意外な場所で夢のあん団子(だんご)に出会った。
しっかりと一個一個こしあんで手包みされたあん団子。それがこれ。
私にとってはこうでなくっちゃ、という懐かしいあん団子でもある。東京・日暮里の「羽二重団子」がその頂点の一つと言えるが、こうしたあん団子は希少になったと思う。あっ失礼、茂助だんごもあったっけ。
単にあんこをかぶせているものより、手間がかかる。
なので、だんご界の絶滅危惧種、かもしれないぞ。
これは悲しすぎる。
(個人的な意見だが「羽二重団子」、昔の方が職人の手の香りがして、美味かったと思う。あるいはこちらの舌がおかしくなったのか、口中の感動が少し薄れてしまっている)
で、本題。
東海道あんこ旅の途中で、まさかの出会い。
伊豆・修善寺でのこと。
観光案内所の和菓子好き女性スタッフから「どら焼きがおいしい和菓子屋さんが近くにある」と聞いて、ちょっとのぞいてみた。それが「和楽(わらく)」だった。
4代続く和菓子屋で、伝統を守りながら新しさを追及するスタイルが好ましい。
そこで、出会ってしまった。こういうことがあるから旅は面白い。
見事なあん団子で、それが3個、夢の形で串に刺さっていた。こしあんのみずみずしさときれいな作りに、上質の和菓子職人の気配を感じた。
すでにどら焼きは視界から消えていた。うぐいす餅や「よもぎちゃん」など伝統と新しさがクロスした生菓子も並んでいたが、背景に飛んで行った。
1本110円なり(税別)。「保存料など添加物は使っていないので、本日中に召し上がってください」(女性スタッフ)。
3本買って、とある喫茶店に駆け込み、胸をときめかせながら、こっそり賞味した。
洗練されたこしあんで、控えめな甘さと小豆のふくよかな風味が丸の中にきれいに収まっている。
餅は米粉餅で、ていねいに練っているのがわかった。こちらも柔らかくてみずみずしい。
こしあんとのきれいなマッチング。えぐみや雑味が見事にない。
私的にはもっと素朴な、ある種の野暮ったさがあった方が好きだが、これはこれで見事な世界だと思う。
4代目店主は東京の製菓学校で講師をしていたそうで、元々家を継ぐ気はなかったが、「3代目の父が突然亡くなってしまったので、家を継ぐことになってしまった」と話してくれた。
腕がいいはずだよ。
小豆はえりも小豆ではなく、希少な北海道産しゅまり小豆を使用。砂糖もグラニュー糖を使っている。
あんこの風味がひと味違うのは素材選びと、和菓子職人としての経歴、加えて伊豆の清流が微粒子の中に流れているからだ、そう思った。
温故知新、いやあんこ知新。和スイーツの新しい可能性がここにもある。
所在地 静岡・伊豆市柏久保1355