週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

蒸し菓子の到達点?「栗若瀬」

 

京都つながりで、蒸し菓子のちょっとビックリの逸品と出会ってしまった。それがこれ。

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これまで食べた中で、蒸し菓子の一つの到達点は私の中では萬年堂の上菓子「御目出糖(おめでとう)」だった。それは今でも変わらない。

 

別名高麗餅(こうらいもち)。こしあん、かるかん粉(米粉)、餅粉を混ぜ合わせ、独特のそぼろ状にしてから大納言小豆を載せて蒸し上げた逸品で、そのもっちりした上品な食感と口の中で溶けていくきれいな余韻は初めて食べたときに、

 

「こんなあんこ系の蒸し菓子がこの世に存在していたとは・・・」

 

オーバーではなく言葉を見失いそうになった。江戸時代からの製法のままと知って、さらに驚いた。

 

さて、ここからが本題

 

京都の畏友が東京に来た折りに手土産として、大阪の蒸し菓子を持って来てくれた。

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いつものように説明はない。ポンと手渡されるだけ。

 

それが「御菓子司 庵月(あんげつ)」の「栗若瀬(くりわかせ)」だった。ここは栗蒸し羊羹の名店としても一部で知られた存在。

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趣味のいい包みを解き、化粧箱に入ったハーフサイズ(税別 1200円)を取り出してからそっとまな板に載せ、付属品のナイフで切り分けてみた。

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高級な白小豆とかるかん粉をそぼろ状に蒸し上げた上菓子で、きれいに2層になっていた。和菓子界では「むらさめ」とも言う。上が明るい抹茶色、下がややクリームがかった白。

 

蜜煮した大栗が織り込まれていた。

 

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貴種を思わせる美しい蒸し菓子で、御目出糖によく似ているが、こちらは白小豆がベース。

 

口に運ぶと、かるかんの食感で、しっとりとしたそぼろ状が舌の上でさらさらと溶けていった。

 

御目出糖よりこちらの方が細かくて崩れやすい。

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白小豆のきれいな風味。もっちり感もあり、それは多分自然薯(じねんじょ)も使っているからだと思う。

 

品のいい甘さが舌に残る。きりっとした栗の存在も絶妙。

 

調べてみたら「御菓子司 庵月」の創業は慶応4年(1868年)だった。明治維新に切り替わる寸前の時期。

 

神戸・相生町「常盤堂」の屋号で創業し、太平洋戦争後にその芦屋店が心斎橋に移転し、店名も「庵月」に変えたこともわかった。

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のれんをあまり増やさないようで、畏友からいただくまでこの店の存在を知らなかった。

 

「本物は店舗を広げるようになったらもうお終いや。味が落ちるで」

 

烏丸御池の「亀末廣(かめすえひろ)」や松原通の「松壽軒(しょうじゅけん)」を愛する、へその曲がった畏友は以前そう言い放った。どちらもデパートなどからの出店の誘いを断り続けているそう。

 

「庵月」はそこまで行かないとしても、その領域に近いと思う。

 

今の時代、「亀末廣」の世界って針の穴の細道ではないかな? のれんを守るとはどういうことか、これは超難問だと思う。あんこの細道、その先の世界・・・。「庵月」はどうか? 

 

「栗若瀬」を味わいながら、それは半分以上当たってるかもなあ、と小さくつぶやくのだった。

 

所在地 大阪市中央区東心斎橋2-8-29

最寄駅 地下鉄心斎橋駅下車 歩約4分

 

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