どら焼きといえば「二枚重ねで中にあんこ」が入ったもの。
というのが常識だが、明治時代のどら焼きはそうではなかった。と書くと、「ええーっ?」と思われるかもしれない。
まさに銅鑼(どら)の形で、一枚だった。だからどら焼き。
創業が嘉永6年(1850年)の日本橋「梅花亭(ばいかてい)」が、元祖どら焼きを再現して、それが渋い人気を呼んでいる。
元々は二代目が明治初期に作ったもの。
ごらんの通り、平べったい。一個200円なり(税別)。
一枚の中につぶしあんがたっぷり入っていて、これが素朴に美味い。
幅は10~11センチ、厚さは1.3センチほど。ギリギリの焦げ目。小麦粉と卵とハチミツの濃い香り。その中に薄っすらとつぶしあんが透けて見える。
皮は日本橋「うさぎや」や浅草「亀十」などと違ってフワフワしていない。重厚などっしり感が「明治時代」を感じさせる。
洗練というより、むしろ野暮ったい。素朴な甘さの中に塩気がほんのり。
つぶしあんは北海道産小豆が柔らかく炊かれている。小豆の風味も十分にあり、塩も効いていて、いいあんこだと思う。
現在の二枚重ねのどら焼きは大正時代に「上野うさぎや」が作ったと言われる。
それが爆発的人気となり、以来、どら焼きは2枚重ねが定番になった。
百年以上前の元祖どら焼きを再現するのは大変だった。残っている古い資料とにらめっこしながら、試行錯誤して、ようやく再現に成功した。
梅花亭の和菓子職人の苦労がたった一枚の中に凝縮している。
ドラえもんもこの元祖どら焼きにビックリしてる?
所在地 東京・中央区新川2-1-4