「あんこを求めて三千里」の旅の中でも
こ、これは何だ?
そう思いたくなる和スイーツもある。
箱根湯本で出会った「湯葉(ゆば)ぜんざい」(税込み 720円)もその一つ。「湯葉丼 直吉(なおきち)」の傑作だと思う。珍作と言った方が近いかもなあ。
湯葉とは豆乳を作るときにできる表面の皮(膜)。その食感はドロっとしていて、大豆の香りが織り込まれている。
箱根名物の湯葉と甘いぜんざいをくっ付けてしまうなどあり得ない。
陶器の器(結構デカい)の中に自家製の生湯葉が湯気を放ち、大粒の見事な小豆がいい景色で揺蕩(たゆたって)っている。
小豆は北海道十勝産大納言小豆。手づくりのあんこ。
ビジュアル的には素晴らしい。
箸と木匙を使って食べてみる。湯葉の美味さは日光に劣らない。
ぜんざい、というより茹であずきを掬って食べると、甘さがかなり控えめ。小豆の風味はかなりある。柔らかくふくよかに炊かれている。関西風だと思う。
だが、どこかミスマッチで、それぞれは上質なのに、合わせると、湯葉の存在が強すぎてあずきのよさが隠れてしまっている。
かかあ天下の夫婦(めおと)みたいな印象。あるいはこれが好みという人も多いかもしれない。
箸休めの柴漬けがうまい。
店は広々としたモダンな造りで、早川がオープンな窓から見える。BGMのジャズがも心地いい。
オープンしたのは約12年前だが、元々は旅館を営んでいたようだ。そのときから湯葉丼など湯葉料理が名物だが、甘味類も充実している。「湯葉ぜんざい」もそのときからのオリジナルメニュー。
「あんみつ」や「だんご」(要予約)、さらに「ぜんざい豆腐」などというこれまた不思議なメニューまである。店主は相当な凝り性のようだ。
日本全国広と言えども、湯葉ぜんざいを出す料理屋カフェは極めて珍しいと思う。
所在地 足柄郡箱根町湯本696