猛暑とステイホームでストレスがマックス状態。
かの東京・東十条「草月」の黒糖どら焼きに負けない、栗入り黒糖どら焼きが栃木・宇都宮にあると聞いて、あんこ旅に出かけることにした。
あんこの女神が耳元で「おめえなあ、お取り寄せもいいけど、コロナにも負けず頑張っているお店にも足を延ばしてほしいよ」とささやいたことも一つのきっかけ。まさか?
あん・あんこ・あんこーる🌈🐾⛅
和菓子のガイドブックにも出ていたので、ひょっとして隠れ名店かもしれない。
政治的なGo Toトラブルなどより自腹のGo To ANKOに限る。
「お菓子処 雅洞(がとう)」の「みかも山」(1個 税込み173円)がその栗入り黒糖どら焼きだが、創業が昭和48年という雰囲気のある瀟洒な店構えの白暖簾をくぐると、和装の女将さんがさり気なく迎えてくれた。
確かに草月の「黒松」とよく似た虎皮の外見で、ガイドブック(「ニッポン全国 和菓子の食べある記」)の著者が絶賛しているのがなるほどと思える栗入り黒糖どら焼きだった。
それを買い求め、店の雰囲気がいいので、ついつい女将さんとあれこれ話し込むうちに、「夏のこの時期は『小豆ぷりん』と『水ようかん』がおいしいですよ」とそのお口から洩れた。偶然がいい出会いとなることもある。
どちらも生なので、賞味期限がせいぜい明日まで。冷蔵庫の中に納まっていた、涼し気な夏の限定品はひと目で身も心もグイと持っていかれてしまった。
予想外の展開。これぞあんこの女神の引き合わせかも。「小豆ぷりん」(税込み238円)と「水ようかん」(同140円)を追加した。保冷剤もしっかり入れてくれた。
その約5時間後、陽が落ちる前に自宅に戻り、冷たい麦茶を用意し、賞味することにした。少し胸がときめく。
まずは和と洋の出会い系「小豆ぷりん」から。重さは160グラム。
北海道産大納言小豆を蜜煮した、極上つぶあんがクリーミーなプリンの底の部分に層になっているのがうっすらと見えた。ため息一つ目。
蓋を取ると、表面には大納言小豆が3粒ほど浮いている。ため息二つ目。
プリンは新鮮な牛乳と生クリーム、それにグラニュー糖と練乳、ラム酒が絶妙に混じり合い、なめらか度が素晴らしい。爆発的な風味。
食べ進むと、底からテカリとともに大納言小豆の層が現れた。約1センチの厚い層。ため息が三つ目。
蜜煮された大納言小豆は濡れ甘納豆の食感で、その歯ごたえと味わいが計算されたものとすぐにわかった。大納言小豆の風味がプディングのなめらかとよく合っている。和スイーツの新しい、1+1=3の世界が火照った舌先に心地よい。
甘すぎず、濃すぎず。ラム酒のほのかな余韻が舌先に残る。
ミネラルウォーターで舌を洗い、もう一品「水ようかん」へ。器が小豆ぷりんより小さめ(113グラム)。
これがまた・・・ひと工夫ある水ようかんで、表面には栗のかけらと大納言小豆がゴロゴロ。それも上から1センチほど透明な寒天の層になっていて、ビジュアル的にも素晴らしいと思う。きれいな2層の世界。職人芸。ため息4つ目。
寒天の層の下の本体水ようかんはザラっとした、素朴な水ようかんの舌触り。ほどよい甘さと塩気がほんのり。小豆の風味もきれい。
あえて好みを言えば、微妙なところで水ようかんになるが、コスパの良さも評価できる。予想外の出会いだったこともあるが、この価格が信じられない。ため息5つ目。
最後に当初本命だった「みかも山」にも少し触れたい。
虎皮の見た目は東十条「草月」の黒松とそっくりだが、皮の食感が違った。「黒松」は黒糖とハチミツの存在感が大きく、手にくっつくような素朴なふわふわ感だが、この「みかも山」は小麦粉の存在感が大きい気がする。ふわふわというより、しっかりしたスポンジのよう。手にもくっつかない。
黒糖の風味は変わらないし、中のつぶあんも濃厚でほとんど同じ(みかも山は栗のつぶが入っているが)。
結局好みの問題となるが、ここでとりあえず今回の訪問のまとめを。小豆ぷりんと水ようかんが予想以上に素晴らしくて、個人的には「みかも山」より気に入ってしまった。
ガイドブックもいいが、やっぱり自分の目で、自分の五感で確かめるのが一番と改めて思い直した。あんこ旅を続ける意味もそこにあると思う(むろんお取り寄せも続ける予定です)。