東京にも伊勢「赤福」に負けないあんこ餅がある。
と書くと、赤福がすごいもの、と思われるかもしれない。
という声がどこかから聞こえてくる。
東京の下町、深川不動尊門前にある「伊勢屋本店」の「深川もち」である。
最近は「深川ちょこ」など、新しい和スイーツを出して人気になっているが、本命はこちら。
さて、この深川もち。紙包みの箱入り(12個 税込み900円)を買いたい。
包みを解いて、木の香りのする経木をめくると、きれいなこしあん餅が現れてくる。赤福は二本の指でこしあんをこすりつけた形だが、こちらは茶巾絞りの形である。
ひと口。こしあんのいい風味が春風のように広がってくる。控えめな甘さ。小豆は北海道産、砂糖は白ざらめ。切れのいいきれいな味わい。
その後に続く餅が実に柔らかい。国産のもち米を搗いて、さらに糖蜜を加えながら、練り込んでいる。それが絶妙なもっちり感と柔らかさを生んでいるようだ。
個人的な評価では、奈良・當麻寺(たいまでら)の中将餅には負けるが、こしあんのあんこ餅としては、首都圏を見てもテッペン付近に位置すると思う。
創業が明治40年(1907年)と暖簾の歴史も古い。
あまり手を広げずに、この伝統の味を守ってほしい。
所在地 東京・江東区富岡1-8-12