週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

超レア「4種水ようかん」食べ比べ

 

編集長「関東も梅雨入りでうっとおしいね。で、今回は暑気払い。とってもレアな水ようかんを見つけたよ。あん子くんも驚くぞ」

 

あん子「編集長の方がうっとおしいわよ。4種類の水ようかんね。和菓子屋さんでタイプの違う水ようかんを手作りしてるのは確かに珍しいわね」

 

編集長「水ようかん4兄弟、いや4姉妹とネーミングしたくなるよ。北海道十勝産小豆が2種類、こしあん小倉あん。それに北海道産手亡(てぼう豆)。面白いのハーフ&ハーフ(2色)で、水ようかん好きの私も初めて見る代物だよ」

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あん子竹皮の箱入りというのも凝ってるわね。もっとも箱代がプラスされてるようだけど(笑)」

 

編集長「北関東にこんな老舗があったことに実は驚いてるんだ。創業が昭和初期。現在3代目。栃木・小山周辺では知られた店だった。特に生どら焼きが人気で、和菓子ばかりでなく洋菓子にも力を入れているんだ。なので、正確には和洋菓子屋さん」

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あん子「早く店名を教えてよ。じれったいわ」

 

編集長「それは後で(笑)。面白いのは全体的に塩気が強いこと。しかも絶妙な塩気で、ぷるるんとした舌触りと口の中でスーッと溶ける感触がとてもいい。レベルの高さを否応なく感じさせられる。とにかくローカルを超えてると思うよ。京都とは違う上質・・・こういう店と出会えてうれしいよ、ううう」

 

あん子「泣かない泣かない。わざとらしい(笑)。ねえ、早く珍しい4タイプの水ようかんの食レポしてよ。さわやかに、ね。イッツ・ショータイム!」

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【今週のセンター】

小倉水ようかんvs2色水ようかん

 

今回購入したのは竹皮箱入り「涼菓選」(4種類6個詰)。オンザロックならぬオンザ麦茶を用意し、小倉と2色を食べる前に定番の水ようかんを食べてみた。

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まず岩塩のような塩気が口の中でほわわんと広がり、なめらかな舌ざわりに「ほお~」となる。色も美しい。

 

こしあんと寒天の配合が見事で、「作り方は独自の製法」と秘伝の匂いがする。3代目は忙しくて直接話を聞けなかったが、確かに塩気となめらかさが上質。羽衣のような余韻がしばらく続く。

 

私的にはこれは塩水ようかん、と言いたくなる。

 

で、センターにした小倉水ようかんへ。

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底の方に大粒の小豆がひそんでいた。

 

塩気と小豆のつぶつぶ感が絶妙な素朴で、定番の水ようかんの洗練とはひと味違った。

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小豆好きにはたまらない。

 

小豆の濃い風味が舌の上で踊るよう。甘さも濃い。

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使用している砂糖は数種類を使い分けているようだが、これは多分、白ザラメ。

 

ハーフ&ハーフ「2色水ようかん」は定番の洗練された水ようかんと手亡の白が斜め半分ずつでアートな水ようかんに仕上がっている。

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洋菓子職人でもある3代目のユニークな発想だと思う。

 

手亡(てぼう)はえぐみがなくきれいな味わいで、食べ進むと、皮のままの手亡豆が4~5粒ほど入っていた。水ようかんとのコラボ、この凝り方。

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なめらかな洗練と2色の塩気。

 

それぞれが主張し合わずに融合している。

 

きれいな余韻。

 

手亡豆の存在感が少し勝っている気がする。

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2種類を食べてみて、個人的な好みを言えば小倉だが、個性が強い分、好き嫌いがあるかもしれない。

 

その分、ハーフ&ハーフ(2色)の方が飽きが来ないかも。

 

もちろん体調などにもよるが、どちらもレベルが高いので、これはこれで十二分に楽しめるはずだ。

 

【今週のサブ】

水ようかん手亡水ようかん

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塩気が強いのがここの特徴だが、水ようかんのみずみずしさは筆舌に尽くしがたい。

 

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とにかくスーッと溶けていく、雑味のない余韻がとてもいい。

 

名店の水ようかんに劣らないレベルと技術力だと思う。それにオリジナリティー

 

白い「手亡水ようかん」は存在自体がレアだと思う。

 

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手亡豆(てぼうまめ)の雑味を極力抑えているので、コアなファンには物足りないかもしれない。

 

なめらかさと柔らかな豆の食感。

 

広がる絶妙な塩気。冷たい美味

 

コロナ禍とうっとおしい梅雨の時期に、まさかの水ようかん4種類を堪能したこと。

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全国的には多分無名だが、こんなにいい仕事をしている店が北関東にあること。

 

あんこの神様はローカルにも確かにいる。

 

・今回の購入

竹皮箱入り「涼菓選」(4種類 6個入り 税込み1571円)

 

・山本屋菓子店 

所在地 栃木・小山市下石塚352-1

 

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「ヘビー級あんこ食パン」元祖食べる

 

編集長「今回は神戸からお取り寄せ。元祖あんこ入り食パンと言えばわかるやろ? コロナがなかったら、神戸に行って食べたかったけどな、この状況じゃ仕方あらへん」

 

あん子「バカにしないでよ(笑)。有名なトミーズのあん食でしょ? 私も一度食べたかった伝説の食パンね。でも、頼むからヘンな関西弁やめてよ」

 

編集長「3種類、全部取り寄せた。定番の『あん食』(1.5斤)、抹茶あん食(1斤)、あんバター食(1斤)。どないや、すごいやろ?」

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あん子「そのドヤ顔、じゃま。パンの街・神戸が生んだ、ある意味歴史的な傑作よね。トミーズの創業は1977年(昭和52年)だけど、食パンに初めてあんこを練り込んだのはバブル時代のようよ。当時はそんな発想、なかったでしょ?」

 

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編集長「まあね。でも編集長の単なる推測だけど、名古屋の小倉トーストを少しはヒントにしたんじゃないかな。大正昭和にかけて名古屋で誕生した曲芸的あんこ乗せトースト! 我ながらいい表現だ」

 

あん子「どこが? 力が入り過ぎよ。あんこをマーブル状に練り込むのと上に乗せるのはずいぶん違うと思うけど」

 

編集長「今回、実物を実際に見て、トミーズのあん食はあんこの量が半端じゃない。今ではあんこの食パンを作るベーカリーが全国的に増えているけど、存在感が明らかに違う。ま、この分野の大ボスと言ったところかな」

 

あん子「例えがヘンよ。王様が近い気がする・・・うんちくはもういいわ。早く食レポしてよ。船が出るわよ~」

 

【今週のセンター】

ド迫力「あん食」(1.5斤 税込み700円)

 

重さを量ったら、950グラムもあった。ほぼ1キロ。手のひらに持つと、ずしりと重力を感じた。デカい(汗)。

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きつね色の素朴な焼き色。一部あんこのはみ出た外観。実際に目の前に置くと、すごすぎ。横から斜めから底からカメラで撮る。

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一般的な市販の食パンは大ざっぱに見て、500~600グラム(1.5斤換算)なので、練り込まれたあんこの量は約400グラム前後となる(アバウトですみません)。

 

あんこはこしあんではなく粒あん

 

燕三条出身の翻訳家・ライターみい子さんから頂いた素晴らしい切れ味のパンナイフで切ると、密度の十分にあるミルキーな生地と練り込まれた小倉色の粒あんが渦巻き状に現れた。

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おおお、宇宙誕生か。そんな冗談すら言いたくなる。

 

きれいな渦巻きではなく、粒あんが微妙に片寄っている

 

このくらいのズレは相手があんこでは仕方がない。むしろ好ましいかも。

 

コーヒーを淹れ、牛乳も用意し、そのまま⇒マーガリンを付ける⇒軽くトーストするで3パターンで試食してみた。

 

到着したその日には「そのまま」を食べる。

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食パンの生地には生クリームが練り込まれているようで、ふっくら感となめらかなもっちり感がほのほのと来る。

 

粒あん北海道産小豆を使用、自家製ではなく、製餡所に特注したもののようだ。

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かなり甘めで、濃厚で素朴なあんこ。小豆の風味が強め。

 

多分、砂糖は上白糖。塩気もほんのり。

 

それがしっとりしたパン生地と絶妙に合っている。

 

こしあんバージョンも作って欲しい気がするが、現在売られている3種類はすべて粒あん

 

マーガリンを塗ってみると、私の好みにさらに近くなった。マーガリンの塩気が全体に深みを与えるのが心地よい。

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あんことパンとマーガリはよく合う。

 

コーヒーとの相性もいいが、冷たい牛乳も昭和・平成的で胸キュンとなる(古い?)。

 

翌日、トーストしたら、プラスαの魅力が出て、これがハマった。表面のカリカリサクサク感とパン生地の香ばしさがたまらない。

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マーガリンを塗ると、またひと味変化球が加わったようで、思わず目を閉じたくなる。

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この場合は牛乳よりもコーヒーが合うと思う。

 

大ボスというより、この官能的な迫力は全盛時のティナ・ターナービヨンセが近いかもしれない(笑)。

 

しばしの間、勝手に妄想を楽しむ。

 

【今週のサブ】

抹茶あん食(右)vsあんバター食(左)

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どちらも1斤ほどで、あん食よりも小ぶり(税込み700円)。あん食がヒット商品になり、その流れの中で、抹茶あん食を作り、さらにあんバター食をラインナップに加わえた。

 

あん食3兄弟(あるいは3姉妹)。

 

重さは抹茶あん食が約568グラム。あんバター食が約549グラム。サイズを考えてもかなり重い。

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どちらも粒あんが練り込まれている。

 

個人的に特に気に入ったのは抹茶あん食

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まず渦巻き状の抹茶と粒あんと生地のコラボが美しい。さらによく見ると丹波産黒豆も練り込まれていて、これはアートでもあると思う。

 

そのままでも美味いが、トーストすると、抹茶と粒あんに黒豆独特の風味が加わり、口の中が複雑な香ばしさであふれそうになる。ホンマやで。

 

マーガリンを塗ってみたら、塩気が加わり美味が小爆発を起こすよう(そんな感じです)。

 

気温が30度くらいあったので、これには冷たい牛乳が心地よかった。

 

あんバター食はバターの塩気が効いていて、トーストしてもかなりイケた。

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個人的にだが、こちらはコーヒーの方が合うと思う。

 

残りは一枚ずつ厚めに切って、ラップで包んで、冷凍室に入れておく。同社によると、1か月は保存できるそう。

 

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コロナ禍とうっとおしい天気の下、しばらくはあん食との甘いデートを楽しめそうだ。

 

〈トミーズ魚崎本店〉

兵庫・神戸市東灘区魚崎南町4-2-46

 

・今回のお取り寄せ

あん食 1.5斤一本 税込み700円

抹茶あん食(黒豆入り)1斤同700円

あんバター食 1斤         同700円

 合計(送料は別料金)  2100円

 

 

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羊羹のシーラカンス?白い「ほんねり」

 

編集長「最近、羊羹(ようかん)がドライフルーツを練り込んだり、チョコレートとコラボしたりと、新しい和スイーツとして注目を浴びてるけど、今回取り上げるのは、その原点みたいな練り羊羹だよ。あん子も驚くぞ」

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あん子「また始まった。秩父小鹿野古代羊羹でしょ? 昔、編集長に連れられて、『太田甘池堂(おおたかんちどう)』をわざわざ訪問したでしょ。創業が享保3年(1803年)とかで、9代目がちょうどいらして、突然の訪問なのに、編集長と話が弾んだでしょ、忘れたの?

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編集長「今は息子さんの10代目が昔ながらの製法を含めて秘伝を引き継いでいるよ。それが本煉(ほんねり)でね。面白いことに白インゲン豆の本煉(ほんねり)なんだ」

 

あん子「へえー、小豆の本煉じゃないんだ。とらやの本煉とは違うわね。イメージが狂っちゃうわ。古代というのもなんか変だわ」

 

編集長「まあまあ落ち着け(笑)。2代目が江戸・日本橋に出て、煉り羊羹づくりを学んだようだよ。当時、日本橋幕府御用達の鈴木越後や紅谷志津摩(べにやしづま)船橋屋織江(佐賀町)、金沢丹後(上野)などが競って、煉り羊羹づくりに励んでいたんだよ。日本橋は羊羹の聖地だったと言える。今で言うと、高級和スイーツだったからね」

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あん子「みんな今と同じ小豆の煉り羊羹でしょ?」

 

編集長「まあね。でも京都に言わせると、煉り羊羹も京都が発祥地だと言うんだ。それまでは羊羹と言えば蒸し羊羹で、寒天を加えた煉り羊羹も発祥は江戸・日本橋ではなく京都で、桃山時代豊臣秀吉が鶴屋(その後駿河屋)に作らせたと言うんだ。それがどうもインゲン豆か白小豆を使い、食紅で紅色に着色し、珍しもの好きの秀吉が大いに喜んだらしい。それが事実だとすると、白いんげんの本煉こそが源流ということになる」

 

あん子江戸か京都か、ああめんどくさいわ。本題に戻って、その江戸時代から続く白い本煉を賞味しましょ」

 

編集長「では羊羹のシーラカンスとご対面しよう。コスパもいい。正座して拝むように」

 

あん子「編集長には足を向けるわ(笑)」

 

【今週のセンター】

古代秩父煉羊羹「本煉(ほんねり)」

一棹(税込み980円)

 

サイズは煉り羊羹の本流サイズで、長さ180ミリ、幅50ミリ、厚さ28ミリ。重さは約380グラム。

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北海道産インゲン豆を濾し、赤鍋で寒天と砂糖を合わせて、砂糖焼けしないように注意深くじっくりと煮詰め、冷まし、固め、パッケージに流し込んでいるようだ。

 

作り方は代々の秘伝

 

9代目によると、どうやら砂糖は上白糖を使用しているようだ。

 

佐賀・小城市「村岡総本舗」や福島・二本松「玉嶋屋」のような竹皮包みではないのが少し残念だが、作り立ての状態を維持するという意味では、これもありと思う。

 

なので、蜜が滴るような、テカリが十分にある。

 

光が差し込むと、独特の美しさが出てくる。

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口に含むと、なめらかな密度とねっとり感がまず来る。

 

ほどよい固さ。

 

思ったほど甘すぎない。ほどよいすっきり感。

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インゲン豆のきれいな風味が口の中に広がる。

 

目を閉じると、その余韻が遠い江戸へとつながっていくよう。

 

江戸人の舌の確かさに思いを致したくなる。

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9代目と話したときに、「村岡総本舗のような、表面が糖化した煉り羊羹バージョンも作って欲しいです」と言うと、「そういう方も確かにいらっしゃいますね。外にさらしておけば、表面が糖化しますよ。楽しみ方はいろいろあります」と白い歯を見せた。

 

なので、切り分けてから2日ほど空気にさらしてみた。

 

それがこれ。

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細かいひびがいい具合で、表面のじゃりっとした歯触りがとてもいい。中はねっとり。

 

個人的には私の好みはこちら。

 

ドリップで淹れたコーヒーともよく合う。

 

2代目は日本橋「甘林堂」で羊羹づくりを学んだそうだが、秩父小鹿野「甘池堂」の屋号を掲げたとき、遠い江戸日本橋に向かって、手を合わせたに違いない(想像だが)。

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小鹿野は現在はすっかり寂れて、人通りも少ないが、当時は西秩父の中心地だった。江戸時代から続く小鹿野歌舞伎も現存している。

 

その地で日本橋の煉り羊羹を作り続けているのはすごいこと。

 

時空を超えて、あんこの神様がほほえんでいる、と思う。

 

【今週のサブ】

柚子(ゆず)vs田舎(小豆)

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「柚子」は本煉に柚子を加えたもの。ゆずの風味がそよ風のようで、これは絶妙な味わい。ほんの少し色が濃い気がする(今回は詰合せを買ったので、田舎=小豆とともに3種類を堪能した)。

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甘さが控えめで、まったり感と口どけがとてもいい。

 

添加物などはむろんない。

 

田舎(小豆)は「夜の梅」で、とらやなどのものよりもどこか素朴。こちらも甘さが控えめで、小豆のつぶつぶが口の中でふくよかに広がる感触は悪くない。

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「田舎」と名付けるよりも、「小倉」とか「あずき」命名した方が個人的にはいいと思うが、いかがだろう? 洗練された味わい(田舎自体は大好きです)。

 

秩父10代にわたって暖簾を守り続けているとはね。

 

地道な仕事ぶりに、陰ながら応援したくなる。

 

所在地 埼玉・秩父郡小鹿野町小鹿野263

 

〈今回の購入〉

古代秩父煉羊羹 1棹+5個(3種類)入り

税込み2420円なり

 

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カラフル飴屋の絶品もなか

 

編集長「コロナ禍の中で虹を見た気分だよ」

 

あん子「また始まった(笑)。小雨の日に奇跡が起きたって大騒ぎしてた老舗飴屋さんの話でしょ? カラフルな手づくり飴(あめ)に囲まれて、すごい最中(もなか)を見つけたのよね。でも飴屋さんで最中ってちょっとヘンじゃない?」

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編集長「まあまあ聞きなさい。ほおーとなるきれいな手づくり飴が30種類ほど。1袋100円~300円という安さ。実は数年前に買ったあんこ飴を不意に思い出して、買いに行ったら、季節商品なので3月いっぱいで終えてます、と言われてね。がっかり」

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あん子「ま、日頃の行いの結果ね。でも拾う神・・・編集長の場合は拾うあんこ神(笑)」

 

編集長「ふと見ると、ガラスケースの中から最中がひょっこり手を挙げたんだよ。カラフルな飴の星座の奥にいぶし銀の最中が、いたんだよ」

 

あん子「その手は食わない(笑)。でも、確かにいぶし銀ね」

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編集長「皮だねから中の粒あんまでちょっと驚くレベルだよ。もちろんあんこも手づくり北海道産大納言小豆と水飴、寒天の配合が素晴らしい」

 

あん子「私も正直、びっくりしたわ。ただの飴屋さんじゃない。塩加減が本当に絶妙。こういう宝石箱のような希少な和菓子屋さんもあるから日本も捨てたもんじゃない。虹ってこころざしという意味もあったのね」

 

編集長「あん子もようやくわかってきたね。これまで随分と名店の最中を食べてきたけど、コスパも含めると、意外性という意味でこの最中はある種の別格だと思う。アーティストに例えると、ローリン・ヒルかな」

 

あん子「また外した(笑)。前置きはいいから早くレポートしてよ」

 

【今週のセンター】

いぶし銀「ニシダが最中」

     (税込み1個90円 5個化粧箱入り550円)

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まず皮だねのしっかり感と香ばしさが上質。名店といわれる最中のなかには掴んだ瞬間、破れ落ちるものもあるが、この皮だねにはその心配はない。

 

隙のない丁寧な作り。

 

サイズは縦60ミリ、横50ミリ、厚さ25ミリ。重さは59グラム。

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中のあんこは濃厚なテカリを発し、噛んだ瞬間、煮詰められた大納言小豆のねっとりとした甘さが口いっぱいに広がる。

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塩が強めで、それがあんこの美味さを引き立ている、と思う。

 

塩の使い方が名人芸だと思う。

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この店の基本、ピュアな水飴が寒天とタッグを組んで、大納言あんこに魔法をかけている・・・そんな感じかな。

 

飴屋のあんことは思えない、こだわりの強い、濃密なあんこで、店主の職人としての意識の高さを思わせる。

 

今回はシャレた化粧箱入り(5個 税込み550円)を買ったが、バラ売りもしてくれる。

 

 

・おまけの現地レポート

 

埼玉県立熊谷女子高近く。埼玉では有名な和菓子チェーン「梅林堂」の看板も見える。今回の舞台はそこではない。

 

「古伝 ニシダ飴」の看板がどこか遠い江戸・熊谷宿の匂いがする。懐かしい匂い。

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創業が昭和3年(1928年)、現在3代目。店の外観と白地の暖簾が民芸的で、敷居の高さを感じない。

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垢ぬけしたいい店構えだと思う。

 

和菓子の中で「飴」は歴史が古く、戦国時代にはポルトガル経由で有平糖(あるへいとう)が入ってきている。

 

「ニシダ飴」のルーツが京都にあるのか、江戸にあるのかは不明だが、店内に並んだ華やかな色や形の飴を見ると、はんなりと小粋、伝統と新しさを感じる。

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3代目が進取の気性に富んだ職人さんで、抹茶生チョコまで手づくりしている。守備範囲が広い。

 

残念ながら店主は不在で話を聞けなかったが、店頭にいる美人奥さんが「昔からの作り方を守っていて、そこにオリジナルを加えているようです。秘伝です(笑)」。

 

飴の砂糖は基本的にラニュー糖を使用しているようだ。

 

「ニシダが最中」の他に熊谷の伝統菓子「五家寶(ごかぼう)」(1袋 税込み200円)ユニークな飴「らっきょう飴」(1袋 同200円)、「さいだー飴」(同 200円)、「しょうが飴」(同100円)を買った。

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添加物は使わない、伝統的な製法がよくわかる、手の温もりのする味わいで、まるで駄菓子屋のような安さを考えると、この店のポリシーが見えてくる。

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一つ一つ丁寧なパッケージにも店主の心意気が伝わってくる。

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・おまけのおまけ

 

編集長「この店に初めて行ったのは実は5年ほど前なんだよ。そのときは昭和の飴屋さんと固定観念で見てたので、まさか最中がこんなにすごいものとは思ってなかったんだ」

 

あん子「編集長失格ね(笑)。でも、今回、改めて、すごい店だとわかったんだから許してあげてもいいわよ。今では和菓子の中で飴の立ち位置は決して高くはないけど、この店を知って、私も考えを改めなくっちゃ」

 

編集長「だから虹を見たって言ったでしょ?」

 

あん子「NiziUもいいけど、ここの虹もかわいい(笑)。歴史的にも飴は和菓子の本流の一つだともわかったわ」

 

編集長「ニシダはニジダに通じる」

 

あん子「ダジャレ合戦はやめましょ。コロナ禍の日本にも早く虹がかかって欲しいなあ。ところで、今何時?」

 

★「ニシダの飴」

所在地 埼玉・熊谷市中西1-1-16

最寄駅 JR高崎線熊谷駅から歩約12~15分

 

 

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小さな巨人、水郷の「赤白大福」

 

編集長「あん友の情報で、茨城の水郷・稲敷市郊外に行ってきたよ、ふふふ」

 

あん子「もったいぶっちゃって(笑)。すごい大福見つけたんでしょ? バレバレよ」

 

編集長「大福好きとしては、意外過ぎる大福で、赤(つぶあん白(こしあん2種類しか作ってない。以前はせんべいその他も作ってたようだけど、今は大福一本に切り替えたようだ。すごいことだと思うよ」

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あん子「編集長の好きな豆大福じゃないんだ(笑)。で、どこが意外なのよ」

 

編集長小さいんだよ。見た目は普通の大福の半分くらい。大きい大福を想像していたので、ホーッとなったよ。原宿瑞穂なら4分の1程度じゃないかな」

 

あん子土日は行列なんでしょ。でもなんでそんなに人気なの?」

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編集長「まず餅のこだわりが半端じゃない。地場の玄米(もち米)を加工直前に精米し、蒸籠で蒸かし、それからじっくり搗(つ)いている。餅の鮮度ときめの細やかさが、食べた瞬間にわかる。なので『絹大福』とも表記しているんだ。あんこの美味さもレベルを超えている」

 

あん子「じれったい。説明はいいから、早く食べましょ」

 

【今週のセンター】

絹大福「赤(つぶあん)」vs「白(こしあん)」

 

餅粉がたっぷりかかった、見るからに柔らかそうな神々しいお姿を見てほしい。

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右側が赤(つぶあん)、赤というよりほのかなピンク色。左側が白(こしあん)。ホントに小ぶり

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計ってみたらサイズはどちらも約40ミリ、高さは約30ミリ。

 

重さは赤が47グラム、白が46グラム。

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手包みなので、微妙な誤差があるようだ。

 

確かに只者ではない雰囲気がある。

 

アーティストに例えると、アリアナ・グランデかな(うーん、ハズしてる?)。

 

白は絹色の白だが、赤はほんのりとピンク色。

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指で押すと、凛とした柔らかさで、指の形が数秒してから戻ってくる。

 

苦労して何とか包丁で切ると、中のあんこがどちらもいい色。

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赤のつぶあんは渋抜きを押さえ気味。甘さもほどよい。いい小豆の風味がほわほわと口の中に広がる。塩気はあまり感じない。

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大福界の小さな巨人、と言いたくなる。

 

白のこしあんはみずみずしい。しっとり感となめらかな舌触りが上質。

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どちらかと言うと、私の好みは白で、餅も気持ちこちらの方がきれいな風味を感じた。

 

餅に鮮度を感じることは少ないが、ここの餅は鮮度を感じる。

 

大福は6月いっぱいでおしまいです」(3代目)

 

大福シーズンは秋から6月までとか。草大福もあるが、残念ながらGWで終わり。今回はゲットできなかった。

 

・現地レポートです

トラックの行きかう国道125号線沿いに「水郷名物 こうのの大福」の昭和な看板が見える。平日なので思ったよりも混んでいなかったが、絶え間なくマイカーのお客がやってくる。

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「ここはキケン‼ 停車禁止」

 

の立て看板が面白い。これがなければ通り過ぎてしまいそうなほど、地味系の店構え。

 

道路の対面に駐車場があり、そこにクルマを止め、店内に入ると、おばさんスタッフが2~3人で客対応をしていた。広くない。店の奥に板場があるようで、そこで手作業で大福作りをしているようだ。

 

セピア色の昭和にタイムスリップしたような気分。

 

事前に電話予約しておいた1パック(赤3個、白3個入り 税込み570円)を受け取る。コロナでバラ売り(1個95円)は止めているとか。

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商品は大福だけだが、なぜか隅っこに素朴な「芋甘なっとう」(250グラム 税込み350円)が置いてあったので、これもついでにゲットした。

 

店主は不在だったが、おばさんスタッフとコロナ対策のビニールガード越しに話していると、「あっ、社長が来ました。3代目です」。

 

で、お邪魔にならない程度に取材した。ご高齢の3代目。

 

創業は明治時代で「明治45年くらいです。元々は駄菓子屋で、それから饅頭屋になり、大福を作り始めたのは40年くらい前から」。

 

玄米からの作り方(秘伝?)を詳しく話してくれたが、「大丈夫ですよ。教えたって、同じものは作れないからね」と笑った。

 

あまりに専門的だったので、詳細は割愛いたします(笑)。

 

あんこは製餡所から特注の生餡仕入れ、赤鍋でつぶあんこしあんを独自の方法で練り上げているようだ。砂糖は聞き逃したが、おそらく上白糖だと思う。

 

小さな巨人の裏に店主のこだわりが詰まっている。

 

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あん子「私も白(こしあん)の方が気に入ったわ。夕方なので少し餅が固くなりかけていたのが好感ポイントでもあるわ。ヘンなものが入ってない証拠。餅とあんこが絶妙ね。もう少し大きいともっといいけど、ま、小粒なのも売りなのかもね」

 

編集長「6月いっぱいで大福づくりは終わり。その後は、饅頭に切り替えるらしいよ。夏は大福には適していないと考えているようだ。大福に懸ける3代目のゆるぎない自信も印象的だった」

 

あん子「私は芋甘なっとうも気に入ったわ。水郷の土の匂いがするような、素朴さとねっとりとした甘さと歯触りが悪くない」

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編集長「川越の老舗和菓子屋「道灌(どうかん)」の甘藷納豆ほどの洗練ではなく、田舎づくりの良さだね。ここで作ってるのか、ひょっとして別作りかもね」

 

あん子「茨城のさつまいもは特に美味しいのよ。紅はるかじゃないかな。また買ってきてよ」

 

「こうの菓子店」

所在地 茨城・稲敷市堀之内358-1

 

 

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バラ園後の超絶「大栗どら焼き」

 

編集長「今回は偶然見つけた和菓子屋さんをピックアップしたい」

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あん子「伊奈バラ園でトゲに刺された後の話ね(笑)。いい店構えで『とらや』の看板が目に飛び込んできたんでしょ?」

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編集長「皇室御用達の京都⇒赤坂とらやがあまりに有名だけど、別の系譜の虎屋もあるんだよ。吉祥寺虎屋とか地方にもいくつかある。ここもその一つかな」

 

あん子「はいはい、うんちくはいいから、先行きましょ。船が出ちゃうわよ」

 

編集長上生菓子から豆大福、草餅、だんごまでいいラインアップで、よだれが出ちゃいそうになったよ(笑)」

 

あん子「笑えない。で?」

 

編集長「この店の目玉の一つがどら焼きだとわかった。大栗どら焼き、生どら焼きなどが4種類ほど。チャレンジ精神も感じた。1個だけ売れ残っていた草餅も加えて、4種のどら焼きを買い込み、コーヒーを淹れて、賞味してみた」

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あん子「で、今回のセンターは?」

 

編集長「ジャーン、少し迷ったけど、大栗どら焼き! 店主はかなりの和菓子職人だと思う。大胆で繊細、ちょっと感動したよ。粒あんの美味さも上質だった」

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あん子「私は手焼きのどら皮のしっとりとした美味さにオオオとなったわ」

 

編集長「渋いところに感動するね。でもまあ、すべてに手抜きがない、いい和菓子屋さんなのは私が保証する」

 

あん子「編集長の保証なんてノミのあくびみたいなものよ。何の価値もない(笑)」

 

編集長「例えがひどすぎる・・・」

 

【今週のセンター】

大栗どら焼き(税別 240円)

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見た目は東京・阿佐ヶ谷「うさぎやを思い起こさせる。

 

きつね色の見事な焼き色。どら焼き4種の中で大きさも重量も十二分にある。量ったら約105グラム。

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直径は約93ミリほど。厚さは約35ミリほど。中央の盛り上がり。端はしっかりと閉じられている。丁寧な仕事ぶりがわかる。

 

包丁で切ってみると、蜜煮した国産大栗はきれいで、お月様のようにデカい。

 

その周りをつややかな粒あんが囲んでいて、上質な粒あんだとわかる。

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しっとり感のあるどら皮の美味さにちょっと驚く。

 

内側はふくよかな粒あんが少し滲み込んでいて、きりっとした大栗が崩れ落ちると同時に、小豆の風味と栗の風味が絡み、どら皮と駆け落ちするように喉の奥へと消えていく。そんな感じ。例えがヘンかな?

 

つまりは飛び切り絶妙な美味さ。

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甘さがほどよい。

 

個人的にはあんこ狂なので、あと1ミリほど粒あんが多いとうれしいが、全体のバランスを考えると、これがベストかもしれない。(当たり前だろ)

 

その意味では「伊奈ローズちゃん(手焼きどら焼き)」(同 140円)は侮れない。

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伊奈のキャラクターを焼き印した一回り小さいどら焼きだが、どら皮と粒あんの美味さがよりシンプルにわかる。

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皮のしっとり感と蜜の滲み方がより強調されていて、粒あんの柔らかな上質が口の中でススと蕩けていく。雑味がない。

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ローズちゃんの陰の意外な発見、と言いたくなった。

 

店は「9年になります」(若女将さん)とかで、2012年にこの地で旗揚げしたようだ。なので店の歴史は浅いが、和菓子職人としてはかなりのレベルだと思う。

 

埼玉・北本「とらや」で修業後に暖簾分けしたようだ。

 

ちらりと顔を見せた若い店主はいい職人にありがちな、愛想のなさがむしろ好感。素材へのこだわり方も半端ではない。

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小豆は北海道産。大納言小豆も使用。餡作りの砂糖は「商品によって鬼ザラメと赤ザラメを使い分け。上白糖やグラニュー糖は使わない」とか。キレとコクが違う、というのがその理由のようだ。

 

自家製あんこも売っている。

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で、着地。きれいなバラの陰にはいい和菓子屋さんがある。

 

【今週のサブ】

生どら焼き2種、モンブラン餡&コーヒー餡

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どちらも税別165円。白餡に生クリームブレンド、それぞれイタリア栗の無農薬ベースト(右)とコーヒー(左)を練り込んでいる。

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伝統と新しいチャレンジ。

 

個人的にはつぶ餡の上質が滲んだどら焼きの方が好みだが、こうした試みは好感。

 

編集長「こうした技術のしっかりした和菓子屋さんに出会うとうれしくなるよ。今度は売り切れていた豆大福とだんごを買いに行きたいね。草餅も丁寧に作られていて、美味かったよ」

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あん子「私に隠れて食べてたわね。餅菓子好きの編集長のせこいところよ」

 

編集長「最後の一個だったし、粒あんだったし・・・」

 

あん子「理由になってない。月に代わってお仕置きよ(笑)」

 

編集長「トゲが出てきた。でもギャグが古い気がする・・・」

 

所在地 埼玉・北足立郡伊奈町学園2-177ー1

最寄駅 伊奈線ニューシャトル羽貫駅から歩約6分

 

 

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十一代の麦羊羹&小ナスあん

 

編集長「つつじのきれいな館林にすごい和菓子屋さんがあること、知ってるかな?」

 

あん子「すごいの意味がわかんない。歴史の古さ? チャレンジ精神? ひょっとして三桝家総本舗(みますやそうほんぽ)のこと?」

 

編集長「知ってた? 今の店主が11代目で、創業が江戸時代初期寛永年間という首都圏でも指折りの超老舗だよ」

 

あん子「それがどうしたの? 古さだけなら京都にかなわないわよ」

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編集長「まあまあ。ここの麦羊羹がすごいんだ。煉り羊羹に麦こがし(こうせん)を加えた羊羹で、他にはない代物。羊羹ルネッサンスの文化・文政年間に作り上げた可能性もある。羊羹好きにはたまらない香ばしさだよ。今回はこれをセンターにしたい」

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あん子「もう一つあるでしょ? チャレンジというか、不思議系の甘納豆。小茄子(こなす)の砂糖漬け。豆類とかさつまいもならわかるけど、茄子(なす)をそのまま使うなんて、フツーはありえないわ」

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編集長「見方を変えると、小ナスのあんこと言えなくもない。百年くらいの歴史があるようだよ」

 

あん子「信じられないチャレンジ力ね。聞いたことがない」

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編集長「すごいって意味、わかった? 上皇后のご実家もこの館林だよ。女性宇宙飛行士・向井千秋さんもここの出。いい和菓子屋はいい土壌が必要なんだよ」

 

あん子「はいはい、能書きはいいから、早くどんな味か教えてよ」

 

 

【今週のセンター】

麦羊羹と小茄子の砂糖漬け

 

ちょっとだけ堅い話になるが、貴重だった砂糖が庶民にまで行き渡るようになったのは江戸中期以降と言われる。

 

徳川吉宗が8代将軍の座に就き、それまで外国から金銀並みの高値で輸入していた砂糖の国産化を推し進め、それがやがて庶民も味わえるあんこ文化へと花開いていく。現在と変わらないまんじゅうや大福餅、練り羊羹などがスイーツのスターダムにのし上がってくる。

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三桝家総本舗の7代目が麦落雁(むぎらくがん)」を作ったのは文政元年(1818年)頃。この地の特産品、大麦を自家焙煎し、砂糖を加えて練り上げ、それを菓子の木型に打ち込んだもの。京都の上菓子にも通じる干菓子の一種。今もこの店の看板商品でもある。

 

麦羊羹はその延長線上で誕生したと思う。

 

一番小さいサイズを1棹(220グラム 税込み550円)買い求め、自宅で賞味してみた。

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昔からの銀紙に包まれた羊羹で、見た目も味わいも練り羊羹そのもの。

 

包丁で切ると、黒々としたテカリに蜜がにじんでいる。

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甘さを抑えた本格的な練り羊羹で、ひと味違うのは麦こがしの香ばしさが口の中に広がること。

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北海道産小豆で餡作り、寒天で煉り上げ、そこに麦こがしを加えるという作業がひと手間かかる。

 

黒糖羊羹に近い食感だが、それよりもやさしい味わい。

 

幸せ感マックス。

 

小茄子の砂糖漬けは「里みやげ」(3個入り 同450円)という商品名。

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地場の小茄子を使用、秘伝の製法で砂糖漬けにしたもの。

 

包丁で切ると、琥珀色のあんこが詰まったように見える。

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ねっとりとした食感の中にかすかに茄子の香りが甘く漂う。

 

形は雪をかぶった小茄子だが、茄子のイメージを超えている。

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これって発見では?

 

地味だが、そのアイデア力に脱帽したくなる。

 

 

【今週のサブ】

栗甘納豆のきれいな余韻

 

大粒の国産栗を蜜煮し、上白糖でまぶしたもの。1パック5粒入り(同 450円)。

 

これもこの店の職人さんの腕がわかる代物。

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きれいな、ピュアな黄色がいい歯ごたえとともに、口の中でスーッと溶けていく。

 

その感触が上質だと思う。

 

栗羊羹も食べたかったが、予算の関係で今回は我慢。

 

GWは「じっと我慢ウイーク」となってしまった。

 

所在地 「三の丸本店」群馬・館林市本町3-9-5

最寄駅 東武伊勢崎線館林駅から歩約15分

 

 

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