週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

近江町市場のワオ🤩「おはぎ&豆大福」

 

あんこ王国の一角、金沢は京都と似ていて、上菓子屋と生菓子屋(まんじゅう&餅菓子など)が混在している。

金沢和菓子文化を作った戦国武将・前田利家は茶人としても知られ、京都の街造りをした豊臣秀吉と競うように(ある種ライバル関係でもあったようだ)和菓子にも力を入れた。

 

加賀藩江戸屋敷(現在の東大赤門はその遺産)近くで極上の煉り羊羹を作り続けた「藤むら」(金沢から移転、約10年前に廃業)などは、個人的にはその最たるものだったと思う。

 

余計なうんちくを書いてしまった(汗)。

 

はてさて・・・金沢の台所・近江町市場には魚介類以外に、あんこ好きなら素通りできない、不思議な和菓子屋さんが今も存在している。

それが「和菓子処 たけはな」である。

 

おはぎや大福類、うぐいす餅、まき餅、いがら餅など朝生菓子(朝作ってその日のうちに食べる)がずらりと並べられ、一見すると露天商のようにも見える。

さかのぼって10年以上前、私はたまたまここで豆大福を買い、その大きさと美味さにほっぺが落ちそうになった(オーバーかな?😁)。

 

場所がわかりづらく、一度などはすでに店じまいした後だったこともある。

 

今回は久しぶりの訪問となった。

 

当時と同じように、ややご高齢の女性が売り子をしていた。わお~。

「和菓子処 たけはな」のノボリがあまりにレトロで、昭和の心意気まで伝わって来た。

 

・今回ゲットした生菓子

 えんどう大福(豆大福)130円

 おはぎ        120円

 うぐいす餅      140円

 ささげ餅       140円

 

【センターはお・は・ぎ】

つぶあんの美味さにしびれる

 

前回書いた戸水屋の渋抜きしていない、あまりに素朴なあんことは別種の、ある意味では京都「今西軒」に近い、みずみずしいつぶあんで、日持ちがしない(添加物不使用)。

なので、早朝に買って、その日の夕方、北陸新幹線で自宅に帰ってから賞味した。

 

大きさは小さくはないが、昔よりも少し小さくなった気がする(錯覚か?)。

 

艶のあるきれいなあずき色で、お茶を用意してから手を伸ばす。

中の餅(地場のもち米)は半殺し(半搗き)で、頬張ったとたん、つぶあんのピュアな風味と小豆の柔らかい皮の感触。ヘンな表現だが、歯の喜びまで感じる。

 

つぶあんの鮮度がたまらない。うめえーという言葉が漏れる。

 

ほんのりと塩気が後追いしてくる。

どんどん唾液が出てくる感覚。

 

「小豆は北海道産で、砂糖はザラメです」

 

あまりに美味しかったので、その後取材を開始し、ようやくたどり着いた本店「竹端商店(たけはなしょうてん)」初代の女将さんからほんの少しだけ話を伺うことができた。

 

「和菓子処たけはな」の創業は「60年前くらいになるかな。私がお嫁に来て40年になるからねえ。今の社長は2代目になります」

調べてみたら、近江町市場店は販売所で、少し離れたところに製造所があり、暗いうちからそこで職人さんたちが手作業で生菓子を作っていることがわかった。

 

なので、近江町市場店は店舗というより直売所と言った方がいいかもしれない。

 

私が行った時も常連客やリピーターが多いようで、早朝から飛ぶように売れていた。

 

そこだけある種の不思議な空間、市場内の和菓子処、すごいね😂

 

【サイドは柔らかな豆大福】

「えんどう大福」と表記してあったが、一般的には豆大福。

 

大きさは昔ほどの驚きはない(?)が、餅の柔らかさと中のつぶあんのほどよい甘さがドンピシャ好みで、「これはふくよかさといい、余韻の広がりといい、上質のあんこだ!」と唸りたくなった。

えんどう豆はやや固めで塩気が強め。

 

餅粉たっぷりの柔らかな餅、テカリのあるつぶあんとの強弱のバランスがとてもいい。

 

【サードはうぐいす餅】

これは昔見たうぐいす餅と同じようにデカい。青きなこがたっぷりかかり、求肥餅に包まれたこしあんは塩気が強めで、なめらか。北海道産小豆のきれいな風味が広がる。

どちらかというと、つぶあんの方が好みだが、このこしあんも自家製でいい余韻が残る。

 

金沢の和菓子文化の底力、三歩さがって、参りました😍。

 

・おまけです

この他にこの時期だけの生菓子「ささげ餅」(140円)も金沢だけの昔からの郷土餅菓子で、表面にびっしり張り付いているささげ(小豆よりも一回り大きい)に驚かされる。見た目のインパクト。中は緑色の餅で、食べると、ささげは塩味で、甘さがない。なので、あんこではないが、珍しいので、ご紹介しました。

 

「和菓子処 たけはな(竹端商店)」

所在地 石川・金沢市近江市場内

最寄り駅 JR金沢駅から歩くと約15分

 

             



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんこの衝撃🤩戸水屋「まきだんご」

 

金沢あんこ旅で出会った和菓子の中で、もっとも驚かされたのが、寺町にある「戸水屋(とみずや)」の「まきだんご」です。

 

まきだんごって何だ?

 

何はともあれ、写真を見ていただきたい。

素朴なつぶしあんがびっしり! 見た目は大きなおはぎだが、中身が柔らかな濃いよもぎだんご(餅)で、その破壊的(?)な存在感に圧倒される。

 

金沢のユニークな郷土生菓子で、明治時代以前から存在しているらしい(諸説ある)。

 

ほかにも同じものを作っている和菓子屋さんもあるが、戸水屋のものは「素朴と言う意味では別格の朝生菓子です。ベタなあんこ好きの方なら感動すると思います。すぐ売り切れるので早めに行った方がいいですよ」

 

タネを明かすと、宿泊先でたまたま知り合った和菓子ツウのおばさんからの情報。

「戸水屋」の店構え自体が明治・大正時代から抜け出てきたような、まるでモノクロの世界で、奥の板場からまんじゅうや餅を蒸かす水蒸気が見え、そこから昔ながらの生菓子職人の息遣いまでが伝わってくるよう。

2~4人の先客(多分地元の客)。注文を受けてから作っているのがわかった。

 

なので、待ち時間がかなり長い。焦ってはいけない。

頑固な朝生菓子の店で、20分ほどで、「お待たせしました」と若女将さん。

 

手には経木(きょうぎ)に包まれた大きなおはぎ、いやまきだんご。それをていねいに包装紙でくるんでいる。

 

開放的だが、やや暗めの受け渡し場所で、期待感がどんどん膨らむのがわかった。

 

・今回ゲットしたいぶし銀

 まきだんご2個(税込み170円×2)

 くずまんじゅう 1個(同150円)

 酒まんじゅう 1個(同150円)

 

【本日のセンター】

「原始つぶしあん!」と叫びたくなったまきだんご

 

途中でお姿を見せた5代目店主は取りつく島もない対応で、それは忙しく働く、いい職人さん特有の沈黙と納得した。好感。

 

店の創業は嘉永元年(1848年)と言われているが、「古い資料がないので、はっきりとはわからない」と率直に話してくれたが、逆算すると、江戸時代末期創業なのは間違いない。

 

午前中に何とかゲットできたが、賞味期限が「本日中、それも早めに」なので、午後3時すぎにいったんホテルに戻り、いい木の香りの経木を開く。

大きさは目測で8~9センチ×6センチくらいか。おはぎとほとんど同じ外見だが、形はむしろ三角形に近い。

 

手に乗せると、ずしりと重い。つぶしあんの厚み

驚くべきことに底の方がすでにかすかに乾きかけていた。ヒビまで見えている。

菓子楊枝(かしようじ)で何とか切ると、中から天然力満開のよもぎだんご(餅)が現れた。

 

●お味はどうか?

渋切りをまったくしていない? 北海道産小豆を「昔から代々伝わっている炊き方」(秘伝?)で炊き上げているので、小豆本来のえぐみのようなものまで舌に伝わってくる。時間が止まったまま。

 

塩気が強め。甘さは押さえていて、ほっこりと昔ながらのあんこが口の中にあふれるように広がる。

洗練ではない、どこか懐かしい、小豆の包容力にしばし目をつむりたくなる。

 

「学校で習ったわけでもない。昔からずっと続いているやり方をそのままやっているだけ。それだけ。詳しいことは企業秘密です」

何とかほんの少しだけ5代目の話を伺うことができたが、これ以上聞くのは野暮だと教えられた気がする。黙って味わえ。聞きたがりの反省ザル(笑)。

 

つぶしあんの存在感があまりに圧倒的なので、中のよもぎ餅(米粉なのでだんご?)の印象は強くないが、濃いよもぎの風味が後からほんのり来る。

 

・あんポイントメモ 

まきだんごの由来はよくわからない。金沢では昔から主に端午の節句に食べる習わしがあるが、北陸は寒さで笹が育たないので、粽(ちまき)が作れず、真木(まき)の葉で代用したとか、あんこで巻くのでまきだんごになったとか、諸説ある。店によっては「まき餅」とも呼ぶ。

 

【セカンドはくずまんじゅう】

戸水屋のくずまんじゅうは本葛を使わず、馬鈴薯(ジャガイモ)のデンプンをストレートに使っている。へえ~という作り方。

「昔からうちは馬鈴薯です。昔はみんなこうでした。だから冷やして食べるのではなく、蒸かし立てを、温かいうちに味わってほしい」

 

くずまんじゅうを温かいまま食べたほうがうまい、という食べ方は初めて。

 

本来なら店先で食べたいところだが、そうもいかず、食べたのは約4時間後。もちろん冷やさずに。

オーバーに言うと、こんにゃくのような食感で、中は塩気の強いつぶしあん。

 

みずみずしいプルプルのくずまんじゅうをイメージすると、期待外れかもしれないが、何だか忘れかけていた素朴が口の中で広がる感覚。

 

窓からの光が差し込むと、厚めのくず皮は水晶のような屈折を見せ、中の赤茶色のつぶしあんとよく合っていると思う。

 

・サードは酒まんじゅう

糀(こうじ)の香りがふわりと来る、あまりに素朴な味わい。中のつぶしあんはまきだんごと同じものだと思う。なので、個人的にはまきだんごほどの感動は来なかった。

「戸水屋」

所在地 石川・金沢市寺町2-3-1

最寄り駅 循環バス寺町2丁目下車歩3~4分

※JR金沢駅から歩くと約30~40分

 

            



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金沢の朝ナマ😍くず餅&五色生菓子

 

久しぶりの金沢あんこ旅

 

3日間滞在して、足が棒になるほど歩き回ったが、さすが京都の次に位置するあんこのメッカ。

 

上菓子屋さんから饅頭屋さんまで、京都とよく似た奥の深さとタイムスリップ感を感じて、私のあんこセンサーはピコピコ鳴り通しでした。

 

で、「金沢あんこの巻」として、しばらくお付き合いください。

 

たまたま本日は和菓子の日。和菓子の中でも今回は特に「朝生(あさなま)」のあんこ菓子を取り上げたいと思います。

つまり「朝作ったものをその日のうちに、それも早めに食べる」。和菓子の原点の一つ。

 

個人的にはこれが一番うまい食べ方ではないかと思います。

 

では、よーい、スタート!

 

犀川大橋(さいかわおおはし)のほとりに暖簾を下げる小さな、いぶし銀のような和菓子屋さんと導かれるように出会った😁。

「生菓子商 谷屋」と書かれた白地の暖簾が、店主の心意気をにじませている。

明治35年(1902年)創業。店主は4代目。

 

いいあんこの気配にワクワクしながらゲットしたのは次の3品。

 

くず餅(こしあん入り) 税込み148円

五色(ごしき)生菓子から2種類

 山(いがら餅) 同148円

 里(蒸し羊羹) 同148円

 

【本日のセンター】

絶妙な本葛とこしあん、手摘みの笹に驚かされる

 

狭いが、ちょっとしたスペースがあったので、「ここで食べてもいいですか?」と女将さんに聞いてみた。

 

「どうぞどうぞ」

 

安いお客なのに、ほうじ茶まで出してくれた。あんこの女神様・・・。

くず餅は京都などと同じ本葛(ほんくず)を使った、くず桜とほとんど同じもので、下に敷いてあるのが桜葉ではなく笹だった(関東のくず餅は小麦粉を使用していて金沢や関西とは形も味わいも違う)。

くず餅の透明感と中のこしあんは甘さを抑えていて、塩気はほとんどない。

 

北海道産小豆を使った自家製のこしあんで、とてもなめらか。

たまたま4代目店主がいらしたので、あれこれ尋ねてみた。

 

「朝生は私たちにとっては当たり前のことで、朝早く、暗いうちから起きて、毎日手作業で生菓子づくりをしてますよ。昔からずっとこの生活です」

 

下に敷いてある笹も「夫婦で山に入って取ってくる。金沢はたまに熊も出るんですよ」と聞いて、店主のお顔をまじまじと見てしまった。

 

小豆の風味が絶妙で、みずみずしさを感じるこしあん

あんこ炊きのとき、渋切り(あく抜き)を4~5回する、と聞いて驚かされた(フツーは1回かせいぜい2回程度)。

 

渋切りをしすぎると、豆本来の素朴な風味が薄くなる。

 

その分、透明感が研ぎ澄まされると思う。

 

ギリギリのところで毎日勝負していることがわかる。

 

その成果をあんこ狂が無造作に店の中で味わう。

 

本葛のピュアなプルプル感が主役のこしあんをキラキラと押し上げている(そんな感じ)。

 

金沢のあんこ文化、京都に負けていない。そう思うのだった。

 

【サイドは五色生菓子】

日持ち(時間持ち?)しないので、悲しいかな胃袋も一つしかないので、五色生菓子のうち、涙の選択で2種類を選んだ(早朝からあんこ菓子を食べ続けているので、これがギリギリでした。残念無念)。

まずは「山」こしあんを山芋を加えた求肥餅で包み、ごらんの通り、表面にはクチナシで黄色く着色した蒸かし立てのもち米が張り付いている。なので「いがら餅」とも言うようだ。

しっかりとした求肥餅で、中のこしあんとの相性が素朴に絶妙。

もち米は石川産で、米粒の食感が味わいに色どりを付けている。

 

五色生菓子は2代目藩主・前田利長の時代からお祝い事に欠かせない生菓子だそう。

 

「里」は丸い形の蒸し羊羹で、食感はむっちりと柔らかな弾力に富んでいて、こしあんの風味がすっと入ってくる。

甘さはかなり控えめで、上質な蒸し羊羹だと実感する。

いい時間がゆっくりと流れる。素朴で気さくな4代目が金沢生菓子文化の体現者の一人だとジワリと思い知らされるのだった。

 

「生菓子商 谷屋」

所在地 金沢市野町2-1-1

最寄り駅 金沢駅から歩くと約30分(バス便が便利)

 

             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎屋で見つけた😁よもぎ「きなこ餅」

 

虎屋本店、と書くと、多分ほとんどの人があの「赤坂とらや」(京都にルーツ)を思い浮かべると思う。

 

だが、上州群馬では藤岡市の中心街にある「虎屋本店」だと思う(少なくとも藤岡周辺では)。

何を隠そう、私もひょっとして赤坂虎屋と何らかの関係があるかもしれない、と思っていた。

 

実のところ、「虎屋」の屋号の和菓子屋さんは全国的にも意外に多い。

 

私自身もこれまでのあんこ旅で「虎屋」「とらや」の看板を掲げた和菓子屋さんに数多く出会っている。

 

調べてみたら、虎は縁起のいい動物なので、「伊勢屋」などと同じように、江戸時代から人気の屋号の一つだったことがわかる(特に明治以降に増えているようだ)。

 

「赤坂とらや」は歴史的にも格的にも、その頂点に位置していることになる。

 

で、本題。

 

藤岡の虎屋本店は創業が明治38年(1905年)。現在4代目。

古いが立派な店構え。2階にはしゃれた「虎屋カフェ」まである。

 

【今週のセンター】

クールなよもぎ餅とこしあん、季節限定の「きなこ餅」

 

店内は明るく、「鬼瓦最中」や豆大福、煉り羊羹、上生菓子まで伝統と進取の気性に満ちた和菓子が並んでいる。

 

いい和菓子職人がいる気配。

 

目の散歩を楽しんでいると、一か所で目が吸い寄せられた。

漆塗りの木皿に納まって「きなこ餅」(1個税込み86円)と表記されている。あんこセンサーがときめいた。

 

直径40ミリほどの小ぶりなまんまるいよもぎで、上にきな粉が降りかかっていた。

 

いい景色。上生菓子、と表現したくなる美しさ。

 

見入っていると、「今日は初日で、たった今、出来上がったばかりなんですよ」(女性スタッフ)

 

ラッキー❣ 作りたてが一番うまい。

 

「2階のカフェでこれを食べれませんか?」

 

ダメもとで頼んでみたら、女将さんらしきお方と相談したようで、笑みを浮かべながら「大丈夫です。2階にお持ちします」。あんこの女神かも。

前置きが長すぎた。

 

よもぎ餅は今がシーズンで、私は素朴な、土の匂いのするよもぎが大好きだが、この「きなこ餅」は見た目も味わいも少々違っていた。

 

洗練されたよもぎ餅。

 

菓子楊枝で口に運ぶと、柔らかな餅が上質で、旬のよもぎの香りが鼻腔に抜けていく。

きな粉が全体の味わいを邪魔しない。それ以上にプラスアルファのそよ風を加えていると感じる。

 

何よりも中のこしあんのみずみずしさ

オーバーかもしれないが、舌が持っていかれそうになった。

 

藤紫色の、粒子を感じるようななめらかな舌触りで、ほんのりと塩気がある。

 

これは見事なあんこだ、とふた口めで感じ入った。

 

自家製のこしあんで、北海道十勝産(きたろまん?)、砂糖はグラニュー糖を使用しているようだ。

 

京都の上生菓子にも通じるような、雑味のないピュアなこしあん

 

和菓子屋巡りのひそかな楽しみの一つは、こうした定番商品ではない、季節の生菓子と出会えること。

 

とても美味しかったので、手土産として2個、鬼瓦最中(5種類のあんこ)と一緒にゲットした。約4時間後に自宅でも堪能した。

最後になったが、たまたまいらっしゃった3代目女将さんに「赤坂とらや」との関係を聞いたら、「全く関係ないんですよ。うちは初代がリヤカーを引いてお菓子を売り歩いていたと聞いてます。それが出発点ですから」とか。

 

老舗和菓子屋のルーツをたどると、こういうケースが意外に多い。

 

宿場町としても栄えたローカルの藤岡に、「あんこの宝石」がしっかりと小さな光を放っていること、また一ついい発見があった。

 

【サイドは「季節のあんみつ」】

虎屋カフェで「季節のあんみつ」(黒蜜付き 税込み770円)も賞味した。

 

季節のフルーツは砂糖漬けの桃(メニュー写真にはいちごのままだった)。

 

中央にこしあんがどっかと座っていて、白玉、みかん、桃、それに渋皮煮の栗が丸ごと一個こしあんを囲む星座のように配列してあった。

面白いのは求肥餅も赤えんどう豆もない。

 

代わりに蜜煮した大粒小豆。渋皮煮の栗も自家製で、美味しい。

寒天は小さくサイコロ切りされていて、シャキッとしたいい歯ごたえ。

 

こしあんはきなこ餅のこしあんと同じだと思うが、少し塩気が多い気がした。

それが舌に心地よい。

 

きなこ餅ほどの感動はなかったが、上質のあんみつだと思う。

 

「虎屋本店」

所在地 群馬・藤岡市藤岡138

最寄り駅 JR八高線群馬肱岡駅から歩やく5~6分

 

            



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会津の上菓子😋よもぎ餅と小法師

 

【今週のセンター】

季節限定よもぎの「葵餅(あおいもち)」

東北の城下町・会津若松の老舗和菓子店「上菓子司 會津葵(あいづあおい)」で見つけたのがよもぎの「葵餅(あおいもち)」

よもぎの季節限定なので、新緑の季節に会津のあんこ旅を決行したのがラッキーだったかもしれない。

 

本物の竹皮包みを解くと、よもぎ餅と表面にかかったきな粉の香りが鼻腔をくすぐる。

いい匂いの三重奏って感じかな。

 

ひと包み(6個入り)税込850円。

 

よもぎ入りの求肥餅で、菓子ようじでいただくと、中に蜜煮した大納言小豆が1~2粒入っていて、柔らかな食感とともに小豆のふくよかな風味が小さく広がってきた。たまんない×3。

大納言小豆は北海道産だが、全体的にかなり凝ったつくり。

 

ちなみに通年商品の「葵餅」は黒糖と会津産くるみ入り。

 

もち粉をベースにした食感はどこか信玄餅のように感じたが、「材料も作り方も違います」(店主)。

 

店は会津鶴ヶ城の北出丸入り口にあり、蔵造りの重厚な店構え。

 

「上菓子司 會津葵」の文字に入った長暖簾が会津のプライドを感じさせる。

当主は代々二字屋治郎左衛門(現在10代目)を名乗り、祖先は足利尊氏までさかのぼるという。

 

二字屋の屋号は足利尊氏の家紋(丸に二)から来ているのではないか。

 

江戸時代は會津藩御用の茶問屋で、和菓子屋に転じてからは現在の店主で2代目になるようだ。

 

この店の売れ筋は「かすてあん」で、自家製のこしあんをカステラ種で包んで焼き上げたもの。

 

その意味では進取の気性に富んだ創作和菓子にも意欲的に取り組んでいると思う。

 

よもぎの葵餅は甘すぎないのが個人的にはいい。

 

添加物は使用していないので、賞味期限は約3日間と短い。

暑かったので、冷蔵庫で30分ほど冷やしてから食べたら、ホットな舌によもぎときな粉と大納言小豆がとろけ合って、美味さが少し増した気がした。

 

お茶もいいが、個人的にはコーヒーが合うと思う。

 

【裏センターは石衣の小法師】

こちらもこの店のオリジナル。会津起き上がり小法師をあんこ菓子にしたもの。

凝った八角形の紙箱に、小法師を形どったこしあんと白あんの石衣(いしごろも)が計15個、一つひとつていねいに和紙に包まれて納まっている。

中央付近に本物の赤い起き上がり小法師が1体にっこり微笑んでいる。思わず「かわいいね」と言葉が出かかる。

 

こしあんは北海道産小豆、白あんは北海道産白いんげんを炊いて、小麦粉やでんぷんも加えて固めに仕上げている。

白あんには卵の黄身も加えているようだ。

 

表面はすり蜜でコーティングしてあり、食感はどこか京都の松露(しょうろ)を思わせるが、松露よりも素朴で固め。どこか野暮ったい。

 

店主によると、「関東は石衣、関西は松露ですが、石衣の方が硬いです」とか。

 

京都の洗練されたはんなりではなく、会津の頑固な硬さを連想させる。

形の凝り具合。会津駄菓子のような素朴な味わい。

 

小豆と白いんげんの風味が「私もここにいるよ」と遠慮がちにつぶやいているよう。

起き上がり小法師の起源は悲運の戦国武将・蒲生氏郷までたどり着く(諸説ある)。

 

転んでも何度でも起き上がる(ダルマと同じ)。

 

会津の上菓子屋のあんこ菓子、地味だが、どこかシンパシーを覚えてしまった。

 

「會津葵本店」所在地

福島・会津若松市追手まちー18

最寄り駅 JR会津若松駅からバス「鶴ヶ城北口」下車

 

               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「儀平うすかわ饅頭」あんこの衝撃

 

東京FM(全国ネット)のホラン千秋さんの番組にゲスト出演(2回放送)したことで、この週刊あんこのアクセス数も爆上がりした(びっくりしてます)。

 

「一過性の甘い現象だよ」(辛口の友人)と自戒してますが、地味~なあんこ菓子の世界にキラキラした光がちょっぴり当たったようで、あんこ編集長としてはうれしい限りです。涙が数滴・・・。

 

改めましてホラン千秋さんと番組スタッフの皆さん、聴いていただいた方に感謝いたします。

 

今回は時間の関係で放送されなかったあんこ菓子を少しだけ取り上げたいと思います。

 

その一つが和歌山・串本町「儀平うすかわ饅頭」

明治26年(1893年)創業の和菓子屋さんで、「いい仕事してますねえ」とつぶやきたくなる酒饅頭ですが、特にあんこ(こしあん)の美味さが「半端ないって!」のレベルだと思います。もちろん個人的な評価です。

 

楽天ソレドコで「47都道府県あんこ菓子」でこれをピックアップしなかったことをちょっぴり後悔したくらいです。

srdk.rakuten.jp

とにかく見ていただきたい。

吹雪饅頭のような皮の薄さといびつな形(串本の橋杭岩をイメージしたとか)、中の上質なあんこの予感に目が吸い込まれませんか?

 

2代目儀平(ぎへい)さんがへそ曲がりなお方で、「甘くないあんこがあってもいいじゃないか」と作り上げたもので、今では南紀地方を代表する和菓子になっています。

 

へその曲がり方が私の好みです。

 

・今回お取り寄せしたキラ星

儀平うすかわ饅頭 10入り×2箱 3000円

※送料は別途



〈試食レポート〉

形が一個一個微妙に違う。すべて手作りというのがすごい。

薄い皮には甘酒を使っているが、糀の香りはほのか~に程度。岡山の「大手まんぢゅう」に近い印象。

 

薄皮のシルクのようなつやつや感が迫ってくる。

驚くべきは中のこしあん

 

藤色に近いきれいな色味(店では薄墨色と表現している)で、甘さがかなり抑えられている。「甘くない」ではなく「甘さが儚い(はかない)」と表現したくなるあまりに淡い甘さ。

北海道産小豆をじっくりと炊いて、そこに白いんげんも加えている。

 

色が薄いのはそのせいだろう。

 

しっとりとした食感で、舌の先から脳天に向かって、すうーっと溶けていく感覚がたまらない。吐息が出かかる。

これまでいろんな饅頭を食べてきたが、田舎饅頭とは対極にある、上用の織部饅頭にも通じるようなピュアな余韻がしばらく残る(素朴な田舎饅頭も大好き)。塩気はない。

 

気が付いたら、皿の上から3個消えていた。あっという間。

編集部のあちこちから手が伸び、30分後には1箱きれいになっていた。

 

胃にもたれない、のも実感としてこの饅頭の特徴だと思う。

 

宅急便で届いたら、賞味期限は翌日まで。もちろん添加物などは使用していない。

 

和菓子の奥は信じられないほど深い。

 

〈あんこのつぶやき〉

放送前の段階で私がピックアップしたあんこ菓子は以下の通りです。放送されたもの、されなかったものもありますが、あくまでも個人的に「めっちゃうま~」と感動したものです。今回はほんの一部ですが、ご参考までに。

www.tfm.co.jp

●たまたまキラ星10品

・松本家「水ようかん」(福島・会津若松

・志”満ん草餅「あん入り」(東京・向島

うさぎや「バナナ大福」(山梨・韮崎)

・小島屋「勘兵衛饅頭」(栃木・大田原)

・新鶴本店「塩羊羹」(長野・下諏訪)

・絹与「今宵の友」(愛知・豊橋

・筒井松月「あやめ団子」(愛知・名古屋)

・儀平本店「うすかわ饅頭」(和歌山・串本町

・粟餅所澤屋「あわもち」(京都・北野白梅町

・菊壽堂義信「高麗餅」(大阪・高麗橋

 ※令和に試食したものの中から、あんこの山の一角です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラジオの反応と丸角きんつば対決

 

東京FM系(全国ネット)でホラン千秋さんの番組に呼ばれ、先日その一回目(5月15日)がラジオとラジコから流れたが、友人知人、週刊あんこの読者の方などからビックリするほどの反応があったので、ちょっとだけご紹介したい。

 

「ホランさんの魅力の前で、さとう編集長のメロメロがひどすぎる(笑)。2回目はちゃんとやってくださいよ」(広告代理店の友人)

 

「声がひっくり返ってましたよ(笑)。京都の老舗料理屋の女将が『富山の羊羹なんて聞いたことがない』といかにも京都のイケず口で言ってましたよ」(出版社OB)

「すごくよかったです。ホランさんの反応がとても美味そうだったので、番組で紹介していた枠流し杢目羊羹を早速お取り寄せしました」(某局の知人)

 

ほめ殺しから罵詈雑言までさまざま。不思議なことに男の反応は塩気がきつく、女性の反応は涙が出そうなほど甘めで、しっかりと聴いてくれたことがわかるものが多かった。

 

中には「ラジオに出たくらいでエラそうな口きくな」というものもあった。

 

2回目の放送は22日(日)正午~。塩気どころか唐辛子入りの反応がいっぱい来るんだろうな(笑)。なので、所詮はあんジイのたわごと、ゆる~くお楽しみください。

www.tfm.co.jp

と書いたところで、今週は番組でもご紹介する予定の「きんつば」をセンターに据えたい。

 

題して、マルか角かきんつば対決のスタート!

 

【今週のセンター】

信州・松本市で見つけた江戸の丸いきんつば

 

創業が明治44年(1911年)の「和洋菓子 翁堂本店(おきなどうほんてん)」。松本にはいい和菓子屋さんが多いが、ここもその一つ。

別の場所で茶房や洋食屋も営んでいて、松本市では有名店でもある。

 

松本城の南東部に位置するこの本店はモダンだが、ひっそりとした佇まいで、和菓子好きには隠れたあんこスポットだと思う。

現在3代目。和菓子と洋菓子の二刀流の店でもある。

 

ここでたまたま見つけたのがきんつば(1個 税込み180円)だった。残り数個・・・。

一目で引き付けられてしまった。

 

丸いきんつばで、江戸時代の形(刀のつばの形)そのまま。

 

手焼きしているのがわかるまだら状の焦げ目といい、ごま油で焼いている、香ばしい匂いといい、江戸日本橋タイムスリップして抜け出てきたよう。

 

中のあんこが透けて見える。その存在感。

これは日本橋榮太樓の「名代金鍔」とほとんど変わらないもの。

 

まさか松本でかような、シーラカンスのような江戸きんつばに出会えるとは・・・。

 

無添加なので、日持ちは短い。

 

翌日、自宅に戻ってからの賞味となった。

 

●試食タイム

大きさは左右約50ミリ、厚さは約25ミリ。大きめ。

ごま油の香りが遠い江戸を思わせる。

 

皮の薄さと焼きムラが素晴らしい。

 

中のあんこは濃い紫色のつぶあんで、たっぷりと詰まっていた。

このつぶしあんがふくよかで、口に入れたとたん、そよ風となった。

 

北海道産小豆の柔らかな風味がストレートに伝わってくる。

 

甘さはかなり抑えてあり、塩気がジワリ。

寒天の存在を感じない。

 

日本橋榮太樓や信州飯田・和泉庄とたぶん同じ製法だと思う。

 

渋切りを極力抑え、小豆本来の美味パワーを押し出しているのがわかった。

う・め・え。つい声が漏れるほど。

 

きんつばもともと京都で生まれ、皮は米粉。それが東海道中山道経由で江戸日本橋に入り、皮を小麦粉に変え、独自の進化を遂げたようだ。

 

京都では銀鍔(ぎんつば)、それが江戸に入ると、金鍔(きんつばと江戸好みの名称に変わっていった。

 

どちらも刀のつばの形(丸形)。

 

翁堂本店の「きんつば」は京都ではなく江戸の流れを汲んでいるようだ。

 

【サイドは徳太楼の角型きんつば

私の中で東京・浅草「徳太楼」はきんつば界の最高峰に位置する。

ごらんのとおり、翁堂本店の江戸きんつばとはあまりに対照的。

丸ではなく角形。

 

手焼きなのに焼き色は見事になく、白色の美しい外観が特徴。

 

中は艶やかなつぶあんがつなぎの寒天と見事に融合していて、甘さがさらに控えめ。

明治に入って江戸が東京になると、きんつばの形は丸から角に変わり、今ではきんつばと言えば角形が主流になっている。

 

明治36年創業の徳太楼のきんつばはその最先端だったのではないか。

 

向島の粋筋にもファンが多い。

 

野暮(やぼ)と粋(いき)で言えば、こちらは粋だとも言える。

 

北海道産小豆の柔らかな粒の食感が楽しめる。

あんこ好き、特に小豆好きにはたまらない味わいだと思う。

 

新聞記者時代、向島の料亭ではじめてこの徳太楼のきんつばと出会ったとき、女将さんが「のきんつばはお酒との相性もいいのよ。それを楽しむお客さんもいるのよ」と教えてくれた。

 

その通りだった(私の好みは純米酒の辛口とのマリアージュです)。

 

どちらもすべて手作りなので、江戸と明治以降・・・両方を食べ比べるのも面白いかもしれない。

 

【所在地】

翁堂本店 長野・松本市大手4-3-13

徳太楼 東京・台東区浅草3-36-2