週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

京都のすごみ😎神馬堂「やきもち」

 

秋は京都に行きたくなる。コロナで約3年ぶりの訪問となった。

 

まずはあんこ山脈の頂点の一つに草鞋(わらじ)を脱ぐことにした(江戸時代か?)。

 

これまで行けなかった、上賀茂神社門前にある「神馬堂(じんばどう)」

 

ここの名物「やきもち」(葵餅)は東京・深川不動尊前「清水屋」(今はない)のきんつばとともに、私にとっては特別な朝生のあんこ菓子(個人的な思い入れです)。

どちらも、左党であんこ好き、池波正太郎さんのエッセイで知り、いつか行って食べてみたいな、と思っていたもの。清水屋はとっくの昔に廃業しているので、私にとっては神馬堂のやきもちが「夢の残り」的な存在となっていた。

 

行列店で早朝に行かないと手に入りにくい。

 

「売り切れです。すんまへんなあ」でこれまで二度ほど討ち死に。予約もできることを知ったのは後のこと。たまたまなのか電話してもつながらないことも多い。

 

で、今回。電話してもお出にならなかったので、行列覚悟で早起きして、早朝8時半に到着した(基本的に午前7時から営業しているようだが、アバウトのようだ)。

 

だが、古い、立派な、いい店構えの前に人の気配はない。

あれっ、今日は休みではないはずだが。

 

またも縁がないか。あきらめかけたが、ふと見ると、板戸に手書きの紙が下がっていた。

 

読むと、「誠に勝手ながら、本日は前日までの予約分のみとさせて頂きます」うんぬん。

げっ。ため息が束になって足元に落ちた(意味不明)。

 

「おめえが悪いんだよ」と誰かに肩をたたかれるような徒労感にも襲われた。

 

と愚痴っぽく書いてしまったが、捨てる神あれば拾う神あり、ということもある。ここは上賀茂神社前なのだ。あんこの神様だっておいでになるかもしれない。

大鳥居をくぐって参拝することに。しばらく周辺を散策。

 

その約1時間後、奇跡が起きた

 

行列ができていた。

店が開いていた。何という展開か。愚痴もため息も文句もフトコロにしまい込んで、並ぶことにした。

 

で、ついにゲットとなった。長かったア~。

 

・今週のキラ星

 やきもち5個入り 650円(税込み)

 別に焼き立てを1個 130円(同)

 

【今回のセンターは?】

焼き立て後、餅もあんこも別格だった

 

神馬堂のやきもちは賞味期限が「本日中」

 

焼き立てをまずは食べる。別枠の一個。

 

ちょうど市をやっていたので、上賀茂神社敷地内で賞味することにした。

写真でおわかりのように、円状に見事な焼き色

 

粗めの餅粉が表面にかかり、目測だが、大きさは左右5~6センチくらい。厚みも2センチはある。

 

夜が明ける前からドスンドスンと餅を搗(つ)き、搗いた餅に手作業で自家製あんこ(つぶあん)を包み、形を整え、それを鉄板状の上(炭火?)で焼く。

明治5年(1872年)創業時からほとんど同じ製法。

 

メニューは「やきもち」一品だけ。約150年間やきもち一筋。これはすごいこと、だと思う。

 

〈賞味第1R 焼き立て後〉

焼き立てを食べてみたかったが、包む前に熱さを冷ましているのか、すでに熱くはないが、ほとんど焼き立てに近い。

 

パリパリ感も少し残っている。うっすらとあんこも見える。

手で割ろうとすると、餅の伸びが十分にある。

 

しっかりと搗(つ)かれているのに、伸びる。伸び方に歴史がある。

その奥から見事なつぶあん「ようおいではりましたなあ」(そんな感じ)と姿を現した。

 

つややかで濃いあずき色。ひと目でピュアなあんこだとわかる。

柔らかな餅とつぶあんが口に入れたとたん、極上の風味とともに吹き上がってくる(そんな感じ)。

 

これはすごいね。

つぶあんはほどよい甘さ、雑味のないあんこで、小豆の皮まで柔らかく炊かれていて、歯にかすかに引っかかる感触が絶妙と表現するほかはない。

 

私が食べたあん入り焼き餅(焼き大福)の中では別格の味わい、と思う。

 

〈賞味第2R  約8時間後〉

ホテルに戻って、午後6時過ぎ。最初の賞味から約8時間後。

 

包み紙(馬のイラストがシャレている)を取ると、5個のやきもちが整列していた。

 

よく見ると手包みなので一個一個微妙に違う。

焼き加減がいぶし銀のアートに近い、いい光景。

 

早朝の時よりも餅がほんの少し硬くなっていて、表現を変えると、より落ち着きが出ていて、よりなじんだ食感となっている、と思う。

焼き立てよりも、むしろ数時間置いた方がうまい、というファンも多い。

 

私自身はどちらも美味、というほかはない。

 

ほんの微妙な違いだが、この辺りは好みもあるので、立ち入らない(笑)。

オーブンがあったら、さらにあぶって食べるのも、また別の味わいが出ると思う。

 

「餅よし 餡更によし 焼き加減又良い」

 

これは店先に置いてあった店主の言葉だが、近江商人の「三方よし」のあんこ版とも言えなくもない、店主はユーモアもあるようだ。

 

神馬堂のやきもちにやきもちを焼きたくなってしまった(着地がダジャレとはね)。

 

「神馬堂」

所在地 京都市北区上賀茂御薗口町4

最寄り駅 京都駅から市バス

 

              



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶妙😋吉祥寺の冷やし丹波大納言

 

めっきり秋らしくなってきたが、あんこの女神がほほ笑む季節、でもある。

 

本日はジョージ(吉祥寺)の和菓子屋さんで見つけた「利久豆腐」と「冷やしぜんざい」を取り上げたい。

昔、近くに住んでいたので、よく遊んだ街。

 

久しぶりにヨドバシ吉祥寺(近鉄百貨店があった場所)の裏手をブラ歩き(あんブラ)していると、オシャレな和菓子屋さんがほほ笑んだ(気がした)。

 

「菓匠 京右近」の看板。きょううこん・・・京都の流れかな?

 

塩豆大福、どら焼き、栗むしなどなどの品書き。

おいしそうな生菓子が並んでいたが、胃袋と懐具合の縛りがある。

 

調べてみたら、創業は平成14年(2002年)。比較的新しい。

 

女神? 若い、今どきの女性スタッフ(女将さんかな)が応対していた。

 

店名から店主は京都で修業したのかな、と聞いてみたら「いえ、東京です」と言葉少なめ。店内撮影もやんわりと断られた。

 

最近では珍しいが、ひと昔前はこういう骨のある(?)店が多かった気がする。

 

嫌いな反応ではない。逆に期待がふくらんだ。

 

★ゲットしたキラ星

 利久豆腐(ひと箱) 1480円(税込み)

 冷やしぜんざい 390円×2個

 

【センターは?】

丹波大納言の冷やしぜんざい

 

当初は木箱に納まった「利久豆腐」をセンターに置き、ついでに購入した「冷やしぜんざい」をセカンドかサードにするつもりだったが、前回の「村岡総本舗」と同じ展開になってしまった。目がない?

 

丹波大納言小豆」を使用した冷やしぜんざい(無添加)の美味さにあんこハートがときめいた。

丹波大納言をじっくりと煮詰めた、あまりにシンプルな一品だが、器に移してからじっくり観察すると、色といい、艶といい、予想以上に見事なもの

 

ひょっとして究極に近い煮あずき、かもしれない。

大納言小豆なので、食感はどうかな、と思いながら口に運ぶと、一粒一粒が形がしっかりしているのに、皮まで柔らかく煮詰められている。

 

ふくよかな凝縮、とでも表現したくなる。

 

時間をかけてじっくりと炊いているのがわかる。

 

甘すぎない、丹波大納言の上質な風味とコク。沁み込むような蜜。

 

砂糖はまろやかな「ビート(てん菜糖)」を使っているそう。

 

そのせいか甘すぎない。

 

ほんのりと塩気も後から追いかけてくる。

余韻も長い。冷たい美味にしばらくは夢心地。

 

ありそうでなかなかお目にかかれない代物だと思う。

 

主役より脇役のいぶし銀にこそ目を、と反省しながらつぶやいた。

 

【セカンドは利久豆腐】

木箱に入った凝った造りで、「利久」という文字を入れるのだから、自信作だと思う。

見た目は水ようかんだが、吉野葛(よしのくず)と寒天を加えていて、何とか包丁を入れて切り分けると、ぷるぷる感がある。

思ったよりもこしあんの存在感が隠れている。儚さ(はかなさ)が特徴かも。

葛の存在感の方がむしろ大きいと思う。

 

全体的には甘さも薄めだが、黒糖(沖縄産)の風味がやや強め。

 

よく言えば上品だが、私的にはちょっと物足りないかな。

 

「豆腐」という表現は面白い。

 

2年ほど前、会津猪苗代町の名店「豊玉(ほうぎょく)」で出会った「小豆ほのか豆腐」とよく似ているが、あちらはグラニュー糖で、こちらは黒糖を使用。

syukan-anko.hatenablog.jp

 

賞味期限は2日だが、添加物も使っている。個人的にはここは少々残念。

 

「冷やしぜんざい」ほどの感動の波は来なかった。

 

とはいえ、「住みたい街ランキング上位」のジョージで、こういうシャレた、ある種正統派の和菓子屋さんに出会えたこと、これは収穫と言わざるを得ない。

 

「菓匠 京右近」

所在地 東京・武蔵野市吉祥寺本町1-20-14

最寄り駅 JR吉祥寺駅北口から歩約5分

 

                 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの村岡総本舗の「シベリア」に驚く

 

本日はとびきりレアなお取り寄せ

 

小城羊羹(おぎようかん=佐賀・小城市)の老舗和菓子屋「村岡総本舗」のシュールなカシューナッツ羊羹」を食べてみたくなって、通販を開いたら、「カシューナッツ羊羹セットA」(カシューナッツ羊羹1本+シベリア2個)が目に入った。

価格も手ごろだったので、すぐに注文した。

 

村岡総本舗は私のひいきの羊羹屋さんで、特に表面が糖化した切り羊羹(紅練り)には目がない。どこでもドアがあれば、小城市まで行きたいが、悲しいかな身内にドラえもんはいないので、もっぱら日本橋高島屋地下で調達している。

 

数日後に手元に届いて、包装を解くと、長い紙箱とどこか大正モダンな小箱(2個)が現れた。

 

長箱はカシューナッツ羊羹、小箱はシベリア。

 

どんな味わいかな。

 

この段階ではセンターは「カシューナッツ羊羹」とほぼ決めていた。

 

★本日のキラ星

 カシューナッツ羊羹 

 シベリア

 Aセット 税込み2162円(送料は別途)

 

【センターはシベリア】

5層の凝った造りと天上の味わい

 

センターにどちらを置くか、カシューナッツ羊羹のはずが、両方を味わってから、迷いが出た。あちら立てればこちら立たず。

 

オーバーに言うと、大谷翔平かジャッジかに近い(笑)。

 

最終的には感動の大きさから「シベリア」を置くことにした。

 

●外観と味は?

昔の牛乳石鹸のような、昭和レトロなデザインの紙箱が2個。

ひと箱を開けてみると、長方形のシベリアが二切れ、きちんと収まっている。

後で調べたら、シベリアには3種類あり、定番の三角形、丸型、そしてこの小箱型があるようだが、これはその小箱型だった。

 

ドリップコーヒーを用意してから、軽い気持ちでひと口。

ん? 舌が驚いた。

 

まずカステラ生地が長崎カステラの名店とほとんど同じ、しっとりとした絶妙な食感で、バターと新鮮な卵の香りが口の中で猛スピードで広がった。

 

さらにサンドされた練り羊羹部分(切り羊羹)の美味さ。厚さが一番厚いところで2センチ前後はあるか。分厚い。

私の知っている、表面が糖化した切り羊羹よりも柔らかい。

 

いい小豆(北海道産)の風味が来た。

 

予想越え。あまりの美味さに言葉がすぐには出てこない。

 

餡ビリーバブルって感じ🤩。

 

●5層の凝り方

はじめは気が付かなかったが、よく見ると、このシベリアはカステラ生地を含めて5層になっていて、中央の練り羊羹つぶあんの層がサンドしていた。

 

境目がわからないほど。技術力。

これはすごい。

 

引かれるように食べ進むと、私がこれまで食べたシベリアの中でもこれは別格だな、と感心させられた(もちろん個人的な好みです)。

 

全体的にはやや甘めだが、蜜の気配が潜むカステラ生地と2層のあんこと切り羊羹が舌の上でよどみなく絡み合って、とろけ合う。

練り羊羹の美味さはわかっているが、自家製つぶあんの美味さにほお~が出かかる。

 

小豆の皮まで柔らかく炊かれていて、甘すぎない。

 

くちどけの良さ。あんこの幸せホルモンにしばし包まれる・・・。

 

●シベリアの不思議

本店に問い合わせてみたら、発売は2年半以上前とか。

 

5層にするアイデアは村岡総本舗独自のものだった。

 

創業が明治32年(1899年)。現在4代目。

 

シベリアは不思議な和洋菓子で、明治末から大正にかけて、日本のどこかで誕生しているが、詳しくはわからない。ネーミングも含めて諸説あるほど。当時は超人気商品だったようだ。

 

宮崎駿監督「風立ちぬ」の中にも登場していて、一部に根強いファンもいる。

 

普通のシベリアは3層だが、これは5層。

 

しかも自家製あんこのボリュームと質の高さ。

餡づくりの砂糖は「白ざらを使ってます」とか。

 

私的にはシベリアはB級の和洋菓子(このポジションも大好きです)だったが、このシベリアに出会って、見方が少し変わった。

 

せめて発売直後に食べておくべきだった、と少々後悔。

 

遠かったシベリアがぐっと近くなった。

 

【セカンドはカシューナッツ羊羹】

1本のサイズは長さが約188ミリ、幅50ミリ、厚さ23~25ミリ。

 

驚かされるのはカシューナッツがそのまま丸ごとぼこぼこと入っていて、それが練り羊羹とちゃんとコラボしていること。大胆。

表面がうっすらと糖化していて、カシューナッツがアートにさえ見える。

創作羊羹のジャンルは和菓子の新しい大陸で、全国の老舗和菓子屋さんが様々なチャレンジをしているが、これも従来の発想を超える代物だと思う。

 

カシューナッツのカリっとした歯ごたえと独特の風味。

 

それが昔ながらの伝統製法の練り羊羹と不思議に融合している。

カシューナッツ効果か、全体的に甘さが控えめ。

 

なので、コーヒーにも合うし、お酒にも合いそうだ。

 

特にウイスキーなど蒸留酒とのマッチングを試してみたくなる。

 

伝統を守りながら、新しさに大胆に細心にチャレンジをしている。

 

江戸時代から長崎街道(シュガーロード)」(長崎・出島から江戸へ物流のルート)の中継点だった小城市

 

進取の気性はそのあたりから遺伝子として存在しているのかもしれない。

 

そこに和と洋の融合の土壌を見ることもできる。

 

「村岡総本舗本店」

所在地 佐賀・小城市小城町861

※下の写真(本店)は4年前に訪れたときのものです。

                

                      


                   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三度目の正直😎小倉屋「豆大福&大福」

 

水戸に東京三大豆大福に負けない大福専門店がある、という噂を聞き付けたのは約3年前の冬。

 

品書きは豆大福と大福だけ、というコアな、ある意味では強気の大福屋さん。

 

午前中に売り切れてしまう、という情報も耳に届いている。

 

予約しないとゲットできないとも。

青春18きっぷを使い、のんびりと電車で行こうと、前々日に電話したが、なかなかつながらない。

 

ようやくつながったと思ったら、店主らしきお方が、「不便な場所なので、電車じゃちょっと無理ですよ」と素っ気ない。

 

二度目はつい3か月前ほど。満を持して1週間前に予約しようと電話したら、「当日朝か前日にお電話ください」とこれまた素っ気ない。

 

で、三度目の正直。みちのくあんこ旅の帰りにようやく立ち寄ることができた。今回はクルマ。言われた通り前日に予約を入れておいた。

 

幻の豆大福を求めて三千里、の気分。

これで味がもう一つだったら、なんだかなあ、と阿藤快さんの口調でつぶやいてやるぞ、とちょっぴり複雑な気分になったのも事実ではある。

 

とはいえハードルが高いほど挑戦したくなる。あんこ狂のサガ(笑)。

 

店はシンプルな一軒家で、白地の暖簾に「豆大福」の墨文字。端に小さく「小倉屋」と小豆色で表記してある。

東京の御三家、護国寺群林堂」や泉岳寺「松島屋」、原宿「瑞穂」ほどの渋い店構えではない。

 

歴史が浅いのかも。

 

そんなことより問題は2種類の味わい。

 

・ゲットしたキラ星

 豆大福 150円(税込み)×2個

 大福もち 150円(同)×2個

 合計 600円也

 

【センターは?】

豆大福のレベルは予想以上だった

 

午前10時半に到着。先客は3組ほど。入り口に「お一人ずつお入りください」と書いてある。

三度目の正直で何とかゲット。ウルウル。

 

「本日中にお召し上がりください」

 

と女性スタッフ。朝ナマの王道でもある。

ガラス窓から見えるのは作り立ての豆大福と大福もちの行列。いい光景。

 

奥が見えないが、どうやら店主がフル回転で作業しているようだ。

 

で、その約5時間後、自宅に戻ってから、包みを解き、ついにご対面となった。

迷ったが、ここはやはり豆大福をセンターに置くことにした。

 

●形状は?

手に持つと指の跡が付くほど餅の柔らかさがすごい。

 

早朝から搗(つ)いているのがわかる。

 

赤えんどう豆がぼこぼこ。

たっぷりの餅粉のかかり具合が店主の手を感じさせる。

 

東京三大豆大福の中では泉岳寺 松島屋」に近い印象。

 

素朴な洗練、と表現したくなる。

 

手に持つとずしりと来る。

直径約60ミリ×厚み(頂上部)35ミリほど、重さは93グラム。

●味わいは?

店のスタッフによると、あんこはどちらもつぶあんのみ。こしあんはないそう。

たっぷりのつぶあんはみずみずしく、ふくよか。

ほんのり塩気があり、小豆の皮が歯にかすかに感じるほど、絶妙に炊かれている。

 

スタッフによると、小豆は北海道産、砂糖は店主が作業中だったので、聞けずじまいだったが、適度な濃厚さから上白糖ではないか。

 

艶と透明感のある、雑味のないあんこ。甘さもほどよい。

赤えんどう豆は大き目でふっくらと炊かれている。

 

塩気もあり、この赤えんどう豆はかなりのレベルだと思う。

 

柔らかすぎるほどの餅と三位一体の味わいにしばし酔いしれる。

群林堂のような、ある種の野暮ったさはない(もっとも群林堂はそこが魅力でもある)。

 

むしろ万人向けの「これはおいしいのう」と思わず言葉が漏れる、妙な例えだが、豆大福界のMISIAのような味わいだと思う。

確かに東京三大豆大福にそれほど負けていない、と思う。

 

コスパもいい。

 

創業はそう古くはなく「20年くらいです」とか。

 

女性スタッフによると、店主のルーツはひたちなか市の和菓子屋さん(ご実家)で、面白いことに、弟さんは「おはぎ専門店」を営んでいるそう。

 

兄は大福、弟はおはぎ。

 

折を見て、そのおはぎ屋も行きたくなった。

 

【セカンドは?】

これはおのずと「大福もち」になる。

大きさは同じだが、重さが89グラムほど。ほんの少し軽い。

餅の柔らかさは豆大福よりもむしろしっかりしていて(それでもかなり柔らかい)、中のあんこは同じつぶあん

 

ピュアな大福餅で、あるいはこちらの方が好みというファンも多いかもしれない。

いずれにせよ、どんどん唾液が出てくる、上質の豆大福と大福もちで、あっという間に3個ぺろりと胃袋に消えていった。

 

クセがない分、和菓子が苦手な人でも食べやすいと思う。

 

食べ終えてから、これは豆大福界の助さん格さんだと合点した。

 

水戸のご老公はいずこへ?

 

「小倉屋」

所在地 茨城・水戸市笠原町101-5

最寄り駅 JR水戸駅だが、距離があるので、クルマがお勧め。

 

              

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超レア🤩あんマーガリン&しそ巻き笹もち

 

かつて二本松藩があった福島・二本松市あんこの隠れメッカである。

 

江戸時代末期から続く、いい和菓子屋が多い。

みちのくあんこ旅できらりと光る「あまい宝石」を見つけた。

 

コンクリートのシンプルな建物に「玉家」のくすんだ金文字。

いい店構え。

 

思わず足が止まった。

 

「玉家玉振堂(たまやぎょくしんどう)」との出会いはたまたまだった。

 

ほぼ4年ぶりに訪れた本町通りの名店「玉嶋屋」や「日夏屋」を覗いた後に、曇空の下、他の店を探しに竹田坂方面(家具屋が多い)にしばらく歩いたときに、私のあんこセンサーがビビと反応した。

 

日除けのれんに「創業嘉永6年」(1853年)と染め抜かれていて、入り口のガラス戸には「くりまんじゅう」「名物 しそ巻き笹もち」の品書きも見えた。

全体的にはくすんだ印象だが、その奥にプロフェッショナルの気配を感じた。

 

現在7代目。6代目の下で伝統と新しさを融合させた和菓子作りに取り組んでいる、ヴィヴィッドな和菓子屋さんだと店内に入ってからわかった。

 

調べてみたら、ルーツは二本松藩主・丹羽家御用達の羊羹屋「玉屋」で、途中休業期などもあり、いくつか暖簾分けもしていることもわかった。

 

ちょっと驚かされたのは古さの中の斬新さ。

 

「あんマーガリン」(拾万石もなか)や見た目も違う「くりまんじゅう」。

代々続く二本松羊羹や栗羊羹に挟まれるように、「ん?」となる個性的な生菓子類が控えめに光っている。いいね。

 

★ゲットしたキラ星

 ・あんマーガリン 税込み145円

 ・しそ巻き笹もち 同120円

 ・くりまんじゅう 同120円

 

【センターは?】

オリジナル「しそ巻き笹もち」の絶妙

 

迷ったが、ありそうで珍しい生の餅菓子「しそ巻き笹もち」を選んだ。

みずみずしい笹にくるまれ、さらに赤紫蘇(あかしそ)でくるんだ道明寺で、中のこしあんとのコラボがとても印象的。

笹の香りと赤紫蘇の香りが二重奏となり、中の道明寺餅を殺していない。

 

それどころか赤紫蘇の酸味と自家製こしあんが見事に調和していると思う。

道明寺の柔らかさ。それに甘さを抑えたこしあん

 

口の中に広がる複雑な味わい。

たまたまいらした7代目によると、「6代目のオリジナルです」とか。

 

一見地味だが、巧みな工夫だと思う。

 

赤紫蘇がやや強いので、そこは好みが分かれるかもしれない。

 

【セカンドは?】

「あんマーガリン」はコッペパンやどら焼きには珍しくないが、最中(もなか)に取り入れたのがユニーク。

あんバターではなくあんマーガリ。どこか正直で手に取りやすい。

 

サクサクとした皮は福島産のもち米を使用、中の小倉餡は北海道産小豆の自家製あんこ。寒天も少し加えているようだ。

砂糖は「上白糖を使ってます」(7代目)。

 

ほどよい甘さの小倉餡とマーガリンが二層になっていて、サクサクの皮と口の中で「いい関係」を作り出している。

マーガリンの塩気が効いている。

 

もなかの新しい世界だと思う。

 

ネーミングも「あんマーガリン」とは、ね。

 

昔、アン・マーグレットという女優がいたが、7代目に言ったら「えっ、知りませんよ」と笑われてしまった。

 

【お・ま・け】

「くりまんじゅう」もよく見ると、かなりの凝り具合。

 

私が知る栗まんじゅうは焼き菓子だが、ここでは「蒸かしたまんじゅうです」。

 

しかもつややかな皮はもっちりしていて、クチナシで黄色に染めている。

中は白あん(大手亡豆)だが、よく見ると、さらに栗あんで包んでいる。

 

二重のあんこ、は驚き。

やさしい、ふっくらとした栗まんじゅう。

 

あんこは甘さが抑えられていて、後味があっさりとしている。

 

いい和菓子屋さん。

 

表面が糖化した江戸からの二本松羊羹の元祖を受け継ぎ、新しいチャレンジもしている。

 

二本松の奥も深い。

 

「玉家玉振堂」

所在地 福島・二本松竹田1-77

最寄り駅 JR二本松駅から歩約20分

 

            

 

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絶滅級⁉串だんご&あわ饅頭😎会津編

 

城下町・会津若松には歴史のある和菓子屋が多い。

 

鶴ヶ城若松城)が遠くに見える「日本一本店」もその一つ。

 

創業は明治時代末期。

 

「餅、赤飯、和菓子」と染め抜かれた日除けがどこか懐かしい。

餅菓子を中心に饅頭類も手づくり。下町感。

 

会津若松市内でも知る人ぞ知る隠れた「いぶし銀」でもある。

 

私の狙いは串あんだんご

 

ひと昔前はいいだんご屋さんが多かったが、時代の流れか、ちゃんとした串あんだんごを作り続けている店が少なくなった。

もう一つの狙いはあわ饅頭

 

江戸時代末期に「災難にあわないように」という願いを込めて作られた、会津地方独特の饅頭。

 

粟(あわ)ともち米を混ぜた柔らかな生地の饅頭で、中はこしあんが一般的。

 

円蔵寺のある柳津町が本場だが、日本一本店の「あわまんじゅう」はお世辞抜きに柳津に負けていない。

 

高くて美味いは当たり前、安くて美味いは店主のポリシーがなければ、とても維持できない。

 

ゆえに、コスパを大事にするこの店は私の好きな和菓子屋さんでもある。

★本日のキラ星たち

 串あんだんご 1本110円(税込み)

 あわまんじゅう 1個100円(同)

 おはぎ(つぶあん)1個110円(同)

 

【センターは?】

串あんだんごvsあわまんじゅう

私にとっては究極の選択となった。

 

どちらも思いの強いあんこ菓子。

 

なので、センターにはこの二品を置いた。二者択二(笑)。

 

〈串あんだんご〉

ごらんの通り、しっとりとした自家製こしあん上新粉餅をしっかりと包み込んでいる。

 

昔からこしあん一種類だけ。

 

ひと串3個。昔より少し小ぶりになったが、この時代に手間暇のかかる作業を続け、しかも安く提供する。頭が下がる。

小豆は北海道産を使用(製餡所から生餡を仕入れて、直焚きしている)。砂糖は上白糖。塩も少し加えているようだ。

 

京都のおまん屋に負けない、会津の庶民的なだんご。

 

●味わい

こしあんのしっとりとした、甘さを抑えた、湧き水のようなピュアな味わいにホッとする。

ひと口で持っていかれそうになる。

 

私にとっては東京・日暮里「羽二重団子」に負けないコスパを考えると、こちらの方がよりシンパシーを感じる。

 

上新粉のだんごも柔らかい。

添加物などは使っていないので、賞味期限が「今日明日中」

 

なので、ホテルに戻ってからゆっくり味わった。

今ではひょっとしてシーラカンス並みの希少な串あんだんご

 

3代目が板場で作業中だったのでお話は聞けなかったが、女将さんの物腰もキュンとくるものがある。

 

素晴らしき、会津串あんだんご文化。  

 

そう心の中で叫びたくなった(あんこバカの叫び?)。

 

〈あわまんじゅう〉

皮はクチナシで黄色く着色していて、これが柳津系あわ饅頭の特徴でもある。

 

「日本一本店」のものは形がやや俵型。

大きさも気持ち大き目。

 

うっすらとあんこが透けて見える。そそられる。

 

●味わい

粟餅(あわもち)の柔らかさともっちり感がすごい。それに粒々感。

 

菓子楊枝で切るのもむずかしい。手にくっつく。

中はこしあんで、しっとりと仕上げられていて、甘さが控えめ。

 

粟餅との相性が絶妙で、ひと口でふわりと昇天したくなる(表現がヘンかな?)

日持ちしないのが難点といえば難点で、それゆえに個人的な好みで言えば、饅頭界の隠れ横綱ではないかと思う。

 

浅草「梅園」の「あわぜんざい」をそのまま饅頭にしたような、極上の美味さだと表現したくなる(ほめすぎ? いやいやとつぶやきたくなる)。

あわ独特の食感とえぐみが絶妙にとろけ合う。

 

ほんのりといい塩気が余韻として残る。

 

【サイドはおはぎ(つぶあん)】

おはぎはこの時期のみの販売。

 

つぶあん一種類しか作っていないので売り切れも早い。

円形で大きさは5センチ強くらいだが、つぶあんがいい小倉色で、半殺しのもち米とよく合っている。

 

渋抜きを抑えた素朴なつぶあん。やや甘め。

 

塩気もほんのり。

 

賞味期限が「できれば今日中」だったので、夜、ホテルで味わう。

夜のおはぎも悪くない。

 

田舎の素朴な、しかし、しっかり作られたおはぎ。

熱いお茶を飲みながら、会津の和菓子文化の奥行きを感じる。

 

こういうお店が時代悪に染まらずに、未来へとつながって行ってほしい。

 

正座して、ごちそうさま。

 

「日本一本店」

所在地 福島・会津若松市栄町7-21

最寄り駅 JR磐越西線会津若松駅から歩くと約20~30分

 

 

           



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東北編😎茶屋の「つきたてあんこ餅」

 

あんこ旅で久しぶりにみちのく会津へ。

 

会津は東北でも有数の和菓子のメッカだが、あんこ餅など餅の美味いエリアでもある。

野口英世記念館近くの「清作茶屋」もその一つ。2代以上続く歴史のある一軒家茶屋。古民家づくりが期待感を高める。

 

早朝9時にクルマを止めると、まだオープン前だった。

ここで朝めし代わりに「つきたてもち」を堪能することにした。

磐梯山猪苗代湖を眺めながら、あんこ、ずんだきなこの3種類を食べる。

 

ある種ぜいたくの極み。

一個200円(税込み)。一皿だと3個で同600円なり。

 

老夫婦が営む老舗の茶屋で、手打ちそばやソースカツ丼もメニューにある。

 

「食事はまだ用意できねけど、餅ならすぐ作れっからなし」と会津弁。

 

狙いはあんこ餅なので、ウエルカムな展開。

 

【センターは?】

つきたて餅と自家製あんこの素朴な合体

 

思ったよりも一個の大きさがある。それが3種類。

 

センターにはもちろん「あんこ餅」を選んだ。

柔らかなつぶあんで、その上につきたて餅がほんわかと乗っている。

 

あんこの濃い小豆色の海から湯気が立ち上っている。

 

たまらない光景。

 

箸を付けると、餅はしっかり搗(つ)かれていて、テカリのあるつぶあんが絡みついてくる。

愛の絡み合い(笑)。

 

時間を置くと、すぐ餅が硬くなる。

地場のもち米のピュアな風味とつぶあんの控えめな甘さが素朴で、塩気がほんのり。

 

 

つぶあん北海道産あずきを使用、上白糖と塩で味を調えている。

 

塩の効き方が絶妙。

 

箸休めはきゅうりとキャベツの漬物。これも自家製。

「清作茶屋」の屋号は野口英世の幼名「清作」から取ったそう。これを知る人は意外に少ない。

 

野口英世もひょっとしてあんこ餅で育った・・・そう思うと、甘いあんこの海が世界へと広がっていく気がする。

 

【セカンドは?】

ずんだ餅

・きなこ餅

 

たまたま「ずんだもち あります」と手書き表記されていた。この季節だけの餅。餡ラッキー。

「私が搗(つ)いてるんです。この辺りではずんだではなく、ぬたって言ってんです」

 

ずんだは仙台地方の呼び方で、会津(一部山形)では「ぬた」だそう。

 

ご高齢の女将が地場産の枝豆を毎日、搗いている。店主がそれを仕上げている。

 

美味くないはずがない。

あんこよりも塩気がやや強めで、それがずんだの風味をより濃くしている。

 

こちらも餅との相性がとてもいい。

 

きなこ餅はさらに塩気が強めで、地場のきなこの風味がよりくっきりと広がってくる。

きな粉好きにはたまらない味わい。

 

「清作茶屋」

所在地 福島・猪苗代町大字三ツ和字波波帰目

最寄り駅 磐越西線翁島駅から約2600メートル