週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

薄皮饅頭やっぱり美味い

 

柏屋の薄皮饅頭(うすかわまんじゅう)について書くのは気が引ける。

 

あまりにもポピュラーになっているからだ。それでもこの饅頭は避けて通れない。

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創業が江戸時代嘉永5年(1852年)。初代が奥州街道郡山宿であんこを薄い皮で包んだ蒸し饅頭を売り出したところ、これが当たった。黒船来航の約一年前。

 

当時は砂糖が貴重だったので、現在のものより甘さは控えめで、塩が効いたものだったと思う。それでもめっぽう美味かったようだ。

 

それが五代目の今では、福島を飛び越え、首都圏でも「薄皮饅頭」と言えば「柏屋」という連想になるほどの存在になっている。

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何よりも皮の薄さとこしあんの美味さ、それに加えて値段の安さ(1個90円=税別)が絶妙である。

 

最近はつぶあんも人気になっているが、元々はこしあんだけ。口に入れた瞬間のしっとり感と舌に溶けていくきれいな風味がとてもいい。その後味のすっきり感。

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小豆は北海道十勝産を使用。工場で量産しているはずなのに、あんこ職人の手づくりのいい匂いが残っている。砂糖は白ザラメか。ほんのりと塩気も含んでいる。

 

全国各地にある温泉まんじゅうと同じようでいて、食感がひと味違う。皮の薄さとこしあんのボリュームがそのひと味の秘密だと思う。

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よく見ると、薄皮の表面には網目があり、裏側を見ると、中のあんこが透けて見える。これほどのあんこ感は他の温泉まんじゅうには見られない、薄皮饅頭ならではの特徴だと思う。

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饅頭には二つの系譜がある。一つは鎌倉時代臨済宗東福寺を開いた聖一国師が日本にもたらした饅頭(酒饅頭)。もう一つは室町時代に奈良で開業した帰化人、林浄因のふかし饅頭。

 

前者は虎屋に伝承され、後者は塩瀬総本店に引き継がれている。

 

柏屋の薄皮饅頭はそうした二つの流れから解放されていると思う。こんなに安くてこんなに美味い饅頭が当たり前のようにあることが奇跡かもしれない。灯台下暗し。

 

たまにはかしわ手を打たなければなるまい。ぼそっと独り言。気がつかなくてごめんな・・・などと。

 

所在地 福島・郡山市中町11-8

最寄駅 JR東北本線郡山駅下車歩4~5分

 

 

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神保町「こし餡どらやき」

 

こしあんのどら焼き、というのはあまりない。

 

ありそうだが、不思議にない。

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しかもそれが明治38年(1905年)創業の老舗、となると極めて珍しい。

 

あの「上野うさぎや」でさえ、創業が大正2年(1913年)である。

 

東京・神田神保町の「亀澤堂」である。現在は4代目。

 

そのこしあんのどらやきがこれ。

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1個税込み230円ナリ。小ぶりで皮もあんこも職人の手づくり。「うさぎや」や人形町「清寿軒」のような大きさもどっしり感もない。

 

色ムラのない見事な手焼き。手で割ると、甘いいい匂いが広がる。卵の黄身とハチミツをたっぷり使っていることがわかる黄色みの強い皮。小麦粉は国産のもの。

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しっとり感よりふわふわ感が強い。うさぎやのようなボリューム感はない。

 

さて、こしあんのあんこ。かなり甘めできれいな食感と風味。しっとりとしていて、いいこしあんだと思う。小豆は北海道産を使用。砂糖は白ザラメか。水飴も使っているようだ。

 

つぶあんに慣れた舌から見ると、やや物足りない。洗練されたこのあじわいをどう見るか、だと思う。

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定番のつぶあんを食べてみる。好みとしてはこちら。つぶあんのふっくら感がとてもいい。柔らかなつぶつぶ感も秀逸。こちらもかなり甘め。

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この店の人気は「豆大福」だが、二番人気はこのどらやき

 

清寿軒とうさぎや(個人的には日本橋が好きだ)が「東京場所」の東西横綱だとしたら、ここは関脇クラスだと思う。店の佇まいも渋い。

 

愛すべき関脇、というのもあると思う。

 

古本屋巡りをした時などにはふと行きたくなる、いい和菓子屋さんであることは間違いない。

 

所在地 東京・千代田区神保町1-12-1

最寄駅 東京メトロ神保町駅下車すぐ

 

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京都の和三盆氷あずき

 

虎屋、といえば言わずと知れた和菓子界の頂点の一つ。

 

室町時代に創業し、皇室御用達の名店として君臨し、明治維新後、天皇とほとんど一緒に東京・赤坂に本店も「遷都」してきた。

 

だが、もともとは饅頭屋(諸説ある)で、京都御所近くに旧本店がある。

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その虎屋菓寮一条店で、「氷あずき」(税込み 1296円)をいただいた。

 

あんこ界の総本山といえなくもない。

 

庭園を見ながら、ゆったりとした気分で、「氷あずき」を待つ。

 

ガラスの器に富士山のようなかき氷。和三盆の茶色い蜜が頂上からたっぷりとかかっていた。

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それだけで最近の派手な、奇をてらったかき氷とは違うことがわかる。

 

かき氷は水分を多く含み、スプーンで口に入れた瞬間、柔らかな洗練が自然な甘みを引き連れてくる。ヘンな例えだが、牛車に乗った高貴な味わい。その深いシンプル。

 

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中のあずきは皮まで軟らかく炊かれていて、こってりした甘さ。量も申し分ない。

 

十分計算された氷の温度と洗練された和三盆、主役のあずき。

 

これがかき氷の頂点の味か?

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京都に住む友人(恐るべき舌の持ち主)が、「虎屋一条店のかき氷を食べないと、かき氷は語れまへん」と言っていたことが頭をよぎった。

 

さり気なく、深い。

 

あずきは丹波産大納言かと思ったら、「いえ、十勝産です」

 

1296円は場所代も含んでいる。

 

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所在地 京都市上京区一条通烏丸西入ル

最寄駅 地下鉄烏丸線今出川駅下車

 

 

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戦国ロマン「くるみ餅」かき氷

 

大阪・堺といえば、室町・戦国時代に世界を相手に商売を行った環濠都市国家千利休を生んだ場所でもある。

 

今は過日の面影はない。壮大なロマンのかけらも落ちていない。

 

だが、そこに室町時代末期に創業した「かん袋」がある。京都・今宮神社参道の「一文字屋和助」に次ぐ歴史を持つ超老舗餅菓子屋である。

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「くるみ餅」が名物だが、夏は「氷くるみ餅」(シングル 税込み360円)に限る。

 

驚くなかれ700年近い歴史を持つ餅菓子で、氷を上からかけるようになったのは明治以降、製氷技術が発達してから。ひょっとしてかき氷の元祖は、この「氷くるみ餅」かもしれない。

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とにかく美味である。かき氷は幾分湿り気を帯び、柔らかい感触。みぞれとスレスレの歯触り舌触り。

 

その下にうぐいす色のあんの世界が横たわっている。

 

このうぐいす色のあん。風味といい絶妙な甘さといい、素朴な美味さ。添加物も使っていない。

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その下には柔らかな白玉が5個ほど。上からかかっているミルク色の白蜜と一緒にスプーンですくって口に運ぶと、何とも言えない幸せ感に包まれる。

 

さて、このうぐいす色のあんこ。正体が不明。素材も作り方も謎のまま。

 

店の人に聞いても「秘伝なので」というばかりで、ヒントすらもらえない。当代の27代目まで、一子相伝のワザというのが凄い。凄すぎ。

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で、仕方なく堺の知人に聞いたら、「あれは青大豆。つまり青きな粉や思うで。それに砂糖と塩で味を調えてる。ホンマによくできてるで。あの秀吉も好きだったそうや」。

 

それにしてはきな粉の風味はまったく感じなかった。まるでウグイス豆のあんのよう。

 

700年近くも生き残ってきた「くるみ餅」。誤解する人が多いが、木の実のクルミは入っていない。「くるむ」から来た名前で、そのネーミングもまた歴史のロマンを誘う。

 

所在地 大阪府堺区新在家町1-2-1

最寄駅 阪堺線寺地町停留所下車歩3分

 

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悶絶「三段あずき」かき氷

 

首都圏は長雨が終わり、再びかき氷の季節。

 

少し前、東京・目白「志むら」驚きの絶壁あずきかき氷をこのブログで書いたが、もう一つの東の横綱を忘れていた。

 

あずき好きにはたまらないあんビリーバブルなかき氷だと思う。

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「浅草浪花家」のあずき(税込み600円)である。

 

たい焼きの元祖「麻布十番 浪花家総本店」から暖簾分け。その本店より凄い「あずきかき氷」だと思う。浅草浪花家のオリジナル。

 

純水で作ったふわふわの山盛り氷。頂上には自家製あずきがどっかと乗り、ガラスの器の底にもあずきの海。ここまでなら総本店と同じだが、浅草浪花家の凄さはここから。

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フワフワ氷をスプーンで崩して食べ進むうちに、まん中あたりで、もう一つあずきの層にぶつかる。つまりトリプル三段あずき!

 

トッピングで「あずき」の別皿(プラス100円)を頼み、それをさらにドドドとかける。白蜜もかける。

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あんこ好きにはこたえられない、悶絶寸前パラダイス! 

 

あんこの苦手な人には地獄の三段責め。

 

あずきは北海道十勝産を使い、それを銅釜で8時間ほどじっくりと炊き上げる。砂糖は上白糖。

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出来上がったあずきは粒がしっかりしていて、しかもふっくら。その大きさは大納言小豆といってもわからないくらい。甘さは抑えられ、塩加減が絶妙という他はない。あずきの風味も素晴らしい。これほどのあずきはそうザラにはない、と断言しておこう。

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冬は一丁焼きのたい焼き、夏はかき氷が人気の店で、総本店から暖簾分けしたのは平成22年(2010年)。その翌年に「あずき」かき氷がメニューに加わった。この平成23年は東日本大震災があった年。

 

まさに大震災の中の門出。あんこの底力、その凄み。

 

今では行列店で、土日などは長い行列になる。それでもこの「あずき」、和スイーツファンには十二分に食べる価値があると思う。

 

所在地 東京・台東区浅草2-12-4

最寄駅 浅草駅歩7~10分

 

 

 

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怪物「こしあんブレッド」

 

この巨大な「こしあんブレッド」を最初に見たとき、驚いた。

 

こんなのありィ?

 

食パン一斤分ほどのパンにこしあんがマーブル状に練り込まれていた。表面がこんがり焼かれていて、まるでマフィアの親分のようだった。

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一つ460円(税込み)は安くはない。だが、それを超える好奇心がムクムクと湧きあがってきた。ひょっとして世界でここだけのパンかもしれない。

 

「パン生地にこしあんを練り込んで三つ編みにしてから焼いているんです。結構技術がいるんですよ」

 

女性スタッフが得意げに教えてくれた。午前中に売り切れることもあるそう。

 

東京・千駄木「リバティ」の「ぶどうパン」と同じくらいの衝撃。

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蔵の街・栃木市のメーンストリートにある「コエド市場」のパンコーナーでの出会いだった。たまたま入った店。

 

手に持つとずっしりと重い。それを自宅に帰ってから、パンナイフで切って食べることにした。

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パン生地はしっとりとしていて、こしあんを絶妙に引き立てている。こしあんは何と200グラムも煉り込まれているそうで、「マフィアの親分」に見えたのも当然かもしれない。

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こしあんは地元の製餡所のもの。地場の小豆を使っている。甘さが控えめで、小豆の風味も十分にある。

 

牛乳を飲みながら(あんぱんには牛乳が合う)、食パン界のマフィアの親分を味わう。妙な気分になってきた。

 

所在地 栃木市倭町13-2

最寄駅 JR両毛線栃木駅

 

 

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江戸グルメ「栃餅あんころ」

 

あんころ餅、は正月に食べるもの・・・とは限らない。

 

会津・大内宿といえば、江戸時代の茅葺きの古民家がそのまま残る、日本でも有数の歴史遺産だと思う。その数30軒ほど。観光客も多い。

 

そこに珍しい「栃餅(とちもち)」のあんころ餅がある。

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搗(つ)きたての餅に栃の実を加えて、手間ひまをかけて作らなければならない。そのため、これを出す店がどんどん減っている。

 

これは行かねばなるまい。大内宿の中でも老舗の蕎麦屋「こめや」に、この栃餅のあんころ餅がある。

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時代劇に出てくるような古民家(本物)の中で、「栃餅 税込み550円」(あんこときな粉のペア)を頼んだ。

 

栃餅は色が茶褐色で、皿に盛られたあんこときな粉の2種類。出来立ての湯気がふわふわと立ちのぼってくるよう。

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あんこはドロリとしたこしあんで、控えめな甘さ。箸でつかむと、伸びやかに立ち上がってくる。

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柔らかな栃餅とこしあんの風味がコラボする。栃餅はクセがあり、妙な表現だが、硫黄のような匂いがする。

 

ボルドーのプレミアムワインにも硫黄の匂いのするものがあり、それが官能的な魅力にもつながっている。

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それを思い出した。クセはあるが、いやな感じではない。それどころか、普通の餅では味わえない独特の面白みが口の中に広がる。

 

こしあんがそれに絶妙にマッチする。

 

ほお~、という言葉が出かかる。伝えるのが難しい古くからの味わい。

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きな粉もイケる。京都「澤屋」の粟餅を思いっ切り野暮ったくしたような味わい。江戸の山奥にこういう美味があったことに改めて驚かされる。

 

江戸のスイーツ、恐るべし。

 

所在地 南会津郡下郷町大字大内字山本16-3

最寄駅 会津鉄道湯野上温泉駅からバス

 

 

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