週刊あんこ

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柴又より古い「草だんご」

 

草だんご、と言えば「柴又帝釈天(しばまたたいしゃくてん)」がすぐに連想される。

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その老舗の名店「高木屋」は映画男はつらいよ」の舞台にもなり、いつ行っても観光客でにぎわっている。寅さんが「よっ、元気かい?」と言いながら出てきそうな気になる。

 

ところが、「男はつらいよ」の最初の舞台候補は柴又ではなく、西新井だったらしい。

 

西新井大師関東厄除け三大師の一つ。ここにも「草だんご」の老舗がいくつかある。しかも「高木屋老舗」(創業明治元年)よりも古くから暖簾を下げている。

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ちょっと意外な話だが、「中田屋」(創業文化2年)や「清水屋」(創業元禄2年と言われる)、それに「武蔵屋」(同弘化2年)などが門前に店を構えている。

 

いずれも草だんごが売り物の一つ。中田屋と清水屋が特に有名だが、少し離れたところにある「武蔵屋(むさしや)」の草だんごを取り上げたい。

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一皿450円(税込み)。柴又とよく似た店構えと雰囲気。東京下町の庚申信仰(こうしんしんこう)が今でも生きている。庶民の信仰。

 

熱いお茶と冷たいおしぼりが自然にちゃんと出てくる。

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あんこは自家製のつぶしあんで、それがたっぷりと草だんごの上に乗っている。よもぎの風味は強くはないが、つぶしあんはかなり甘めで、素朴なこってり感が悪くない。

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言われなければ、柴又の草だんごと見分けがつかない。情緒の世界。

 

草だんごは元々、江戸の近隣農家で食べられていたもの。つまり郷土食だった。

 

ルーツが同じなので、「男はつらいよ」人気にあやかったか、あやかれなかったか(あやからなかった)の違いくらいだと思う。

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とはいえ、西新井大師の草だんごを愛するファンは多い。

 

作りたてのよもぎ餅の、箸にくっつきそうになる柔らかさと濃厚なつぶしあん。

 

メジャーではなく、ややマイナー。それが渋い味わいを輝かせる。

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「武蔵屋」は料理屋でもある。ビールを飲みながらうなぎをつつき、仕上げに「草だんご」というのもオツ。手土産に一折持ち帰るのも粋かもしれない。

 

寅さんにも食べさせたかったが、最初の行き違いで舞台が柴又へ行ってしまった。「草だんごだってつらいよ」そうボヤいても・・・いやいやボヤく必要はない。草だんごの元祖の世界がここにはあるのだから。

 

所在地 東京・足立区西新井1-5-8

最寄駅 東京メトロ日比谷線西新井駅歩約10分、東武大師線下車すぐ

 

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