週刊あんこ

和スイーツの情報発信。あんこ界のコロンブスだって?

十条の金星「いちご草餅」

 

あんこ餅菓子にも出会い系がある。

 

さよならだけが人生、ではない。

 

東京・北区の十条銀座商店街をぶら歩きしていると、甘味処「だるまや」が見えた。

 

入り口にはのり巻きやおいなり、だんご、豆大福などが雑然と置いてあり、下町の餅菓子屋の佇まい。

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目が吸い寄せられるように、一点に向かった。

 

「あまおう草餅」

 

いちご大福は今やどこにでもあるが、いちごの草餅というのは初めて。しかもいちごの王様「あまおう」とは。

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見事なよもぎの草餅に包まれるように、「あまおう」が鮮やかな色で片目をつむった・・・気がした。胸がピコピコ。

 

こしあんとつぶあんがあり、つぶあん(280円)を頼んだ。それを奥の喫茶コーナーで、コーヒーを飲みながら、味わった。

 

この春、最大のびっくり。

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よもぎ餅の美味さ。あまおう(減農薬栽培)の滴るような甘さ。

 

何より、つぶあんが素晴らしかった。

 

あまりに柔らかな甘みと風味。口中にそよ風が立った。

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これほどのあんこを作っている店主に話を聞きたくなった。

 

三代目だという若い男性(息子さん?)は熱い男で、

 

「ウチはオーガニックにこだわってるんですよ」

 

と語り始めた。

 

「素材は産地よりも生産者が問題なんですよ。オーガニックでいいものを作ってると耳にすると、北海道でも宮古島でもどこへでも行きますよ。砂糖だって生産者を選んで、和三盆糖を使ってるんです。このくらいのこだわりは当然なんですよ」

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店の創業は昭和22年(1947年)。ここはかき氷でも知られた店で、あんこの美味さにも定評があるようだ。

 

正直、その語りには少々へきえきしたが、作っているのは二代目のようで、そのお方がすご腕の和菓子職人であることは想像できた。

 

GW中にまた食べたくなって、再び足を運んだら、「あまおう草餅」は終わっていた。

 

「あら残念でした。季節限定なんですよ」

 

店の女性スタッフが申し訳なさそうに言った。その瞬間、下町の金星が消えた・・・。

 

「12月から4月の頭くらいまで、です。また12月に来てください。これからはかき氷です。いかがですか?」

 

所在地 東京・北区十条仲原1-3-6

最寄駅 JR埼京線十条駅北口

 

 

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東京和スイーツの傑作

 

あんまり暑いんで、今日は冷たいあんこの話。

 

小倉アイスの元祖が東京・湯島にある「みつばち」と知っている人は少ない。

 

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明治42年(1909年)創業。もともとは氷あずきが目玉だったが、二代目のとき、冷夏で売れ残ってしまった。もったいないので桶(おけ)に入れて冷凍庫に入れて保存して置いたところ、たまたま食べてみたら、これが美味かったそう。

 

で、「これはイケる」となって、大正4年(1915年)に売りだしたところ、当時の東京っ子の舌を魅了した。小倉アイスの誕生秘話で、四代目の今もみつばちに伝わっている。

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そのなめらかな舌触りと大納言小豆の風味の素晴らしさは、一度食べると病み付きになるレベル。いま食べても実に美味いのだから、当時の東京っ子の驚きがわかる。

 

で、その小倉アイスと鹿の子あんこをドッキングしたのが、「小倉鹿の子」(税込み580円)である。

 

小倉アイス(大きい)を半分覆うように鹿の子あんが雪崩れ込んでいる。そのあまりにつややかなドッキング。

 

この「あんコンビ」はスーパーだと思う。

 

鹿の子あんは大納言の粒つぶがしっかりしていて、しかも中がふっくらと炊かれている。濃い茹であずきのよう。塩がほんのり効いていて、かなり甘い。あんこ職人の気配。

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以前、ここの「氷あずき」の美味さに圧倒されたが、この「小倉鹿の子」もあんこ好きにはこたえられない、東京和スイーツの傑作だと思う。

 

店は老舗の敷居の高さはない。表が小倉アイス(もなか)のテイクアウト専門で、奥が甘味処になっている。

 

余計な飾りのない、下町の老舗で食べる「小倉鹿の子」は格別のものがある。

 

蕎麦屋の湯桶(ゆとう)のようなものが置いてあり、その中身はなんと黒蜜! 

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しばらく何もかけないで、小倉鹿の子を楽しんでから、おもむろに黒蜜をたっぷりかける。こってりした黒糖の甘さと香りが、もう一つの味わいを運んでくる。

 

湯島で秘密の蜜の味わい。

 

世界が金色に輝き始める。ホントだよ。

 

いつの間にか、自分がみつばちに変身していることに気づく。

 

人間の形をしたみつばち。こんな結末、ありか?

 

所在地 東京・台東区湯島3-38-10

最寄駅 東京メトロ湯島駅

 

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戦国「けし餅」の驚き

 

戦国時代にタイムスリップしたくなったら、この和菓子を食べてみてほしい。

 

幻のあんこ菓子を求めて三千里の旅。

 

今回ご紹介するのは、にわかには信じがたい、堺の「芥子餅(けしもち)」である。

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創業が室町時代・天文元年(1532年)。当代は何と二十代目。一子相伝で、現在もなおそのワザを受け継いでいる。

 

あべのハルカスを見上げる天王寺から、レトロな路面電車阪堺線)に乗って、約1時間半ほど。日本で一番のどかなチンチン電車宿院(しゅくいん)駅で下車すると、そこがあの戦国時代に名をはせた「独立国 堺」の中心地である。

 

東南アジアを経由してヨーロッパや中国とも盛んに貿易(南蛮貿易)をし、独自の軍隊まで持ち、千利休など歴史に残る茶人を産んだ場所。そのスケールの大きさは多分、想像を超えている。悲しいかな、往時を実際に見ることはできない(当たり前だよ)。

 

今は過日の面影はない。

 

だが、その夢のシッポはほんの少しだが、残っている。

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千利休の屋敷跡を見てから、5~6分ほど歩くと、そこにひっそりと「本家小嶋」が暖簾を下げている。485年も続く老舗中の老舗だが、何も知らないと、ただのさびれた和菓子屋にしか見えない。

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ここの「芥子餅(けしもち)」が驚きの味わいなのである。あの千利休が茶席にも出していたという芥子餅。「肉桂餅(にっきもち)」とのセット(3個ずつ6個入り 920円)をお土産にして、翌々日賞味した。

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こしあんを求肥餅(ぎゅうひもち)でくるんで、表面をびっしりと芥子の実でまぶしてある。口に運んだ途端、芥子の実の香ばしさとプチプチ感に「ホオーッ」となる。

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続いて、求肥餅の柔らかさと中のこしあんのきれいな風味の波。そこいらの芥子餅とは次元が違い過ぎる(と断言してしまおう)。 言うまでもないが、すべて自家製。

 

「ホオーッ」が二度三度と続いて出てくる。とにかく驚かされる。

 

肉桂餅もニッキの香りとこしあんが見事に融合している。

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堺には江戸時代創業の「小島屋」や「八百源」があり、そちらは全国のデパートなどでも売られているが、この「本家小嶋」は堺から一歩も出ようとしない。

 

雨の日も風の日も、ひっそりと暖簾を下げている。その凄み。

 

孤独な、もう一人の千利休がその暖簾の奥に、今も生き続けている気がする。

 

所在地 大阪府堺区大町西1-2-21

最寄駅 阪堺線宿院駅下車

 

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渡辺直美的「あんマガ」

 

コッペパンがブームになっている。

 

あのアンパンマンの世界でも、仲間外れだったコッペパン

 

それがどうして一躍人気者なったのか、不思議だ。

 

だが、東京周辺で、その火付け役の一つになったのが、東京・亀有「吉田パン」である。

 

ここの「あんマーガリン」(1個税込み190円)が気に入っている。

 

注文すると、店員さんが目の前で、ヘラを使って、まずマーガリン、それからこしあんを惜しげもなく塗っていく。これがうれしい。

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ビヨンセばりのナイスバディ。と言えなくもない。手に取った瞬間、そのスケールの大きさと存在感に心がざわめく。

 

心が騒ぐコッペパン

 

というのも確かにある。

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パンの美味さにまず「うむ」となる。フワッとしていて、しっとり感がピタリと張りついてくる。もっちり感の寄せ。小麦のいい香り。

 

あるいは、これは渡辺直美ビヨンセではないか?

 

バターではなく、マーガリンというのが渋い。

 

コッペパンは自家製だが、こしあんはあんこ屋さんに特注しているそう。

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二年ほど前に、初めてこれを食べたとき、あまりの美味さに度肝を抜かれた。以来、コッペパンに対するイメージが180度変わってしまった。

 

コッペ、マーガリン、こしあんの三角関係があまりに濃密で、その結果、全身のボタンが外れてしまった・・・と表現したくなるくらいの衝撃だった。

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この吉田パン、あの伝説のコッペパン専門店、岩手・盛岡の「福田パン」(1948年創業)に弟子入り修業して、平成25年4月に(2013年)にオープンという経由を持っている。

 

いわば、伝説のノレン分け。

 

違うのは福田パンが「あんバター」としているのに対し、こちらは「あんマーガリン」。(あまり関係ないが、アン・マーガレットはどうしていらっしゃるんだろう?)

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こしあんはサラッとしていて、甘さは控えめ。塩が絶妙に効いている。

 

翌朝、残りの1個をオーブンで2分ほど焼いてみた。パンの香ばしさが引き立ち、マーガリンが少し溶けだして、これはこれで別のうま味が出てくる。

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行列店で、夕方には売り切れてしまうことも多い。去年、北千住ルミネに2号店がオープンした。言い忘れたけど、コッペパンは惣菜コッペも含めて、常時30種類ほどある。

 

少しだけ気になるのが、人気が出ると、一般的に味が幾分薄くなること。今回、久しぶりにこの店の「あんマーガリン」を食べたが、以前よりほんの少し、あんこの量が減った気がした。勘違いだといいのだが。

 

ところで、天国のやなせたかしさんは、このコッペパンブームをどう眺めているんだろう? というより、どうしてコッペパンマンを登場させなかったんだろう?

 

所在地 東京・葛飾区亀有5-40-1

最寄駅 JR亀有駅北口歩5分

 

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古都の隠れあんみつ

 

テレビや食べログなどで高評価を得ているスイーツ店が美味いとは限らない。その逆もある。

 

話は三年ほど前に遡る。

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古都・足利でのこと。鑁阿寺(ばんなじ)の参道近くにある古民家カフェにたまたま立ち寄ってみた。ちょうどティータイム。

 

「あまから家」という店で、カレーと甘味が売り物。それで「あまから家」。正直、それほど期待して入ったわけではない。

 

高齢の店主と女将さん二人で切り盛りしていた。メニュー写真の「あんみつ」(税別630円)が美味そうだったので、それを頼むことにした。

 

予想は裏切られるためにある。

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このあんみつがワンダーだった。見事なこしあんと粒あんが、大きめの朱塗りの器にドッカと鎮座していた。二種類も!

 

ひと目でそのあんこが本物と直感した。人生にはまさかの出会いがあるが、これもその一つ・・・のはずだった。

 

桃、パイナップル、ミカン、赤えんどう豆、その下の寒天。果物以外はすべて店主の手づくりで、むろん、二種類のあんこも自家製。

 

眼下に、あんこの銀河星雲。

 

女将さんによると、店は約30年の歴史。驚いたことに「この20年間、値上げしていないんですよ」とか。

 

隠れた名店を見つけた気分。

 

何よりも二種類のあんこ。こしあんは銀のスプーンで口の中に運んだ途端、いい小豆の風味が広がった。ほどよいきれいな甘さ。黒蜜の濃さが好みの別れるところだが、期待していなかった分、余計感動が広がった。

 

つぶあんはこってりしていて、しかもふくよかに炊かれていた。

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小豆はその時々のもっともいいものを使っているそう。「なるべく地物を使っています」(店主)とも。砂糖はグラニュー糖とか。

 

店主の作り方のこだわりぶりが、仕草や言葉の端々からこぼれ落ちてくる。

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古都の一角で不思議な時間が流れる。

 

寒天が柔らかすぎることが好みではないが、あんこは私にとっては「拾い物」だった。

 

先日、それを確認するために久しぶりに足を運んだ。

 

だが・・・悲しいかな、三年前の感動が来ない。これはどうしたことか? 普通に美味い店になっていた。普通に美味い店・・・。それでいいのではないか、そう思い直す。

 

こちらの舌に異変が起きてしまったのかもしれない。彼も私も昔の彼でもなく、私でもない。甘辛のほろ苦い後味が舌に残ることだってある。

 

 

所在地 栃木・足利市昌平町2369

最寄駅 JR足利駅歩約5分

 

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後味抜群の「塩きんつば」

 

この特製きんつばを食べたとき、塩の絶妙さに驚いた。

 

何という塩加減だろう? 

 

きんつばというより、「塩きんつばと表記した方がいいのでは?

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大納言小豆の風味と抑えられた甘さが、その塩加減によって、ステージの前面に押し出されてくるような感じ。塩の後ろ盾。

 

その後の余韻にホオーッとなってしまった。

 

ただの塩きんつばではなかった。頭のてっぺんに想定を超えるそよ風(快感)が付いてきた。

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浅草「徳太楼」の洗練とも違う。榮太楼の素朴とも違う。

 

何と表現していいのか、「塩梅(あんばい)」という言葉がこれほどピッタリくるきんつばって、あまりないと思う。

 

国立劇場もほど近い場所に店を構える「江戸銘菓 一元屋」。創業は昭和30年(1955年)とそれほど古くはない。

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飲み会で「徳太楼」のきんつばがいかに美味いかをバカみたいに熱く語ったとき、話が終わるのを待ち構えたように、近くの老舗出版社の辛口編集者が、ボソッと「美味いですよ」と教えてくれたきんつば、である。

 

しまった!

 

冷や汗がたら~り。語りすぎはいけない。話にも塩加減が大事と反省させられた。

 

一個152円(税込み)。箱詰めで一番小さい6個入り(906円)を買い求めた。

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一個の大きさはタテ4.5センチ、ヨコ5.5センチ、厚さは1.9センチほどだった。厚みはあまりない。

 

小麦粉の皮は薄めで、しかも一個一個きれいに縁を取っている。

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大納言小豆はたぶん北海道十勝産。柔らかく炊かれた大粒の食感もとてもいい。寒天の具合も絶妙。

 

徳太楼が江戸の粋の洗練なら、こちらは江戸の野暮の洗練、といった感じかな。

 

それにしてもこの後味のすっきり感は、散々べらんめえ言葉を発してから「あらよっ」と去っていく、江戸っ子の後ろ姿を思わせる。

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氷砂糖を使用していることもその理由の一つかもしれないが、それだけではない。一個食べると、続けて二個食べたくなる。三個、四個と行きたくなる。

 

病み付きになるきんつば、というのも確かにある。

 

理由をあれこれ詮索してもしょうがない。これはやはり職人芸と思うしかない。

 

所在地 東京・千代田区麹町1-6-6

最寄駅 東京メトロ半蔵門駅下車

 

 

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恐怖の「東京ぜんざい」

 

「地球最後の日」をどのように迎えたいか?

 

SFみたいな話だが、誰しも一度は考えたことがあると思う。

 

あんこ好き、いや私にとって、答えは決まっている。

 

「白ワインを飲みながら、あんこの海にぷかぷか浮いていたい」

 

その甘すぎる妄想を形にしたのが、東京・神保町にある「大丸やき茶房」のぜんざい、である。バカみたいな夢、と言い換えた方がいい気もするが。

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昭和23年(1948年)創業の老舗甘味屋。今川焼きのような、カステラ生地の「大丸やき」が知られているが、ここの「ぜんざい」(税込み600円)がすごい。いや、すごい、という言葉を超えていると思う。

 

漆塗りの器の蓋を取った瞬間、おおお、と声が出かかる。最初に出会った時、あんこ歴ン十年の私でさえ、驚いた。

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つぶあんの海! それも砂糖のテカりで夜の海のように輝いていた。月明かりの海。表面張力の闇黒の海。汁けがまるで窺えない。あまりに濃厚なこってり感。

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その下には手焼きの餅が3個も潜んでいる。志しを感じるぜんざい。

 

お汁粉とぜんざいは、関東と関西では少々違う。基本的に、関西はこしあんをお汁粉、つぶあんをぜんざいと呼んでいるが、関東では汁けのあるものをお汁粉、ないものをぜんざいと呼んでいる。

 

「大丸やき茶房」のぜんざいは、まさしく関東、それも東京のぜんざい。すごいのは江戸から続く明治時代の製法を踏襲していること。

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ひと口で、その甘さに驚いた。ややオーバーに言うと、さすがの甘党でも恐怖を感じるほどの甘さと量。

 

使用している小豆は北海道産えりも小豆。それを銅鍋ではなく釜炊きで、炊き上げた小豆を万力で搾り、水分を下の木桶に落とす。

 

そうして出来上がった生あんに砂糖を加え、昔ながらのえんま棒で混ぜながら、約3時間もかけてじっくりと練り上げていく。

 

砂糖の量は「同割りで、1対1です。つまり生あん1キロに対して砂糖1キロです」(三代目)。

 

水分をすっかり落とした小豆と同量の砂糖。塩の気配がなく、そのためか甘さがワンダーである。出来上がったあんこは一晩寝かす。

 

正真正銘の江戸⇒東京と続いたぜんざいがここにある。

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食べ終えると、少しだけ頭がクラクラしてきた。箸休めの練り梅がなかったら、どうなっていたことかと思うほど。

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それでも、ここのぜんざいは究極だと思う。3日ほどあんこから離れていたくなったが、しばらくすると、また行きたくなった。それほど衝撃的なぜんざいであるのは間違いない。

 

所在地 東京・神田神保町2-9

最寄駅 東京メトロ神保町駅

 

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