週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

猛暑祝い「あんこアイス最中」

 

ヘンな話、関東には梅雨がなかった気がする。

 

それなのに「梅雨明け宣言」とは。気象庁も天気を読めないほどの異常気象ということかな。どうしちまったんだ、地球はん。

 

こういう時は変化球で猛暑をお祝いすることにしよう。相対化で困難を乗り切る。

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で、東京・浅草雷門にある甘味処「西山」。ここの「小豆のせアイス最中」(テイクアウト400円=税込み)が本日の主役である。

 

あんこ好きにおすすめの夏の一品。シビレルこと間違いない

 

アイスはバニラ、抹茶、あずきから選べるが、やはりここは「あずき」で行きたい。「小豆のせアイス最中」はその上にさらにトッピングであんこを乗せたもの。

 

二階建てのあんこパラダイス。

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見事なあんこ(粒あん)の玉乗り。ボリュームも色つやも文句のつけようがない。

 

ひとナメ、ひとカジリごとにあんあんあん・・・

 

「あ」の字舌先で重なりあっていく。

 

これに比べたら、かの梅園本店の小豆最中アイスがちっぽけに見えてしまう。(むろん個人的な感想です)

 

ふっくらと柔らかく炊かれた北海道産小豆の美味さが半端ではない。絶妙な風味となめらかな甘さ。ほんのり塩加減が効いている。

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店内の甘味処で食べると、ほとんど同じものが580円(税込み)もする。

 

それよりも店先で太陽と猛暑を体全体で受け止めながら、味わうのが一番だと思う。

 

入り口に小さなベンチがあり、そこで食べる。混んでるときは使えないが、そのときは立ったまま、あるいは歩きながら食べるのも粋というもの。

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楽して粋は手に入らない。毛穴から汗が噴き出していても、涼しい顔で夏の絶品を味わう。こうでなくっちゃ。

 

この「西山」、創業が嘉永5年(1852年)という老舗和菓子屋。並びにはどら焼きで有名な「亀十」があるが、観光客があまりに多く、渋好みとしては、こちらがおすすめ。ここの目玉でもある「福々まんじゅう」を包んでもらうのも悪くない。

 

たまたま結論。エアコンの中で小豆アイスを味わってはいけない。

 

所在地 東京・台東区雷門2-19-10

最寄駅 東京メトロ銀座線浅草駅

 

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「塩羊羹元祖」にたどり着く

 

頂き物で、この塩羊羹(しおようかん)を初めて見たとき、見入ってしまった。

 

ただの塩羊羹ではなかった。

 

グレーがかった、灰緑色の凝縮。オーバーではなく、宝石の瑪瑙(めのう)でも見るように、しばらくの間、その場を動けなかった。

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明治6年(1873年)創業、長野・諏訪大社下社秋宮の門前に暖簾を下げている「新鶴本店(しんつるほんてん)」の塩羊羹。塩羊羹の元祖でもある。

 

店まで足を運ばないと、この塩羊羹を手に入れることはできない。今どき珍しい孤高の店でもある。

 

そして、ついに本店のある下諏訪駅まで足を運んだ。

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江戸時代の面影を残す、明治期の建物。

 

塩羊羹(一本950円=税込み)を3本買い求めた。

 

さらに、もう一つの狙い、ここでしか食べれない「もちまんじゅう」(1個170円)をゲットした。午後には売り切れてしまうことが多い。希少な餅菓子。

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すぐ固くなるので、無理を言って、店の中で食べさせてもらった。前回書いた、奈良・大和郡山市にある超老舗和菓子屋「本家菊屋」と同じ展開になってしまった。

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グスン、こちらは皿もお茶も出なかったが(当たりメエだよ)。

 

「もちまんじゅう」という名称だが、こしあんの大福餅に近い。

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「餅は今も臼ときねで搗(つ)いてます」(女性スタッフ)

 

伸びと腰がしっかりしている。中のこしあんは、実にきれいな味わい。北海道十勝産の小豆と白ザラメ、それに塩。その加減が絶妙で、いい余韻が口中に残る。

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塩羊羹とともに明治6年からほとんど同じ製法で作られている。こうした店が、世の中の流れに棹(さお)さすように、店を広げずに暖簾を守り続けている。

 

雨の日も晴れの日も台風の日も194年・・・気の遠くなるような時間の流れ。

 

そのことに三歩下がって、改めて敬意を表したい。

 

所在地 長野・下諏訪町横町木の下3501

最寄駅 JR下諏訪駅歩約10分

 

 

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あの秀吉の驚きの舌

 

美しい餅菓子、鶯餅(うぐいすもち)のファンは多い。

 

何を隠そう、(隠す必要はないのに)私もその一人。あんこを求肥で包み、青大豆きな粉をまぶしたその色と姿は確かにうぐいすを連想させる。

 

なので、うぐいす餅。春の季語にもなっている。

 

この命名者があの豊臣秀吉、って知ってる人はそう多くはない。

 

どうやら本当らしい。秀吉は名コピーライターでもあったことになる。

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秀吉の弟・豊臣秀長が関白秀吉を迎えて、大和郡山城で茶会を開いた。

 

秀長は珍しいもの好きの秀吉を驚かせようと思って、「本家菊屋」の初代・治兵衛に「これまでにない和菓子を作れ」と命じていた。

 

苦心の末、出来上がったのが青きな粉をまぶした餅菓子だった。

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秀吉は大の甘党でもあったようだ。

 

ひと口食べるなり、そのあまりの美味さに腰を抜かしそうになった。多分、少なくとも5個以上食べたのではないか(見たわけではない)。

 

「天晴れじゃ、これからこの珍菓子をうぐいす餅と名づけよ

 

と言ったとか。430年以上経った今も本家菊屋に伝わる話である。

 

どこでもドアで、その元祖、本家菊屋に足を運んだ。

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大和の国・郡山城下に店を出したのがなんと天正13年(1585年)というから驚く。現在の奈良県大和郡山市

 

当主は現在26代目。秀吉の弟・秀長が大和郡山の城主になったときに、何処からかやって来たらしい。つまり創業はもっと古いが、古すぎて本家菊屋でも把握できないらしい。いやはや。

 

その元祖・うぐいす餅を今も作り続けている、なんて。気が遠くなってくる。

 

商家造りの開放的な店構え。柿色の水引暖簾。中に入ると石畳。

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江戸時代になってから、徳川に遠慮したのか、名前を「御城之口餅(おしろのくちもち)」と変えてしまった。郡山城の入り口に店があったため。

 

惜しいなあ。秀吉ほどのひらめきが感じられない。

 

日持ちがしないため、無理を言って、店の縁台で賞味させていただいたが、超老舗なのに、店の女性スタッフは気さくだった。

 

「1個でもいいですよ」

 

「では5個ください」

 

形も青きな粉をまぶしたところも同じだが、サイズが小さい。当時のままだそう。一口サイズ。一個100円(税込み)。

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ほうじ茶と黒文字まで付けてくれた。ちょっと感動。

 

これが今も絶品なのである。

 

求肥(ぎゅうひ)の柔らかさと青きな粉のかかり具合。中のつぶあんもひと味違う。

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つぶあんは選りすぐった丹波大納言小豆で、風味といい甘さといい、素晴らしいとしか言いようがない。青きな粉は国産青大豆を使っている。

 

サイズが小さいだけで、その美味さの凝縮感が現在のうぐいす餅に負けていない。それどころか、超えてさえいると思う。

 

秀吉の舌がいかにすごかったか。改めて、脱帽させられてしまった。

 

所在地 奈良・大和郡山市柳1-11

最寄駅 近鉄郡山駅下車

 

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天然かき氷「絶壁あんこ」

 

かき氷は宇治金時かあずきに限る。

 

ここ数年のかき氷ブームは異常だと思う。

 

かき氷のビッグバンってとこか。

 

ワンダーなかき氷がどんどん誕生している。これは悪い話ではない。東京・谷中の「ひみつ堂」がフツーに見えてきたりする。

 

このかき氷を初めて見たとき、口が開いたまま、しばし呆然としてしまった。

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東京・目白「志むら」の「氷あずき」(900円)。

 

南アルプス八ヶ岳の天然水で作った、ふわふわのかき氷の高さは優に25センチほど。

 

それが断崖絶壁のようにそそり立っていた。まるでアイガー北壁だよ。

 

それに輪をかけて驚いたのは、そこからあんこが滝のように流れ落ちていたこと。

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なんじゃ、これは? 反則すれすれ

 

茹であずきのような緩いあんこで、それが滝壺のように麓に広がっていた。

 

頂上からあんこの滝壺に飛び込みたい

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それからはある種、夢の時間。

 

甘さはかなり抑えられていて、小豆の素朴な風味が全開していた。ややもすると、物足りないほど。

 

不思議だが、氷が歯に滲みない。

 

愛ある氷、とでも表現したくなった。愛のない氷もある。

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あずき好きにはたまらない、大人のかき氷だと思う。

 

客のほとんどは女性。

 

「生いちご」がここの人気ナンバー1だが、個人的には「あずき」には敵わない。

 

北海道十勝産の小豆とグラニュー糖で、じっくりと炊いた素朴で品のいいあんこ。

 

それをゆる~く、ゆる~く。

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美味いスイーツを見つける才能は男よりも女の方が勝っている、と思う。

 

昭和14年、青山で創業。東京大空襲後、終戦と同時に昭和20年、目白に移転。

 

女性のいるところ甘い蜜あり、は多分本当だ。

 

今では、東京でも指折りの和菓子屋兼かき氷カフェとなっている。

 

所在地 東京・豊島区目白3-13-3

最寄駅 JR山手線目白駅下車

 

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冷たい七変化「松露」

 

もうすぐ京都祇園祭が始まる。

 

この季節になると落ち着かなくなる。

 

財政難から毎年行けるわけではないので、行けない時はテレビで我慢する。

 

今年もそうなりそうだ。

 

で、今回は変化球。祇園で見つけた京菓子「松露(しょうろ)」の我流の食べ方をご紹介したい。

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コロンブス的な食べ方? 大げさだよ。

 

四条通を八坂神社に向かってぶら歩き。その途中で「松葉屋」を見つけた。このあたりは観光客でごった返しているが、そこだけ別世界だった。

 

老舗の古い佇まい。客が少ない。気後れしたが、思い切って入ってみた。

 

古い京都にタイムスリップしたような感覚。

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店主は二代目で、中京区から祇園に移って、「70年くらい」とか。「老舗? ちゃいます。このあたりでは二百年くらい経たないと、老舗いわはりまへんで」。

 

やっぱり京都、恐るべし。

 

ここで買ったのが「松露」(袋入り 税込み896円)だった。黒あん、白あん、うぐいすあんの3種類。それをすり蜜で固めたもの。きれいな半生菓子。

 

これが絶品だった。

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普通に食べても美味いが、あまりに暑かったので、ふと冷蔵庫に入れてみた。つまり冷やして食べてみようと思い立った。

 

目からウロコ。

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冷たい糖衣がガサっとした歯ごたえとともに、すーっと溶けて行く。すぐ後から、あんが舌の上で羽衣になる。冷たくてきれいな風味。天上の舞、そんな感覚。

 

黒あんの小豆は北海道産大納言小豆を使用。白あんは白小豆。うぐいすあんは白小豆に着色しているようだ。砂糖は白ざらめとか。材料選びも職人芸。

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上菓子「松露」の食べ方としては邪道かもしれないが、これはイケますでえ。凍らせてもイケるかもしれない。冷たい七変化。

 

ひょっとして、松露は冷菓でもある。

 

というのが、今回の甘い結論。

 

所在地 京都市東山区四条祇園町南側572-3

最寄駅 祇園四条駅下車

 

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自家製あんこに挑む

 

あんこ作りは難しい、と言われている。

 

本当か?

 

そりゃあ、プロのレベルのものを作ろうと思うからだと思う。

 

フツーに作れば、それなりに美味いものができる、というのが結論。

 

要はやるかやらぬか、だと思う。

 

あんこが苦手な人はこの際置いといて。

 

で、作ってみた。

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北海道十勝産小豆(1キロ)。それに砂糖は今回は三温糖(800グラム)、塩少々。

 

材料はこれだけ。

 

小豆を水洗いして、鍋にたっぷりの水を入れ、強火で沸騰させる。小豆が踊り出したら中火にして15分ほど炊く。

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それをザルに移して、小豆を冷水で洗う。いわゆる渋切り。渋をわざと残す人もいるが、今回は一回だけすることにした。

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たっぷりの水でもう一度沸騰させたら、今度は弱火でじっくりと炊く。アクをていねいに取りながら、慈しむように。

 

40分~1時間ほどで、小豆の具合を見てみる。手に取ってみて指先ですぐ潰れるほど柔らかくなっていたら、ここで砂糖を三分の一ほど入れる。一度に全部入れると、小豆がびっくりして、固まってしまうので注意。

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さらに愛情を注ぎながら、じっくりじっくり炊いていく。同時に残りの砂糖を数回に分けて入れていく。鍋の底にこびりつかないよう、注意しながら、ていねいにヘラ(木べらがいい)で回していく。

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このとき何か話しかけてもいい。映画「あん」で樹木希林がやったように。あんこも作り手の愛情を受け止めている。不思議だが、本当だ。

 

あんこの気持ちになってみる。

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ほどよいねっとり感とツヤが出てきたら、仕上げの塩を少々入れて、出来上がりとなる。火を止めて、フタをして、しばらく蒸らすのもいい。

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冷めたら、タッパーに移し替え、翌日の朝食などで、パンに付けて食べる。むろん食べ方は自由。

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この日は食パン専門店「一本堂」のプレーンを用意、コーヒーを飲みながら、生活クラブの無塩マーガリンで「あんマーガリンモーニング」してみた。

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自分で言うのもヘンだが、これが案外イケる。あんこはあん子。まずは飛んでみないと始まらない。

 

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江戸の夢「むし鹿の子」

 

「むし鹿の子」というのは珍しい。

 

それが絶品とくれば、あんこ好きにとっては、とても見逃せない。

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その、いわば「あんこの夢」が東京の中心、茅場町永代通りにあるとしたら? かつては江戸の中心だったところでもある。

 

そこだけセピア色の「御菓子処 田川堂」。

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創業は明治らしいが、詳しいことはわからない。「百年以上は経ってますよ」(ご高齢の女将さん)。

 

敷居の低さとショーケースに並ぶ小豆の生菓子が江戸⇒東京の匂いを放っている。下町のいい和菓子屋の系譜が目の前にある。

 

「むし鹿の子」(一個税込み140円)に目が釘付けになった。見事な大納言小豆と中のこしあん。それを葛(くず)で包んで、丁寧に蒸したもの。

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時代物の扇風機の風を受けながら、「むし鹿の子」を賞味する。エアコンはない。今どき、東京のど真ん中にかような和菓子屋が存在していることに驚きながら。

 

口の中で大納言小豆の風味がつむじ風となる。

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素朴できれいなこしあんがそれに混じり合う。ほどよい甘さ。あまりの美味さに言葉が出てこない。

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手土産に3個ほど持ち帰る。

 

日本橋からこのあたりにかけては、どら焼きの清寿軒や梅花亭本店など、江戸から明治にかけてのいい老舗が残っている。

 

後日、かき氷のあずき(400円)も食べてみた。あんこの美味さがここでも確認できた。

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これだけのあんこ菓子の老舗を知る人は意外に少ない。

 

後継者がいるのか、つい気になってしまった。

 

所在地 東京・中央区新川1-2-7

最寄駅 東京メトロ茅場町駅

 

 

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