あんころ餅、は正月に食べるもの・・・とは限らない。
会津・大内宿といえば、江戸時代の茅葺きの古民家がそのまま残る、日本でも有数の歴史遺産だと思う。その数30軒ほど。観光客も多い。
そこに珍しい「栃餅(とちもち)」のあんころ餅がある。
搗(つ)きたての餅に栃の実を加えて、手間ひまをかけて作らなければならない。そのため、これを出す店がどんどん減っている。
これは行かねばなるまい。大内宿の中でも老舗の蕎麦屋「こめや」に、この栃餅のあんころ餅がある。
時代劇に出てくるような古民家(本物)の中で、「栃餅 税込み550円」(あんこときな粉のペア)を頼んだ。
栃餅は色が茶褐色で、皿に盛られたあんこときな粉の2種類。出来立ての湯気がふわふわと立ちのぼってくるよう。
あんこはドロリとしたこしあんで、控えめな甘さ。箸でつかむと、伸びやかに立ち上がってくる。
柔らかな栃餅とこしあんの風味がコラボする。栃餅はクセがあり、妙な表現だが、硫黄のような匂いがする。
ボルドーのプレミアムワインにも硫黄の匂いのするものがあり、それが官能的な魅力にもつながっている。
それを思い出した。クセはあるが、いやな感じではない。それどころか、普通の餅では味わえない独特の面白みが口の中に広がる。
こしあんがそれに絶妙にマッチする。
ほお~、という言葉が出かかる。伝えるのが難しい古くからの味わい。
きな粉もイケる。京都「澤屋」の粟餅を思いっ切り野暮ったくしたような味わい。江戸の山奥にこういう美味があったことに改めて驚かされる。
江戸のスイーツ、恐るべし。