘付けになった(写真㊨)。

藤紫色の洗練されたシンプル。透明で大きなカップ入り。

 

店主はかなりの自信家で、「あんこは直焚きでしょうね」と言うと「当然です」と胸を張った(自然体でいやらしくはない)。

 

自宅に戻って冷蔵庫で1時間ほど冷やしてから、賞味となった。

 

〈味わい〉

スプーンで口に入れると、舌ざわり(ビロードのよう)が素晴らしい。

甘さは控えめ。

 

主役のこしあんと寒天の配合が絶妙で、このシンプルの極め方に店主の和菓子職人としての繊細な技術を感じる。

よく見ると、長方形の笹があしらわれている。

 

小豆は北海道産で砂糖は「鬼ザラメ」(氷砂糖に次ぐ最高級白ざら糖)で、寒天の存在が背後に隠れている。

あんこの粒子を感じる冷たい美味。ゆっくりと癒しの時間が流れる。

 

餡ハッピーだよ。

 

双茶(ふたちゃ):これも大きなカップ入りで、抹茶と煎茶の柔らかな錦玉羹。

 

抹茶の濃緑色が強めで、藻のようにも見える。

二層になっていて、最下層にはつぶあんの海

 

双茶の意味は抹茶と煎茶をブレンドしていることのようだ。

 

スプーンで掬うと、ぷるるんと揺らぎ、抹茶の苦みが熱い舌に心地よい。

下層のつぶあんが洗練された直焚きつぶあんで、小豆の柔らかな風味が全体をほっこりさせる。冷たいほっこり。

この合わせ技がユニークで、「双茶」という菓銘までユニーク。

 

わかりにくいが、店主はかなりの凝り性と見た。

 

●あんヒストリー

創業は1997年(平成9年)。店主は製菓学校には行かず、和菓子屋をいくつか直に修業したそう。あんこづくりは素材選びを含めて独自のこだわりを持っているようだ。「丹波大納言は濃すぎて、私は北海道十勝産を使っていますね」とか。

 

【サイドは?】

あんず大福:この店の目玉商品がこのあんず大福。

シロップ漬けした干しあんずとつぶあん杵つき餅で手包みしている。

 

餅の柔らかさとあんずの酸味、陰の主役柔らかなつぶあんとのバランスがとてもいい。

サイズは直径60ミリ×50ミリほど。

 

朝生なので、賞味期限が「本日中」

あんず独特の風味が、大福と合体して、フツーのフルーツ大福とは違う味わいをつくっている。

 

いちご大福:この時期までいちご大福をつくっているのは珍しい。

いちごは北海道産を使用、この時期のいちごは酸味が強いそう。しかも小ぶり。

 

つぶあんの甘さを抑えたふくよかなねっとり感が小粒ないちごの酸味と絶妙にコラボしていて、清々しい余韻を舌先に残す。

この時期のいちご大福の味わいはまた格別。

 

髭が似合う、どこかシェフのような店主の世界観は面白いと思う。

 

「菓匠 正庵(しょうあん)」

所在地 東京・渋谷区広尾1-9-20

最寄り駅 JR恵比寿駅から歩約10分

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎌倉の絶品「あわ大福」😎喧騒と静寂

 

京都と並ぶ人気地帯、古都鎌倉の観光客ラッシュはなるべくなら避けて通りたい。

だが、あんこ旅は甘くはない(笑)。あんこの神様は許してくれない。

 

どうしても寄りたい店が2軒ある。

 

その一軒が老舗和菓子処「長嶋家(ながしまや)」

鎌倉の中でも最も人出の多い小町通り」に昭和のままの渋い店構えで孤高を守り抜いている。その曲げない志が脱帽もの。

 

マガジンハウス刊「ブルータス」(2013年11月1日号)のあんこ特集でも「あわ大福(こしあん)」がちらりと取り上げられている。

 

今回が二度目の訪問となる。前回は売り切れていた。

なので、今回はほぼオープンと同時、午前10時過ぎにたどり着いた。

 

★ゲットしたキラ星

 あわ大福(小倉あん)270円

     (こしあん)270円

 水ようかん     340円

 胡桃もち      395円

 わらび餅      390円

 黄味しぐれ     350円

  ※すべて持ち帰り税込み価格

 

【センターは?】

あわ大福:昔ながらの丁寧な造り

 

小倉あん(写真左側)こしあん(右側)を2個ずつゲットした。

時間差で味わいの変化を楽しむため。

 

〈1回目 当日〉

長嶋家の凄いところは、本物の粟(あわ)を使っているところ。ほとんどの店は粟が希少で手に入りにくいため黍(きび)で代用していると言われる。

 

しかも昔ながらの石臼杵搗きという頑固さ。

 

なので、小ぶりだが、安くはない。

ごらんの通り、自然な色で、サイズは約50ミリ×50ミリ。厚さは30ミリほど。

 

餅粉がほどよくかかっていて、手で触ると、驚くほど柔らかい

 

油断すると手にくっつく。

 

「今日中、早めに召し上がってください」(4代目店主)

 

小倉あんは中のあんこがうっすらと見え、こしあんはかすかにその存在が窺える。

よく見ると、何とも言えないオーラが見える。

 

●味わい あわ餅は搗きたてから約4時間ほど経過していたが、まだ十二分に柔らかい。

 

伸びの凄さ。

ほんのりと粟(あわ)の風味が来る。

 

小倉あんは柔らかな粒々が口の中で全開するようで、4代目の和菓子職人としての手のいい香りがするよう。

小豆は希少な北海道産フジムラサキを使用。砂糖は粒の大きい白ザラメ。

 

今も銅鍋とエンマ棒であんこを練っているとか。

 

その頑固なまでのこだわり方に脱帽したくなる。

甘さはほどよく、あずき感が素朴に押し寄せてくる。

 

粟餅との絶妙な合体。

 

少々高くても納得。

 

こしあん小倉あんとは別物、と言いたくなるほど、色も味わいも淡い。

高貴に淡い、と言った方が近い。

 

柔らかな小豆が点々と混じっていて、素朴さもきちんと入れている。

 

ディープなあんこ好きにはやや物足りないかもしれないが、私はこの淡さの絶妙を感じる。

 

ほお~、が何度も出てくる。

 

〈2回目 翌日〉

餅はすっかり固くなっていて(無添加づくりの本物とわかる)、オーブントースターで炙ることにした。

大福のもう一つの楽しみ方。

 

●味わい 炙ることによって、粟餅の風味がより強く出てくる気がする。

 

パリパリと表現したくなる固さ。

これが意外と美味。

 

炙ると、こしあんの高貴さよりも小倉あんの野暮が私には心地よい。

こしあんよりも濃厚なあんこ。

熱々を少し冷ましてじっくりと味わう。

 

このあわ大福は二度楽しめる

 

ぜいたくな時間。

 

☆あんヒストリー

「長嶋家」の創業は大正10年(1921年)。現在4代目。創業当時を想うと、その百年後、このエリアがこれほどの賑わい(外国人観光客も多い)になるとは想像できなかったに違いない。季節の餅菓子から上生菓子まで素材選びから製法まで頑固にこだわりを守り続けている。そこだけ昭和の世界が私の目には何か大事なものを守り続けている、と感じる。

 

【サイドは?】

水ようかん:藤紫色のあまりに高貴な、儚さと紙一重の、素晴らしき水ようかんだと思う。

 

希少な小豆を使っているので、フツーの水ようかんと色が全然違う。

淡いこしあんと寒天の絶妙な配合。

 

寒天の他に吉野葛も使っているような。

 

舌に残る余韻もあまりにやさしい。

貴種の水ようかん、というのも確かにある。

 

胡桃もち:くるみの細かいかけらが練り込まれた柔らかな餅。中はこしあん

くるみの歯触りと風味が効いていて、淡いこしあんと絶妙なマリアージュをつくっている。

 

わらび餅:青きな粉のかかり具合がうぐいす餅のよう。中はつぶあん。これも甘さは控えめで、どこか奈良・大和郡山の超老舗「菊屋」の城之口餅を思い起こしてしまった。

素朴で上質な美味さ。

 

黄味しぐれ:白あんと卵の黄身、上新粉の割合が素朴で、中の淡いこしあんとのマリアージュが私のあんこころにフィットした。

口の中で混じり合い、スーッと溶けていく感覚が素晴らしい。

 

いい意味でこの地味さに4代目の誠実さが見える。

 

「長嶋家」

所在地 鎌倉市小町1-5-8

最寄り駅 JR鎌倉駅から歩約2~3分

 

         







 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧東海道の絶句🤩大森名物「のり大福」

炎天下のあんこ旅で、海苔(のり)養殖の発祥地と言われる東京・大森でめちゃウマ「のり大福」と出会ってしまった。

言葉遊びではないが、ノリのいい餡ラッキーな遭遇(笑)。

 

旧東海道、美原通り(三原通り)に、いぶし銀の立派な店構え。

「御菓子処 大黒屋」の屋号に歴史を感じる。百年老舗だが、どこか新しさも隠れていそう。

「大森名物 江戸前のり大福」のノボリが夏風に逆らうように翻っていた。

 

気骨すら感じる、いい光景。

 

★ゲットしたキラ星

 のり大福 180円×2個

 麩まんじゅう 220円

 水ようかん 180円

 赤じそ道明寺 200円

 ※すべて税込み価格です。

 

【センターは?】

のり大福:海苔餅と自家製こしあんの融合

現在は海苔の養殖が禁止され、地場産ではなくなったが、養殖海苔の伝統は大福に変身して生きているということかな。

 

食べる前までは少し抵抗感があったが、ひと口でファンになってしまった。

 

「固くなるので、今日中に早めに食べてくださいね」

 

4代目だという店主の言葉は本当だった。

 

あんこ旅を早めに切り上げ、自宅に戻ってから賞味となった。

青海苔がきれいに練り込まれた搗き餅を真ん中から切ると、柔らかな伸びとともに、見事なこしあんが現れた。それもたっぷり。

 

餅米は評価の高い新潟産わたぼうしを使用、蒸し上げてから、毎朝搗いているそう。

 

サイズは50ミリ×50ミリ。重さは約60グラム。

 

〈味わいは?〉

添加物は使用していないので、青海苔の風味がストレートに来る。

餅のしっかりとした柔らかさ。伸び方が素晴らしい。

 

自家製こしあんのあまりに自然な舌触り。素晴らしきあんこ。

 

北海道産小豆×白ザラメ。

 

餡づくりのこだわり方も感じる。

「上白糖だとえぐみが出るので、私は白ザラメで炊いてます」(4代目)。

 

甘さが控えめで、海苔餅のほんのりと漂う塩気との相性が絶妙。

 

うめえ。言葉が漏れる。

 

大福の中では海苔大福はレアだと思うが、当初はミスマッチでは?との疑いはたちどころに消えていた。

こしあんの質の高さに舌を巻く。

 

場所が場所だけに、江戸前の潮風すら感じた。

 

あっという間に2個、ぺろり。

 

【サイドは?】

水まんじゅう:笹のみずみずしさと本葛×こしあんの合体。

これはやられてしまった。

 

半透明の葛、誘惑するようなこしあん。大きめのサイズ。

 

冷蔵庫で十分冷やしてから味わう。

 

これもこしあんが私を別世界に連れて行くようだった。

笹の香りがいい効果を生んでいる。

 

ぷるるんと舌の上で一瞬立ち止まって、すっと消えていく。

 

余韻も長い。

 

麩まんじゅう:青海苔の麩まんじゅうとこしあん

もっちり感が上質で、笹の香りまでいい具合に付いてくる。

 

こしあんのしっとりとしたなめらかさとほどよい甘さ。

口の中で合体し、つるりと溶け合い、胃袋へと落ちていく。

 

王道の麩まんじゅうだと思う。

 

水ようかん:これも「本日中」の一品。

底敷き桜葉の丁寧な仕事ぶり。

 

濃い小倉色の上質な水ようかんで、甘すぎない。

こしあんと寒天の割合がこしあんのほうがやや勝っている。

 

絶妙な歯触り舌触り。

 

赤じそ道明寺:赤じその道明寺というのが珍しい。

これも無添加づくりで、「本日中」が制限時間。

 

小さめ(約47グラム)だが、塩漬けした赤じその風味と酸味がお見事。

中こちらもは自家製こしあん

 

道明寺の質といい、手の込んだ造りといい、隠れた逸品に出会えたこと。道草にも一理あると思う。

 

●あんヒストリー

創業は大正8年(1919年)。現在4代目。「のり大福」は3代目が考案したそうで、今では大森名物にもなっている。伝統と創作。一ひねりしたプリンやロールケーキなども人気を呼んでいる。

 

「御菓子処 大黒屋」

所在地 東京・大田区大森本町2-31-9

最寄り駅 京急平和島駅下車 歩いて2~3分

 

         



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝統&進化😎山形8代目のネオ和菓子

 

和菓子界において、山形の老舗「乃し梅本舗 佐藤屋」は面白い位置にいると思う。

 

創業が文政4年(1821年)、現在8代目。

 

伝統菓子「乃し梅」を守りながら、斬新な和菓子づくりに挑戦し続けている。

「&プレミアム2月号 あんこと、きなこ」(マガジンハウス刊)で、私とおだんご先生(芝崎本実さん)が「深遠なるあんこワールドへ、いざ」と題して対談した際にも、佐藤屋の創作羊羹「りぶれ」を取り上げている(エラソーですが=笑)。

ラム酒とレモンを大胆に取り入れた二層の黒糖羊羹で、驚きとともに反響も大きかった。

 

コロナ禍が長かったので、お取り寄せしたものだが、今回、みちのくあんこ旅の途中で初めて本店(山形市)に立ち寄ってみた。

本店は十日町通りという歴史的な一角に古くてモダンな建物があり、その連なるような造りに圧倒された。中身はどうなんだろう?

 

和菓子ばかりでなく洋菓子コーナーもあり、その和洋折衷ぶりに8代目のチャレンジ精神を感じた。

 

★ゲットしたキラ星

くろもじ 1棹1200円

くず桜  1個 200円

翆玉(洋+和) 500円

 ※すべて税別価格です。

 

【センターは?】

くろもじ:ハーブの香りの創作羊羹×日本酒=?

4年ほど前にこの週刊あんこで取り上げたのは「りぶれ」と「頂(いただき)」だが、そのとき新たな創作羊羹に出会った気分になった。

 

羊羹の世界に大きな変化が起きていることを実感させられた。

 

syukan-anko.hatenablog.jp

 

だが、今回は驚くような変化は感じなかった。

 

むしろ伝統に回帰した印象で、そこがむしろ面白かった。



「くろもじ」という渋い菓銘の煉り羊羹は「ハーブの香り」と説明されていて、その後、自宅に帰ってから試食となったが、見た目は艶やかな小豆色のシンプルなもの。

 

サイズは150ミリ×35ミリ。重さは250グラムほど。

「りぶれ」や「頂」ほどの斬新さはなく、むしろ静かに粋を極めている印象。

 

〈味わいは?〉

表面の蜜とテカリ、かすかにハーブ(山椒?)の香り。

菓子楊枝にも使う「黒文字」の葉を乾燥させたものを、練り羊羹に加えていることが説明してあった。

 

辛くない山椒の香りとも書かれていたが、私はシナモンの気配を感じた。

 

羊羹に「聞香(もんこう)」の要素を取り入れるということかな?

柔らかな歯ざわり。あっさりした味わい。

 

上質の水羊羹のようでもある。

 

香りが口の中にしばらく残る。

 

シンプルだが、よく考えると、かなり実験的だと思う。

 

「日本酒との組合せがおススメ」と8代目のコメントが付記されていたので、仕方なく(?)昼間からぐい呑みを出し、楽しんでみた。

羊羹とお酒の組み合わせは珍しいことではないが、作家の開高健おすすめのマッカラン×虎屋の小形羊羹ほどの意外性は感じなかった。

 

それでも結構イケた。

 

新しい和菓子の楽しみ方として、前向きの提案ではないかと思う。

 

【サイドは?】

くず桜:これは伝統的な、朝生菓子の一品。チャレンジングな佐藤屋がこうした伝統を忘れていないことが素晴らしいと思う。

半透明の葛と中のこしあんが塩漬け桜葉に包まれて、ほほ笑みかけるように私の口に入る。

なめらかなこしあん桜葉の塩気吉野葛のもっちり感。

 

フツーに美味しい。

 

翆玉(すいぎょく):3層の和と洋の合体。透明なプラスチックの容器に収まっていて、上から柚子クリームのブランマンジェ(生クリームの白いデザート)、抹茶の水ようかん、北海道産つぶあんという3層の構造になっている。

夏の冷たい創作菓子。

 

三つの味わいが混じり合い、それを舌で受け止める。

個人的には抹茶の水ようかんと最下層のつぶあんの合体が気に入った。

 

洋菓子好きと和菓子好き、両方に受けそうな味わい。これもチャレンジングな8代目のアイデアとか。

 

「乃し梅本舗 佐藤屋本店」

所在地 山形市十日町3-10-36

最寄り駅 JR山形駅から歩くと約12~15分

 

          

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仙台の謎😎上生菓子屋のどら焼き

 

京都が秀吉なら、仙台は伊達政宗が造った街となる(諸説あるが)。

 

いい和菓子屋や餅屋が多いが、私にとっての謎は上生菓子の小世界である。

「御菓子司 賣茶翁」(ばいさおう)の名前は以前から知っていたが、敷居が高そうなので、これまでは足が向かなかった(反省)。

 

予約もできず、電話番号すら登録していず、ホームページすらない。

 

つい最近までそんな噂(都市伝説)が独り歩きし、「かなんなあ」の世界だったが、今回思い切って訪問することにした。

 

結論。都市伝説は訂正する必要がある。

 

電話も通じたし、最近ではインスタグラムも取り入れていた。

それ以上に私にとっては身近な「どら焼き」が、この店の目玉の一つだとわかった。

 

雑誌やネットなどで見ると、店構えの凄さ(侘び寂びの世界)に驚かされる。

 

前日に電話をしたら、予約できることもわかった。

 

「どら焼きをまずは一つお願いします。残りは実際にお伺いしてから」と小さなお願い。ちょっと緊張する(笑)。

 

応対は素晴らしい。

 

★ゲットしたキラ星

 どら焼き 300円

 玉藻羹(上生菓子)480円

 最中の月 290円

  ※すべて税別価格です。

 

【センターは?】

黒塀に囲まれた、そこだけ時間が止まったような、侘び寂びの世界。都会の中の異空間、といったところ。

どこか京都の歴史ある料理屋のような佇まい。

 

これはすごいね、しばし時間を忘れる。

 

その一角によく見ると「焼きたてどらやきございます」の文字。「本日営業中」の立て札も見えた。

ラッキーと思うことにした。

 

千利休伊達政宗を従えてどこかに隠れているのではないか? そんな妄想が起きた。

どらやき大きめの見事な焼き色、緩めのつぶあん

 

焼きたてどらやきのサイズは約95ミリ×95ミリ。大きい。

焼き色が濃いが、見た目は上野黒門町うさぎやとよく似ている。

 

日持ちしないのでホテルに戻っての実食となったが、手に持つとずっしりと重い。

 

手で二つに割ると、どら皮のスポンジ感がとてもいい。

新鮮な卵の風味が来た。

 

中はつぶあんだが、焼き立てということもあるのかドロリと緩め。

緩めのつぶあん上野黒門町うさぎや」と共通していると思う。

 

このつぶあん美味が爆発するような広がりで、口の中がしばし支配された。

むしろ濃厚で、コクのあるつぶあん

 

一粒一粒に丁寧さが入っていて、ふっくらと柔らかく炊かれている。

 

上生菓子屋がつくるどら焼き。

 

フツーに美味い。

 

【サイドは?】

上生菓子「玉藻羹」(たまもかん):目と舌をくすぐる精緻の極め方

 

上生菓子は数種類、宝石のように並んでいたが、日持ちしない、安くはない、という限られた条件の中で、私が選んだのがこの「玉藻羹」。

 

深い緑色と二層の羊羹の美しさ。

 

黒糖羹とあずき羊羹(水ようかん)。

 

上から見ると大納言あずき(甘納豆)が2個藻に浮いている。

藻は抹茶のようで、その深みのすぐ下に黒糖羹が控えていて、さらにその奥にこしあんが秘められている・・・すごいね。

スプーンで口に運ぶと、錦玉羹がぷるるんと揺れ、黒糖の香りと抹茶のマリアージュ、さらに穏やかなこしあん二重三重の波となって押し寄せてくる。そんな感じ。

こしあんのキュートな味わいにホッとする。

 

和の世界に洋のアイデアを取り入れている?

 

ここはやはり凄腕と、脱帽したくなった。

 

最中の月:奈良の「みむろの最中」と同系の薄型の最中。

中はつぶあん。どら焼きとほぼ同じものだと思う。

 

皮の香ばしいサクサク感、甘めのつぶあん

 

フツーに美味しい最中でした。

 

●あんヒストリー

▼「賣茶翁」という店名は江戸時代に存在した僧侶の名前で、煎茶の中興の祖と言われた人。▼一時仙台にもいたようで、この店の初代が尊敬していて、店名にしたようだ。▼「御菓子司 賣茶翁」の創業は情報を公開していないので、はっきりしない。▼店の人に聞いてもベールに包まれたような応対だった▼それでも話の内容から創業は古く(インスタには明治12年創業と書かれている)、仙台空襲後、昭和22年頃現在の場所で店を再開、その時に「賣茶翁」を屋号にしたようだ▼そこからは三代目となるようだ▼仙台から京都や東京に負けない上生菓子のいぶし銀ワールドを発信し続けている。

 

「御菓子司 賣茶翁」

所在地 宮城県仙台市青葉区春日町3-13

最寄り駅 JR仙台駅からバス「市民会館前」下車