GW、京都の人気はすさまじい。
日本人はもちろん、外国人観光客のラッシュぶりに、京都の友人などは「もう勘弁してほしいわ。この時期はモグラみたいに地下に潜って、お経でも唱えてるしかあらへんで(笑)」と大いに嘆く。ある意味、こわ~。
で、今回取り上げるのは、「もっとも京都らしい風情」と人気の一つ、祇園新橋に佇む「甘味どころ ぎをん小森」である。
江戸時代末期の京町家が並ぶ祇園新橋の一角。柳の老大木と簾(すだれ)で目隠しされた切妻造りの町家が絵になる。
「ぎをん小森」の白地の暖簾と行灯。芸妓さんがたまに通る。よくよく考えると、普通、あり得ない世界。
ここで「小森あんみつ」(税込み1200円)を賞味した。友人の魯山人はんは瓶ビール。甘味屋でビールしか頼まないというのも、普通はあり得ない。
信楽焼の器に入った「小森あんみつ」は、妙な言い方だが、京都スイーツの新旧スター総出演と言いたくなるもの。
器の中の京踊り。
見た目も「ええで、ええでえ」としか言いようがない。丹波の大栗が2個、吉野葛を使ったくずきり、柳桜園の抹茶を使った抹茶アイス、抹茶寒天、白玉も厳選されたもの。
そして、バックに控えているあんこ。私に言わせれば、これこそが主役。隠れたセンター。きれいな小倉あんで、毎日、決まった量を炊いているそう。使用している小豆が北海道十勝産大納言。
さすがに丹波大納言ではないが、これだけの素材がそろえば、もはやその味わいはかなりのレベルとわかる。
このあんこ、柔らかく丁寧に炊かれていて、木匙で口に運んだ途端、いい風味とほどよい甘さが押し寄せてくる。艶やかさが高いレベル。上質のねっとり感。
脳内セロトニンの風がやさしく吹いてくる。
黒蜜をかけて賞味。黒蜜がどうしたわけか、あんこの風味を殺さない。穏やかな自家製のいぶし銀。壇蜜よりも黒蜜。
いい時間が流れる。すべてが絵になっている・・・気がするが、どこかレプリカっぽい。不意に我に返る。
これって現実か?
本物とレプリカの違いなどわかろうはずもない。
レプリカでも素晴らしければいい、と思う。
この「ぎをん小森」は超人気なので、時間帯によっては1時間以上の待ちは覚悟しなければならない。
建物はもともと茶屋だったもの。それを改装して、1997年(平成9年)に甘味処としてオープンしている。老舗ではない。(老舗がいいとも限らない)
魯山人はんは、最近の京都を嘆き、アテの柿ピーをポリポリ食べながら、「錦市場もよそからどんどん資本が入ってきはって、観光化され過ぎやな。よう観光客だけがダマされはって。ホンマは京都やない店も多いちゃいまっか」と口の左端を3ミリほど上げたのだった。