どら焼きではなく、とらやき。
冗談かと思ったら、正式には「虎家喜(とらやき)」が正解。縁起のいい寅年生まれが三代続くことを願ってこの名前にしたという由来を持つ。
東京・人形町の甘酒横丁に小さく店を構える「京菓子司 彦九郎」の目玉商品である。
1個220円(税込み)。卵とハチミツの匂いが漂うふわふわの皮、その焼き色が虎の模様なのも「とらやき」の由来でもあるようだ。
うさぎやのどら焼きよりも小ぶりで、中のあんこは北海道産大納言小豆とつぶしあん、それにこしあんがブレンドされている。凝ったあんこだと思う。
皮はカステラのようでしっとり感もあり、手に持つとくっつきそう。
それにあんこの濃厚な甘さと風味が素朴で、ボリュームも申し分ない。
すぐ近くに超老舗「玉英堂(ぎょくえいどう)」がある。天正4年(1576年)、京都で創業。その後、江戸に進出している。こちらが本家で、「彦九郎」は昭和10年(1935年)にいわば暖簾分けの形で、すぐ近くに小さく店を出したようだ。現在3代目。
「とらやき(虎家喜)」は本家にもあり、見た目はほとんど同じ。本家の方は1個280円と60円ほど高い。
たまたま本家に当たる立派な店構えの「玉英堂」に立ち寄ったら、「あそことうちはまったく関係ありません。似たようなものを出してるようですね」と素っ気ない対応だった。
このあたりの関係はややこしそうなので深入りしない。
暖簾をめぐる争いは悲しい。
味わいは微妙に違うが、どら焼きファンとしてはどちらも美味い、としか言いようがない。大納言小豆のくっきりとした粒つぶ感もそう変わらない。
ちょっと残念なのは「彦九郎」の方が添加物が少し多い。