週刊あんこ

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十二代続く「あんころ餅」

 

あんこ餅ではなく、あんころ餅

 

この五文字に胸が躍る。「ろ」が入っただけで、おとぎ話の世界が広がってくる気がする。あんこ餅よりもころころと小粒なイメージ。

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あんこ好きにはたまらない語感だと思う。

 

金沢のお隣り、白山市にある「圓八(えんぱち)本店」に足を運んだ。

 

ここは「あんころ餅」で知る人ぞ知る和菓子屋さん。

 

創業が江戸時代中期、元文2年(1737年)。当時の味と作り方をほとんど変えていないというのも驚きだが、その味わいもあまりに素朴。

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竹皮に包まれた9粒入り(税込み 390円)を買い求め、木製のイートインコーナーで番茶(サービス)を飲みながら、イグサの紐を解く。江戸時代と同じスタイル。

 

伊勢名物「赤福餅」よりやや小さめのあんころ餅が九つ現れた。素朴なこしあんと竹皮の香りが遠い江戸を引き連れてきているよう。

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竹皮の重みで、本来は丸いはずのあんころ餅がやや潰れているのが残念。それほど柔らかい。

 

賞味期限は本日中。なので、面倒だが、ここに来て食べるのが一番いい。

 

このこしあん。甘さがかなり抑えられていて、北海道産小豆の素朴な風味がストレートにくる。それが竹皮の香りと一緒に来るので、ややクセのある味わいとなる。

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赤福などのこしあんと違うのは、まず手数をかけて生あんを作ってから、最後の最後に砂糖(独自の製法で作った砂糖液)を加えていること。

 

あっという間に9つ食べ終える。あと一包みは行けそう。お腹にもたれない。

 

餅は石川県産のもち米を搗(つ)いたもの。

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このあんころ餅が誕生したエピソードが面白い。圓八の二代目が突然行方不明になり、生活苦に陥った妻子の夢枕にある日のこと、京都・鞍馬山で修業した天狗=二代目が立ち、あんころ餅の作り方を教えたという。

 

教え通りに作って売り出したら、客がどんどん増え、以降、商売が繁盛したとか。

 

日本むかし話のような世界が隠し味になっている「圓八のあんころ餅」、ひと味違う美味さはそのおかげもあるに違いない。

 

所在地 石川・白山市成町107

最寄駅 北陸本線松任駅下車歩約10分

 

 

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